日経MJ・電子版から改めて考えてみたマクドナルド不振要因とV字回復策

復活したビックアメリカシリーズ

 

またまた、マクドナルドを取り上げます。というのも、日経グループの媒体でよく取り上げられているからであり、私自身とても興味があるから。マクドナルドの既存店売上が減少トレンドになったのは、明らかな消費の変質であり、この変質を解明することは、新規事業につながると信じています。まず、日経MJの記事から。

 

日本マクドナルドホールディングス(HD)がもがいている。100円マックに象徴される低価格を武器に「デフレの勝ち組」とされたが、2012年12月期 は9年ぶりの減収減益。今年に入っても既存店の営業不振が続く。消費者の求めるものとギャップが生じているのではないか。1月からハンバーガーなどの値上げ実験を始めた福岡市での来店者の声と日経MJによる消費者調査の結果から実態を探った。(2013年2月27日付 日経MJ)

 

記事では、マクドナルドユーザーや元ユーザーにインタビューした内容を元に、なぜ業績が悪化したのかについて、論じられています。まとめると、次にようになります。

 

【日経MJが考えるマクドナルド不振要因】

[1]相対的に価格が高く感じられるようになったから

[2]品質に満足できなくなったから

 

1は、さらに二つの要因に分解できます。まずは、値上げしたというマクドナルドの要因。もうひとつは、他飲食店・小売店の値下げです。マクドナルドは、全国的に値上げはしていませんが、インタビューをした福岡の一部の店舗では値上げを実施。これが、消費者心理に大きく響いているそうです。それ以上に深刻なのが、他業態との競争激化。一番影響を受けている相手は、250円の牛丼。すき家に行けば、300円出せばお腹一杯になる一方で、マクドナルドでは少なくとも400円は掛かります。(平日昼間の390円メニューを想定)

 

さらに、コンビニが、品質を向上させたチルド弁当を販売。これなら、自宅で食べるので飲料を新たに購入する必要がありません。購入するとしても、家で飲む分として買うので、マクドナルドでドリンクを買うのとは意味が異なります。また、マクドナルドがハンバーガーだけあるのに対し、コンビニには弁当から麺類・惣菜まで多彩な料理を購入できる点も、消費者にとっては嬉しいはず。マクドナルド自体変わらなくても、他業態が品質向上・値下げを行えれば、マクドナルドの商品に割高感が出ても不思議ではありません。

 

1が価格に関する不満なのに対し、2は品質に関して。これも二つに分解できます。まずは新商品が少ない点。そして、既存メニューの品質低下です。世界のバーガーで失敗してから、新商品の導入がめっきり少なくなりました。これが、来店動機に少なからず影響しているようです。昔ビッグアメリカシリーズで感じたような、「これ食べたい!」という大きな動機がないと、足を向けない人も結構多いのではないでしょうか。それに加えて、品質に関する不満もあります。これは、60秒企画で露呈したのではないか、と予想しています。急ぐあまり、品質が疎かになり、それを見た顧客ががっかりして、行かなくなった。こういう人って、結構多いのではないでしょうか。

 

次は、日経電子版での特集記事について。

 

マクドナルド失速 崩れた「成功方程式」

 日本マクドナルドホールディングスに異変が起きている。2012年12月期の既存店売上高は9年ぶりにマイナスとなり、年明け以降も回復の兆しは見えない。ブランド力で他の外食をしのぎ、デフレを勝ち抜いてきた同社に何が起こっているのか。(2013年2月25日付 日経電子版より)

要旨は次の通り。

【日経電子版特集記事が考えるマクドナルド不振要因】

[1]100円マックの価値が相対的に上がったから

[2]コンビニを筆頭に他業態との競争が激化したから

1は少し皮肉な言い方かもしれません。100円マックに満足する来店客が増えたから、というのが正しい表現かもしれません。マクドナルドは、2012年5月に100円マックを拡充しました。この目的は、100円マックで集客し、100円マック以外の商品を買ってもらうためです。しかし、この目論見は見事に外れ、100円マック以外には手を出さなかったようです。客単価の下落が、この実情を物語っています。

2番目は、MJで説明した通り。特に、コンビニが外食の夕食需要を奪っているようです。これはファストフードチェーンのみならず、サイゼリアなどのファミレスも影響を受けているようです。

面白いのは、日経MJでは、割高感からマクドナルドの利用を減らした人が多いと論じた一方で、日経電子版では、客数は伸びたものの客単価が大きく下落したために既存店売上が減ったと説明している点です。インタビューからは客数減になりますが、実際には客数は伸びています。このような一見矛盾したことが起こるのは、次のような理由からではないでしょうか。

【利用機会を減らした人が多い一方で客数が伸びた理由】

[1]これまでセットメニューを注文していた人の利用頻度が減少

[2]100円マック中心に注文していた人の利用頻度が増加

マクドナルドとして収益に大きく貢献してきたユーザーが離反して、さほど貢献してこなかったユーザーばかりが来店するようになったのではないか、と予測します。100円マック中心の顧客の割合が増えたからこそ、客単価が下落するわけです。

実際、私の友人から次のような話を耳にしました。それは、普段マクドナルドを利用しない会社の人が、久しぶりにマクドナルドに行っていたという話。その理由は、ビックアメリカシリーズが復活したから。ビックアメリカシリーズは客単価が高いばかりでなく、それを注文する人のほとんどが、単品ではなくセットメニューを注文することを考えれば、マクドナルドの収益に大きく貢献する商品と捉えられます。このような優良顧客が、ビックアメリカシリーズ復活で久しぶりに来店したということは、逆に言えばそれまで離反していたことになります。ビックアメリカシリーズ復活で、優良顧客の店離れが明らかになったのではないでしょうか。

これらの不振理由から対策を考えれば、次のようになるかと思います。

【マクドナルド復活私案】

[1]既存メニューのリニューアル(原材料改良など)

[2]新商品の積極的投入

[3]持ち帰り窓口の設置

[4]持ち帰り割安セットの導入

[5]朝メニューのリニューアル

1・2は品質に関する不満に対応したもの。3・4は対コンビニの施策です。5は、夕食を自宅で摂る層の増加への対策です。ちなみに、モスバーガーも、朝メニューに力を入れています。朝に散歩する人、朝に強いシニア層が増えていることを考えると、朝食需要はまだまだ開拓する余地があるように感じます。

しかし、残念ながら、マクドナルドの対策は、「値上げ」「既存品中心のプロモーション」のようです。これでうまくいくのでしょうか。

 

 

☆    今日のまとめ☆

マクドナルド不振の要因は、コンビニ・牛丼チェーンとの競争激化とともに、品質を重視する優良顧客の離反によるものではないか。

優良顧客を引き戻すべく、既存品のブラッシュアップ・新商品の積極的投入・持ち帰り商品や朝メニュー拡充が必要なのではないか。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

テキサスバーガーがどの程度売れたのか、気になります。

これで既存店が好転すれば、マクドナルド復活は近づくのではないでしょうか。

 

☆経営コンサルタント 石原明さんの言葉☆

「ですから逆に言うと、情報がある一定のレベルで、興味がある人にある程度伝われば欲しくなってしまうということです。説得して買う気にさせるよりも、情報を提供する。もっというと、買ってくれるように人を育てる。これを見込み客フォローというのです。」

『気絶するほど儲かる絶対法則 売れるしかけと勝てるしくみの作り方』より)

※ポッドキャストでいつもお世話になっています。この番組は本当に勉強になります。

※創業者・経営者・コンサルタントの心に残る言葉、元気になる言葉を紹介しています。

 

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