牛丼チェーンが仲良く値下げする本当の理由

松屋の垂れ幕

 

先日、日経新聞を読んでいると、久しぶりに牛丼チェーンの記事を見つけました。

 

 牛丼大手が一斉に値下げする。最大手のゼンショーホールディングスは5日から「すき家」で牛丼の価格を期間限定で30円下げる。吉野家ホールディングスや松屋フーズも実施を決めた。牛丼大手の値下げは2月に米国産牛肉の輸入規制の緩和後初めて。牛肉の調達価格下落が期待されるなか、需要喚起を狙う。沈静化していた価格戦争が再燃する可能性もある。(2013年4月2日付 日経新聞朝刊)

 

牛丼チェーンが値下げを行うのは、原材料コストが下がったからに他なりません。そして、値下げをして売上のV字回復を狙うのです。それだけ、牛丼チェーンの売上は低迷しているのです。

 

【牛丼チェーン3社の月次既存店実績】

吉野家]2012年10月より6ヶ月連続前年割れ

すき家]2011年9月より19ヶ月連続前年割れ

松屋]2012年4月より12ヶ月連続前年割れ

※吉野家のみ2013年2月までの実績。その他は2013年3月まで。

※松屋は松屋フーズグループ全業態を含む

 

この既存店売上低迷の要因は、客数の減少。比較的数字がマシな吉野家でも、客数は2012年1月からの1年以上に渡る下落トレンドから脱却できていないのです。だからこそ、今回行う値下げは、客数増による売上回復を狙ったものと言えます。

 

ちなみに、客単価だけを見ると、以下のように推移しています。

 

【牛丼チェーン3社の月次客単価実績】

[吉野家]4月以外すべてプラス

[すき家]2012年3月・2013年3月以外プラス

[松屋]2012年3月・2012年4月・8月以外プラス

 

各社、値下げ競争から離れることで、客単価の向上には成功しているようです。特に吉野家は、380円ラインの新商品を投入することで、主力プライスラインの引き上げがうまくいっているように思えます。一方できになるのは、すき家。昨年の4月以降、客単価は上昇していましたが、この3月で1年ぶりの前年割れ。既存顧客の節約志向の表れかもしれません。

 

ここまでは、比較的誰でもわかることです。ただ、今日の日経新聞を見て、牛丼の値下げ競争が再燃した別の理由が浮上してきました。

 

来年4月以降、半数が支出減らす
日本経済新聞社が20~60代の消費者1000人に対し、政府が2014年4月に予定する消費増税の前に購入を 検討しているものがあるかを聞いたところ、19・2%が「ある」と回答した。買いたいものを購入する時期については、10~12月と来年1~3月がそれぞ れ23・4%と同率で最多だった。増税前の「駆け込み需要」は10月以降に本格化しそうだ。(2013年4月3日付 日経新聞朝刊)

 

増税前の駆け込み需要があり、その反動があることに驚いたのではありません。反動の中身に驚いたのです。

 

かけるお金を減らす分野を複数回答で聞いたところ、「飲食」が63・3%で最も多かった。続いて「衣料・ファッション」(58・5%)、「娯楽・教養」(41・9%)との回答も多かった。(2013年4月3日付 日経新聞朝刊)

 

飲食の支出を減らす予定の人が、なんと60%以上もいるのです。ここで言う「飲食」とは、飲食店での支出だけではなく、飲み食いに掛ける支出全体を指すのだと思いますが、その削減の筆頭に外食が上がることは間違いありません。何せ、外食を止めて自宅で食べるだけで、大きな支出削減になるからです。

 

牛丼チェーンは、増税後の外食離れを考えて、値下げを行うのではないでしょうか。今値下げを行なえば、牛丼チェーンのコスパが高いことを印象付けることができます。それによって、消費増税後の外食離れの影響をできるだけ小さくしよう、という狙いです。

 

さらに、来年4月に他の飲食店・スーパーがこぞって増税分を税込価格に織り込む中で、牛丼チェーンは税込価格を据え置く可能性があります。例えば、今回の値下げを今年秋ごろに終了し、一旦は値段を戻します。そして、来年4月の増税時にその値段を据え置き、据え置いたことを全面的にアピールするのです。世の中全体が価格上昇に直面する中、牛丼チェーンだけが値段を据え置いたということになると、それだけで集客効果が期待できます。

 

今回の値下げは、直近の客数増だけでなく、増税後のシチュエーションまで見越した施策のように思えてなりません。

 

☆今日のまとめ☆

牛丼チェーン3社が値下げに動いたのは、既存店の客数をテコ入れするためである。

しかし、それだけでない。

消費増税後に世の中が値上げに直面するなか、値段据え置きによる集客増を目指したものではないか。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

牛丼の値下げの記事を読んだ時、また泥沼の価格競争かと落胆しました。

牛丼チェーンに足を運ばなくなったのは、本当に値段のせいなのでしょうか。

店舗の雰囲気を見る限り、そうとは思えないです。

 

☆    最近買った商品☆

昨日紹介したパンですが、一枚食べて残りを冷凍しました。

そして、その冷凍した食パンを食べたのですが、これがかなり美味しい。

サクサクなのです。

また買いたいと思いました。

ミヤナガさんの食パン

 

 

ブーランジェリー・ミヤナガ

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