伸びる輸入ビールとシェア縮小に悩むキリン、その原因とは?

一番搾り生

ken

 

関東のスーパー・ヤオコーは輸入ビール売り場を拡充するようです。

 

都圏のスーパー大手、ヤオコーは海外ブランドの輸入ビールの専用売り場を設置する。ベルギーやオラン ダ、ドイツのほか東南アジアのビールなど60~70種類を用意する。一定規模の新設店や改装店舗に順次売り場を導入していく。コンビニエンスストアなど小 型店ではそろえられない豊富な選択肢を提案して、自社店舗への集客につなげる狙いだ。(2014年7月13日付 日経新聞朝刊)

 

拡充するのは、もちろん売れているから。輸入ビールは、国産ビールよりも割高。記事による、中には330mlで400円台の輸入ビールも売れているとのこと。ちなみに、国産ビールは350mlで200円前後。プレミアムビールでも230円前後なので、国産ビール比で約2倍、プレミアムビール比で約1.7倍の価格でも、輸入ビールは売れていることになります。(一本あたりで比較)アサヒビールのドライプレミアムも好調なようで、ビール市場は高単価商品の売れるとても恵まれた環境にあると言えるでしょうか。

 

しかし、その恵まれた市場環境に身を置く大手ビールメーカーのキリンは、大変苦戦しています。

 

ビール系飲料の販売競争が激しさを増してきた。大手5社の1~6月の課税済み出荷量が前年同期比1・2%減と低迷するなか、首位のアサヒビールが初の国内シェア4割超えを視野に入れるなど、各社とも攻勢を強めた。目立つのは過去最低のシェアに落ち込んだキリンビールの苦戦だ。かつては不動の国内王者だったキリン。巻き返しはなるのか。(2014年7月11日付 日経新聞朝刊)

 

記事によると、キリンのシェア低下は、販促ブランドの集約が失敗したからだそうです。一番搾りとのどごし生に宣伝広告費を集中させた結果、ラガー・淡麗・澄みきりの露出が大きく低下。その結果、売上は急減。それを補うほどの売上拡大が、一番搾りやのどごし生に生まれなかったので、シェアを低下させたというわけです。

 

しかし、私の見方は少し違います。単価の高品質なビールが売れる環境の中で、高品質なビールを投入できなかったことが、キリンの一番の敗因ではないでしょうか。ただし、ただ高品質ではダメで、わかりやすさが必要。輸入ビールは、○○産というわかりやすさがあるから、通常の国産ビールの2倍の価格でも売れるのです。では、なぜプレミアムビールは売れるのか。それは、「プレミアム」が付いているから。単純なことですが、この単語があるかどうかが、プレミアムビールと見なされるかどうかの境目であり、売れるか売れないかの分水嶺なのだと思います。一方のキリンは、プレミアムビールとして一番搾りを売り込みましたが、残念ながら一番搾りの商品パッケージやキャッチコピーに「プレミアム」の文字はありません。しかも価格は、割安感を出そうとしたメーカー側の思惑とは異なり、安いからこそ「一番搾り=通常の国産ビール」という位置付けに成り下がったのではないでしょうか。ビール市場では、安ければ売れるという法則は全く当てはまらないのです。

 

わかりやすさと価格設定が拙いために、プレミアムビールとして一番搾りは売れなかったのではないでしょうか。「わかりやすさ」「シンプルさ」は、売れるための大きな要素のようです。

 

☆今日のまとめ☆

通常の国産ビールの2倍もする輸入ビールが売れるビール市場で、キリンがシェアを低下させたのは、プレミアムビールとして一番搾りが売れなかったから。

売れなかった要因は、「プレミアム」の文字が付いておらずわかりにくかったからであり、また価格が通常の国産ビールと同じだったからではないか。

「わかりやすさ」「シンプルさ」は売れる大きな要素のようだ。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

一番搾りをこの前飲む機会があったのですが、本当に美味しくなったと思います。

それでも売れないのは、売り方に問題があったからなんですね。

こういう商品、日本にいっぱいあるんでしょうね。

 

 

 

 

 

伸びる輸入ビールとシェア縮小に悩むキリン、その原因とは?” に対して2件のコメントがあります。

  1. 山口のりこ より:

    日本の輸入ビールの売れ行きを調べていたところで、興味深く読ませていただきました。ビール類の税率一本化に向けた動きもあるようですし、マーケティングだけでなく品質で勝負できる環境が根付くといいですね。これからもビール関連記事楽しみにしています。

    1. ryotarotakao より:

      山口さん

      コメントありがとうございます。
      ビールの記事を書いているのは、単価が高くても売れる商材だからです。
      それに、私自信が好きというのもありますが。(笑)
      国内の大手ビール系飲料を見ると、種類(ビールやプレミアムビールなど)による価格の違いはあるものの、種類が同じならば価格が同じという、特殊な価格体系も面白い点ですね。
      これからも、面白い市場であるビールには注目したいと思います。
      また、コメントいただけると幸いです。

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