【560号】米LCC・スピリット航空から考えた、旅行業界で起こる新たなる競合関係とは?

スピリット航空By MarketCommon

 

◎本日のニュース

1)見出し
A Stingy Spirit Lifts Airline’s Profit
【出典】
http://goo.gl/XW1iB

 

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2)要約
スピリット航空社は、全米で最も利益率の高い
航空キャリアになったとされる。

2008年から2012年第一四半期の間で、
大手キャリアが損失を計上するなかで、3億ドル近い利益を上げている。
利益額だけで言えば、サウスウエスト航空やアラスカエアグループに劣るが、
飛行機一機あたりの利益額は、全米で最も大きい。

この高収益を生み出すのは、航空券を安くして追加サービスを
課金するというLCC特有のビジネスモデルあるである。
例えば、2007年に、全米の航空キャリアで初めて、
預かり荷物すべてを有料化した。さらに、搭乗券の発行、
機内で提供する飲料水、そして座席上に保管する荷物まで課金している。
その結果、売上の約3分の1は、航空券以外のサービスが生み出し、
業界平均の約6%の5倍以上にもなる。

航空券価格を下げられるのはコストを切り詰めているからであるが
その一方でその弊害も生まれている。時間通りの運行という点では
最悪の航空会社とされ、また足を置くスペースの狭さ、
払い戻しできない不便さへの不満も起こっている。
さらに、空港利用料の上昇や、空港内での渋滞、組合との関係維持、
競争の激化など、今後収益を圧迫しかねない要因も増えている。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Spirit Airlines Inc. has scrimped its way to become,
pound for pound, the most profitable airline in the U.S.,
helping reshape budget air travel by charging for everything
from boarding passes to drinking water.

4)キーとなる英文の和訳
スピリット航空社は、少しずつ切り詰めながら、
全米で最も利益率の高い航空会社になった。
その結果、搭乗券から飲料水まですべてを有料にすることで、
低価格の飛行機による旅行の新たな形を作ってきた。

5)気になる単語・表現
scrimp他動詞(金など)を切り詰める
pound for pound副詞等分に
budget形容詞安い;予算

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
アメリカ最大のLCCとして、スピリット航空社(Spirit Airlines Inc.)が
取り上げられている。ちなみに、LCCを英語で訳すと、

ultra-low-cost carrier

のようで、日本で紹介されるlow-cost carrierとは違う。
この違いは、LCCではないbudget carrierという
低価格航空会社が存在するからであろう。
(今後、LCCと低価格航空会社budget carrierを区別します。)
全米最大の低価格航空会社は、サウスウェスト航空(Southwest Airlines)。
だから、全米最大のLCCは、スピリット航空となる。

LCCの特徴は、

1.航空券を激安価格で販売。
2.徹底的にコストを切り詰める。
3.飛行機輸送に付随するサービスは有料で提供する。

の3点に集約される。スピリット航空では、以下のようになる。

1.航空券の激安販売→競合よりも平均約30%安い。
2.到着後30分以内に離陸、1日1機あたり12.7時間運行
(サウスウェスト航空よりも約15%多い)、
座席のリクライニング機能を削除して138席を178席に約30%増席、
広告予算は約250万ドル(サウスウェスト航空の約1%)
3.搭乗券の発行5ドル、機内での飲料水提供3ドル、
座席の上での持ち込み荷物保管30ドル~45ドル
(上限を100ドルに引き上げ予定)、

1により、85~90%という高い搭乗率を達成でき、3により、
売上金額の約3分の1が、航空券販売以外のサービス販売で
獲得できるようになった。そして、2・3により、
高い収益性が実現した。その収益性は、以下の数字が物語っている。

【2008年~2012年第一四半期の利益額】
◯スピリット航空:約2億8900万ドル(約40機)→1機あたり約7225万ドル
◯サウスウェスト航空:約10億ドル(約700機)→1機あたり約143万ドル
◯アラスカエアグループ社(Akaska Air Group Inc.):約5億2200万ドル(約165機)
→1機あたり約316万ドル

この高い収益性を生み出したのが、上記のLCC特有のビジネスモデルであるが、
売上の視点から見れば、次のように表現できる。

LCCの売上=チケット販売による売上+搭乗に伴うサービス販売による売上

チケット販売では、チケット代金を低く抑えることで、
客数(搭乗率)の最大化、つまり集客の最大化を目指す。
低価格で販売するため、チケット販売による利益率は相対的に低くなる。
ゆえに、これはフロントエンド商品と言える。

一方、搭乗に伴うサービスでは、大手キャリアが無料で提供するサービスを
有料で販売するので、比較的利益率は高い。LCCは、必然的に、
搭乗に伴うサービス販売に力を入れるようになる。一方、利用者は、
このサービスを利用することで、より高い利便性を享受できる。
ゆえに、これはバックエンド商品と言える。

フロントエンド商品で集客し、バックエンド商品で利益を獲得するLCCは、
今後バックエンド商品の拡充により収益性を高めようとするだろう
この場合、搭乗客は比較的囲い込みが容易のため、
バックエンド商品の拡充は他業種と比べて容易になる。その理由は、

◯機内では、搭乗客にできることが限られる。
◯機内では、搭乗客とアテンダントの距離が短い。

による。この二つの条件により、アテンダントがさらに多くの
サービスを提供すれば、搭乗客がそのサービスを購入する確率が高くなり、
その結果、LCCの収益性は高まる。このサービスは、
もちろん搭乗客のニーズを満たす必要がある。

そこで、LCC搭乗客、つまりLCCのターゲットを考えると、

これまで長距離バスを使っていた、とにかく安く移動したい一般消費者

となる。その目的は、ビジネスよりも観光が圧倒的に多いだろう。となると、
機内で提供するサービスとして、以下のようなものが考えられる。

◯宿泊場所の紹介
◯おみやげの斡旋販売
◯現地移動手段の手配代行

これらをLCCが行うようになると、現在これらのサービスを提供している
業界と競合するようになる。その業界とは、

旅行代理店

である。
LCCが収益性向上を目指してバックエンド商品の拡充を図れば、
旅行代理店との競合が発生するかもしれない。

Spirit Airlines Inc. http://www.spirit.com/Default.aspx
Southwest Airlines http://www.southwest.com/
Alaska Air Group Inc. http://www.alaskaair.com/

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《今回のヒントのまとめ》
1)LCCのビジネスモデルは、チケットを激安価格で販売することで集客し、
搭乗に伴うサービスを有料販売することで、利益を獲得するモデルである。

2)チケット販売がフロントエンド商品となり、
搭乗に伴うサービス販売がバックエンド商品になる。

3)収益性を高めるためには、バックエンド商品の拡充を行うだろう。
その場合、LCCのターゲットである、低価格で移動したい
観光客のニーズを満たす必要がある。

4)そのニーズとは、宿泊・おみやげ購入・現地での移動である。
これらの紹介・斡旋・販売をすることでバックエンド商品が拡大し、収益を高められる。

5)この結果、従来これらのサービスを提供してきた旅行代理店と
競合するようになるだろう。

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編集後記
LCC・旅行代理店で思い浮かぶのは、
スカイマークエアラインズとエイチ・アイ・エス。
この組み合わせが、旅行業界をかき回すかもしれません。

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