酒販店のやまやが買収する居酒屋・チムニーの四半期決算からわかったこと

はなの舞

by courtesy of Nemo’s great uncle

 

やまやがチムニーを買収するようです。小売店による飲食店の買収で、ゼンショーがスーパーのマルヤを買収したパターンの逆になります。

 

このニュースを知った時、この買収の理由が今一つ理解できませんでした。メーカーによる飲食店の買収ならば、販売先の確保という理由になるのですが、やまやも直接消費者に販売する事業を展開しています。考えられるのは、バイイングパワーの強化でしょうか。チムニーという販売先を持つことで、やまやは仕入先のメーカーや卸に対する影響力を高めることができ、仕入れコストを低減できます。

 

それ以上の買収理由・目的は考えにくいのですが、検索してみると、やまやの主要株主のイオンが関係しているようです。チムニーはもともとイオンが創業した飲食チェーン。そのチムニーを取り返すことで、イオンはWAON(ワオン)利用の拡大を目指しているのかもしれません。もちろん、イオンが、飲食店チェーンを傘下に入れることで、バイイングパワーを拡大することも可能です。チムニー買収により、低価格攻勢をさらに強めるのでは、と予測しています。

 

そのチムニーですが、その月次・四半期業績(決算短信PDF)によると、業績は芳しくありません。既存店売上の減少傾向から抜け出せず、売上はほぼ一定ですが、営業利益は減少傾向にあります。そして営業利益率は、7-9月の直近四半期で急激に悪化しています。その要因は、販管費の大幅上昇。販売管理費率は、以下のとおりになります。

 

【チムニー第三四半期の販管費率】

[2013年度]59.4%

[2012年度]58.1%

 

1.3ポイントも悪化していることがわかります。一方、売上総利益率は、65.6%から66.2%に向上しています。売上総利益率は、原価と反比例しますので、原価が削減さされたことがわかります。飲食店の原価≒原材料コストの上昇は、さほど大きな影響を及ぼすことなく、人件費や光熱費増加が、チムニーの営業利益率を悪化させたのです。(このことは、決算短信の説明にも明記されています。)

 

チムニーの中で一番店舗数が多いのは、「はなの舞」という総合型居酒屋。ファミリー層を含む幅広い層をターゲットにし、同社の中では大型店の部類に属します。二番目に多いのは、「さかなや道場」という魚介類をメインメニューとした専門型居酒屋。こちらは、20~60代の会社員をメインターゲットにしています。こちらも、60~100坪の大型店が主体です。この二業態で、全店舗数の8割以上を占めます。総合型居酒屋の不振・会社員の減少を考えると、今後この二業態はかなり苦戦するのでは、と予測しています。

第二四半期決算資料(PDF)より

 

実際、既存店売上は、2013年1月~10月で5月以外マイナスが続いています。特に客数は9月~10月の2ヶ月連続で91%台に落ち込んでいます。チムニーの業績を見る限り、総合型居酒屋や会社員をメイン顧客とする居酒屋・大型店の居酒屋は、大変苦しいことがわかります。

 

☆今日のまとめ☆

チムニーの営業利益率が低下したのは、販管費が大幅に増加したためであり、人件費・光熱費の増加がその要因である。

大型店主体のチムニーは、既存店売上高のマイナストレンドが続いており、特に客離れがひどくなっている。

総合型居酒屋や会社員をメイン顧客とする居酒屋・大型店の居酒屋の苦戦ぶりが、見て取れる。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

客数が減少していますが、客単価は3月より100%を超えています。

サラリーマン主体の居酒屋で、ボーナス増の影響を受けているのでしょう。

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