吉野家の牛すき鍋膳、その工夫と悪影響とは?

吉野家の牛すき定食by courtesy of amos1766

※吉野家の牛すき定食(牛すき鍋膳ではありません)

 

吉野家の牛すき鍋膳が、客単価引き上げと新規顧客獲得を目指したものであることは、前回述べました。「ゆっくり」食べる新メニューは、一方で回転率の低下を引き起こしかねないのですが、その回避のために、吉野家は工夫をしています。

 

その工夫とは、固形燃料の利用です。固形燃料とは、旅館の夜ご飯の時によく見かける、一定時間だけ炎を発する燃料なのですが、この「一定時間」という点が工夫なのです。WBSによると、食べ終わるまで温かさが持続するように、固形燃料を採用したとのこと。逆に言えば、食べ終わったら、固形燃料の炎は消えるということになります。炎が消えるまでの時間で、一回転することになります。この時間の制約のある固形燃料を利用することにより、来店客の長居を回避し、回転率を一定まで引き上げることを狙っているのではないでしょうか。

 

しかし、この固形燃料、コストアップというマイナスの影響も及ぼします。その他にも、牛すき鍋膳には、次のようなデメリットが存在します。

 

【牛すき鍋膳のデメリット】

[1]新たな食器など備品管理コストの増加(場所など)

[2]新たな食材により食材在庫コストの増加(廃棄など)

[3]丼とは異なるメニュー導入によるオペレーションコストの増加(トレーニングなど)

 

要は、コストが増加するのです。その増加コスト分により、牛すき鍋膳の価格が高くなっているのですが、580円という価格で増加コストがまかなえるかはかなり疑問。480円の丼の方が、利益率は高いのではないでしょうか。

 

また、

 

本当に新規顧客が獲得できるのか

 

という不確定要素も、払拭できません。「吉野家=早い、安い、うまい」というイメージが強い中で、ゆっくり食事をしたい消費者が、本当に吉野家を選択するでしょうか。ゆっくり食べたい人は、価格よりも「ゆっくり」を重視するため、マクドナルドのような洋風ファストフードだけでなく、スタバやプロントなどカフェも選択肢に入ります。吉野家の牛すき鍋膳には「温かい」という差別化要素はあるものの、店員の前で食べなければならない吉野家に、「ゆっくり」さで洋風ファストフードやカフェよりも優位性があるかどうかは、かなり疑問です。

 

この際、温まりたい男性のラーメン需要を奪った方がいいかもしれません。

 

☆今日のまとめ☆

回転率低下を回避するために、一定時間だけ炎を発する固形燃料を採用。

ただ、固形燃料などの新備品や新食材、新たなオペレーションなど、コストが増えるのも事実。

また、「ゆっくり」食べたい消費者が、本当に来店するかもかなり疑問である。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

個人的には牛すき鍋膳を食べたいと思うのですが、280円の牛丼の倍の価格という現実に直面すれば、牛丼を注文するかなぁ。

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