日清製粉のトルコパスタ輸入と日清食品のラ王好調が示す消費者ニーズ

美味しそうなカルボナーラby courtesy of Luca Nebuloni

日清製粉グループ本社がトルコにパスタ工場を建設するようです。

日清製粉グループ本社傘下の日清フーズは29日、ゆでて食べる乾パスタの生産をトルコで始めると発表した。同国の大手パスタメーカーのヌフン・アンカラ(アンカラ県)や丸紅と合弁会社を設立し、2015年4月に工場を稼働させる。日本に輸出するほか、「マ・マー」ブランドでトルコの周辺国で売り出す。初年度に20億円の売り上げを目指す。(2014年1月30日付 日経新聞朝刊)

このニュースを聞いた時、建設目的が、経済成長が見込めるトルコ市場への本格参入だと思いました。しかし、それは全くの勘違いで、トルコでは現地企業と合弁会社を作り、製造したパスタは日本に輸出するようです。合弁先企業の市場を荒らさないためだとか。つまり、トルコ進出ではなく、日本でトルコ製パスタ販売が目的なのです。

日清製粉には、マ・マーというパスタのトップブランドがあるわけで、さらに有名なパスタブランドであるディ・チェコの日本総代理店でもあります。国産ならマ・マーブランド、輸入品ならディ・チェコがあるので、特にパスタで有名でもないトルコ製パスタを売る意味が見当たらないのです。合弁会社を作ってまで輸入する手の混み様で、どうしても日本で日清が監修したトルコ製パスタを販売する理由があるのは、間違いないでしょう。

あくまで推測ですが、その理由は、国産パスタの売れ行きが相当鈍っているからではないでしょうか。パスタは、スーパーのストアブランド(PB)が幅を利かせているカテゴリーであり、大抵の大手スーパーチェーンなら、PBパスタを販売しています。さらに、イタリア・トルコ・ギリシャなど、格安輸入パスタの存在もあります。PBパスタや格安輸入パスタの市場シェアが伸びることで、マ・マーやディ・チェコのパスタ販売量が相当減っているのではないかと、推測できます。

一方、冷凍パスタの売れ行きは伸びているようです。冷凍パスタは売り場を見ればわかりますが、大抵198円で販売されており、大きな値崩れは起きていません。つまり、乾パスタが価格競争に陥っているのに対し、冷凍パスタは価格競争を回避できていることがわかります。

実際、日清フーズの岩崎社長はインタビューで次のように答えています。

「冷凍パスタの国内市場は年間で2割近く伸びている。日清フーズの売り上げの伸び率はそれを上回っており、重要な成長事業だ。神戸の新工場を生産拠点に据えて生産量を増やす。13年3月期の冷凍パスタの売上高は300億円強だったが、早期に400億円に引き上げたい」(2014年1月30日付 日経産業新聞)

このような違いが生まれる理由は、日清食品(日清製粉とは全く別会社)のラ王の売れ行きを見れば、なんとなくわかります。日清食品の四半期決算によると、袋麺のラ王は相当売れているようです。カップ麺とは違い、袋麺にトップブランドを持たない日清食品にとって、ラ王はヒット商品とも言えます。ラ王ヒットの要因は、マルちゃん正麺のヒット要因と同じで、簡単にできて美味しいから。利便性と品質を両立しているからと言えます。

利便性と品質の観点から言えば、冷凍パスタは両立していますが、乾パスタは利便性で劣ります。この差が、価格競争の激しさの違いを生み出しているのではないでしょうか。

消費者は、美味しくて便利なモノに対しては、価格差をさほど気にしないものの、便利ではないものに対しては、より安いものを選ぶ傾向が高いのかもしれません。それほど、消費者は利便性を重視している証拠とも言えます。

 

☆今日のまとめ☆

日清製粉がトルコパスタを輸入するのは、乾パスタの価格競争が激しくなり、マ・マーやディ・チェコの売れ行きが鈍っているからではないか。

一方で冷凍パスタの売れ行きがいいのは、消費者の利便性へのニーズが高いからではないか。

だから、利便性と美味しさを両立した日清食品のラ王は売上を伸ばす。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

単に美味しいだけでは売れないというのは、バレンタイン売り場にも言えることですね。

バレンタイン催事で売上を伸ばすコツは、ブランド力と見せ方に尽きます。s

 

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