ステラおばさんのクッキー食べ放題に行列ができている理由
by courtesy of Kent Chen
2月の中頃に、梅田の阪神百貨店で「阪神のごちそう天国」という催事が行われていました。物産展の一種ですが、どちらかというと、持ち帰り商品よりもその場で食べる商品が多いという印象。阪神の催事名物(?)の立ち飲みスペースもあり、デパートのバル(略して「デパバル」)のような感じでした。一番人気は、ニューミュンヘンの生ビール。そして、ビールのアテとして、唐揚げやコロッケ・いか焼きを食べている人を多く見受けました。
この催事で特に印象的だったのが、ステラおばさんのクッキー食べ放題。行列ができているだけでなく、午後6時過ぎには完売していたほどです。行列する人のほとんどが女性の2~3人組。阪急うめだ本店のバレンタイン催事の行列ほどではないものの、クッキーにここまで並ぶかという思うほど、女性に人気でした。
確かに、60分・ドリンク付きで881円(税込)は魅力的に映ります。しかし、食べ放題なのはクッキーであり、それほどたくさん食べられるものではありません。同じ類の食べ放題でケーキバイキングもありますが、ケーキバイキングは、いろんな種類のケーキを食べることができることや、単価の高い商品であることから、人気があるのは理解できます。一方のクッキーは、せいぜいチョコチップが入っているぐらいで、ケーキほどバラエティーに富んでいるものではありません。しかも、単価はケーキよりもずっと低く、大人買いするハードルも低いでしょう。それでも行列ができるには、何か理由があるはず。
そこで考えられるのが、「食べ放題」と「今だけ」というキーワード。「食べ放題」が持つのは、お得というイメージ。いくら食べても料金は同じという安心感もありますが、ステラおばさんのクッキー食べ放題の場合は、お得感が当てはまります。よって、クッキーでなくても、「食べ放題」にすればお得感を出すことはできます。
そして、今回の催事限定の企画なので、購入を急がせる効果があります。さらに、「今だけ」しかない商品なので、その希少性は高く、ネタ消費の対象にもなるのです。だから、2~3人組が多かったのではないでしょうか。
もう一つ付け加えれば、価格設定でしょうか。ドリンクも付いて、1000円でお釣りが来るとなれば、デパートのケーキセットと同じ価格でしょうか。カフェで休憩する代わりに、クッキー食べ放題を利用することも十分考えられます。もし1500円という価格なら、ここまで行列はできていなかったでしょう。
ちなみに、ネットで調べてみると、ステラおばさんのクッキーの価格は、5個X5セットで1980円(ネット通販価格)なので、1枚あたり約80円。ドリンク代を300円として、クッキー食べ放題単体では581円になり、8個食べれば元が取れます。そうお得なわけではないことがわかります。よって、「食べ放題」のお得感よりも、「今だけ」と1000円未満という価格設定に反応したと考えられます。ただし、ステラおばさんのクッキーが関西でそれほど露出がないことを考えると、「881円のクッキー食べ放題」という企画にお得感を感じたとも考えられるかもしれません。ならば、「食べ放題」というキーワードは、集客力があるという証左になります。
また、梅田の阪神百貨店のデパ地下に、ステラおばさんのクッキーの店舗があるようです。よって、ステラおばさん側とすれば、今回の食べ放題で美味しさを実感してもらえれば、今後の売上につながるという効果も期待できます。また、原価率がさほど高くなく、オペレーションも簡単な飲食商品(焼いてお皿に並べるだけ)としてのクッキーの特性も、食べ放題を可能にした要因と考えられます。
この成功により、催事限定の「食べ放題」が阪神の定番になるかもしれません。
☆今日のまとめ☆
「食べ放題」が醸し出すお得感と、「今だけ」という希少性、そして1000円未満という価格設定により、ステラおばさんのクッキー食べ放題に行列ができたのではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
クッキーは少しだけ食べたいけど、それほど食べられるものでありませんので、どうも私には魅力的に映りませんでした。
ただし、この企画を通じて、阪神にステラおばさんのクッキーの店舗があることを知りました。
こういう告知効果も無視できませんよ。