和民10年ぶり値下げのいいところ、悪いところ

watami

 

和民が値下げを正式に発表しました。決算発表時に今後の値下げを示唆していただけあって、サプライズ感はないですが、10年ぶりなんですね。私が在籍していた2000年頃は、どちらかというと値下げを進めていましたね。とても懐かしい。

 

 居酒屋大手のワタミは主力の「和民」でメニューを見直し値下げする。ビールやハイボールを1~3割安くし、税別300円未満の料理の割合を2割から4割 に倍増する。昨年春の消費増税時に客層の拡大を狙って高めの料理を増やしたが、主要顧客の若者の離反を招いた。客を呼び戻すため1年で方針を転換するが、 安さ以外に消費者を引きつける店づくりも課題になりそうだ。(2015年3月5日付 日経新聞朝刊

 

ブラック企業批判がまだ根強いためか、値下げに関しては批判的な意見が多いです。値下げしても悪いイメージが払拭されないとか、そもそも総合居酒屋という業態自体が衰退業種とか。そこで、和民の値下げのいい点・悪い点を、私なりにまとめてみました。

 

【和民値下げのいい点】

  1. とてもオーソドックスな方法
  2. 290円からお酒を提供するなど、来店ハードルを大きく引き下げた

 

1について、客離れがひどい場合、値下げするのはオーソドックスな方法です。日本マクドナルドも、原田さんが登板した時には、100円マック拡充で深刻な客離れを阻止。専門店や個人経営の店舗なら安易な値下げは命取りになりかねませんが、和民やマクドナルドのような多店舗展開の飲食チェーンの場合は、値下げによって売上を喚起することは、全うな方法です。特に和民を運営するワタミ外食部門の場合は、営業利益段階で赤字ですから、まずは損益分岐点を超える売上が必要不可欠。時間もそう残されていないことを考えると、値下げによりスピーディーに売上確保を狙うのは、定石とも言えるのではないでしょうか。

 

業態は異なりますが、グローバルダイニングのゼストキャンティーナも、価格とメニュー構成を大きく変更しました。具体的には、300円・500円の料理を拡充したのですが、その結果は2月既存店売上(PDF)の大幅改善。

 

【ゼストキャンティーナの既存店売上比較】

[値下げ前]マイナス10%(2015年1月)

[値下げ後]マイナス2%(2015年2月)

 

単に1月の売上が悪かっただけではなく、恒常的に既存店売上はマイナストレンドでした。業態の存続自体が危ぶまれていたのも事実です。それが、値下げによりマイナス幅が大きく改善。消費の二極化と言われていますが、まだまだ値下げには売上を喚起する力が強いのです。

 

2に関して、元々原価の低いハイボールを大幅に値下げしました。税別290円からの提供なので、生ビールの安いローカル転読店に十分対抗できます。「安く飲めないので、和民はやめよう」という、来店しない理由を一つ潰すことができます。

 

とは言っても、いい点はたったの2点。今回の値下げにより10年前の水準まで戻ったそうですが、注目すべきほど安いとは感じませんでした。そこで、値下げの悪い点を、私なりに考えてみました。

 

【和民値下げの悪い点】

  1. ビールには依然割高感がある
  2. 価格以外の差別化要素は不明確
  3. メインターゲットが不明確

 

1について、割安感が乏しい一番の理由は、生ビールが依然として割高に思えるからです。日経の記事によると、1割弱値下げしても、プレモル中ジョッキは税別450円。ローカル個人店では普通に生ビール中ジョッキが380円ぐらいから飲むことができるので、450円では安いとは感じません。ビール好きの集客には、まだまだパンチが弱いのです。

 

2について、単に値下げして売れる時代は過ぎ去ろうとしています。前出のゼストキャンティーナも、原材料の安全安心や手の込んだ調理を大きくアピールし、消費者が食に求めるニーズに合わそうと努力しています。一方の和民の場合、あくまで記事を読んでの感想ですが、単に値下げしたというだけです。牛ヒレステーキからサイコロステーキに変えたという所をみると、グレードダウンすら感じられます。これでは、安かろう悪かろうです。

 

3について、値下げしたので若者を集客したいのでしょうが、それにしては生ビールの価格設に競争力を感じません。中高年層を取り込みたいならば、原材料や調理方法のこだわり不足。誰をメインターゲットにしたいのかが、不明確なのです。

 

この10年でメニュー価格が上がったので、価格を10年前に戻せば、顧客も戻るという考えなのでしょうか。確かにそうかもしれませんが、10年前には存在感がほとんどなかった立ち飲み店や鳥貴族などの格安店があるのも事実。値下げは一時的なカンフル剤にはなりますが、それだけでは難しいというのが実際のように感じてなりません。

 

では、どうするか?次回取り上げたいと思います。

 

☆今日のまとめ☆

和民が値下げしたのは、客離れを防ぐ方法としてはオーソドックスなやり方である。

また、290円からハイボールを提供するなど、来店ハードルを下げている点も評価できる。

しかし、生ビールは依然割高感があり、価格だけではなく品質もグレードダウンしたようなイメージがある。誰を集客したいのかも、不明確。

 

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  • 今日のこぼれ話☆

和民が真っ先にやることは、企業イメージの刷新でしょう。

思い切って、深夜営業を大部分の店舗で止めるというのもいいかもしれませんね。

 

 

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