一風堂の混雑時の対応からわかった、ストーリーとしての競争戦略。
先日、西宮の一風堂に行きました。一風堂とは、福岡発祥のラーメンチェーンです。おしゃれな店内とサービスの良さ、行列という印象があります。もちろん、ラーメンも格別です。
週末でしたが、14時過ぎで雨も降っていたので、それほど混雑していないと思ってお店に行ったのですが、いつもの行列が出来ていました。それほどの人気店なのです。
20分待ったでしょうか、ようやく店内に入ることができました。店員さんが座席まで誘導してくれて、席に付いたのですが、そこで思わぬことを発見しました。それは、
隣のお客さんとの間に一人分の席が空いている
ということです。
行列ができるほど混んでいる時間帯に、席を空けることは大きな販売機会の喪失です。席を詰めれば、もう一組(二人組)入れたかと思います。にもかかわらず、両隣が各一人分空いているのです。その理由は、程なくしてわかりました。それは、
落ち着いてラーメンを食べる空間を提供するため
ではないでしょうか。
この理由がわかったのは、小さな子供連れのお客さんが多かったからです。通常、
ラーメン店は忙しい感じがするので
家族連れでの利用には向きません。せめて、餃子の大将などの中華料理屋さんでしょう。しかし、一風堂は中華料理屋さんではなく、れっきとしたラーメン専門店です。チャーハンなどのサイドメニューはありますが、メインはとんこつ風のラーメン。(醤油ベースの中華そばもあります)
通常のラーメン専門店ならば、
家族連れよりも個人客・個人の団体客がメイン
になりますが、一風堂では異なります。私が来店した時の印象としては、
ほとんどのお客さんが、家族またはカップル
でした。この光景は、通常のラーメン店では見られず、一風堂の大きな差別化要素です。
これを可能にしたのが、
落ち着いてラーメンを食べられる空間
ではないでしょうか。両隣を各一人分空けるのは、落ち着いてラーメンを食べられる空間を作るためなのです。
両隣を空けることは、先ほども指摘したように回転率を小さくするので一見非効率。だから、競合のラーメン店はこのような真似をしません。しかし、一風堂は、この一見非効率な座席利用をすることによって、自社の強みである「落ち着いてラーメンを食べられる空間」を作ることに成功しています。だから、競合他社に、この強みをなかなか侵されません。よって、一風堂は、自社の強みである競争優位を長期間保つことができるのです。
これは、まさに「ストーリーとしての競争戦略」(書籍)で書いてあったことです。「ストーリーとしての競争戦略」では、
クリティカルコア=それだけを見ると一見して非合理なのだけれども、ストーリー全体の文脈では強力な合理性を持つ
と呼ばれるものが、その肝になっています。
業界を熟知している「賢い人」が聞けば、「何をバカなことを・・・」と思う。しかしストーリー全体の文脈に置いてみれば、一貫性と独自の競争優位の源泉になっている。部分の非合理を全体の合理性に転化する。これがストーリーの戦略論の醍醐味です。(「ストーリーとしての競争戦略」より)
これを一風堂に合わせてみると、
クリティカルコア=お客さんの両隣を空ける
全体のストーリー=落ち着いてラーメンの食べられる空間を提供する
になるでしょうか。
もちろん、一風堂のラーメンは、食べ終わった時にまた食べたいと思うほどの美味しさです。しかし、美味しいだけでは、競合に真似されてしまいます。そこで、競合がそう簡単に真似しない、それほどころかバカにしかねない工夫をオペレーションに組み入れることによって、競合にはない独自の競争力を維持しています。業績好調の企業や人気店には、売れる理由があるものなのです。
☆ 今日のまとめ☆
一風堂は、お客さんの両隣の席を空けるという一見非効率なことをすることで、落ち着いてラーメンの食べられる空間を提供している。
非効率に見えるからこそ、競合が真似せず、自社の強みを維持することに成功している。
これはまさに、「ストーリーとしての競争戦略」である。
アメリカのビジネス最新事情メルマガ
今飲んでいるワインのこと知っていますか?
WSJメルマガからスピンアウトした英単語サイトです。
Twitterやっています
FaceBookはほぼ引退しました
Tumblr本格的に始めました
☆ 今日のこぼれ話☆
一風堂は、どちらかというと値段は高い方です。
にもかかわらず、なぜか行きたくなるのです。
商品が選ばれるのは、価格だけではないことの好例と言えるでしょう。
☆昨日の目標→その結果☆
◎朝6時に起きる→◯
◎毎日情報を発信する→◯
◎毎日仕事以外の人に話掛ける→☓
◎腕立て・腹筋30回→◯
◎自宅のある12階まで歩いて登る、または自転車を30分以上漕ぐ→☓
◎部屋や家の掃除をする→☓
◎営業日誌を付ける→☓