エイベックス第二四半期決算からわかった、エンタメビジネスの真実とは?(その2)
前回に引き続き、エイベックスの四半期決算資料から。エイベックスは、決算短信だけではなく、詳細な決算資料もネット上で公開しているので、エンタメビジネスの現状を見るには、とても勉強になります。ちなみに、同日決算を発表した日本KFC(ケンタッキー・フライド・チキンやピザハットの運営会社)は、決算短信のみ。月次資料はあるので、事業ごとの既存店売上はわかるのですが、利益まではわかりません。
エイベックスの資料には、各事業の客単価まで掲載されています。これが面白い。
【エイベックスの各事業の客単価まとめ】
[音楽アルバム]約29.6%上昇
[音楽シングル]約54.9%上昇
[音楽DVD/ブルーレイ]23.3%下落
[音楽配信]ほぼ横ばい
[映像配信]ほぼ横ばい
[映像DVD/ブルーレイ]約14.0%上昇
[ライブチケット]約3.2%下落
縮小している音楽パッケージ市場(-3.2%)の客単価が上昇する一方で、拡大から成熟に向かっている音楽配信市場(+0.3%)の客単価は横ばいなのです。音楽パッケージは高くても売れているので、それだけコアなファンが残ったということが想像できます。ちなみに、コアなファンに向けて高付加価値・高単価のパッケージ商品を売ることは、エイベックスの戦略の一つ。これが成功しています。私自身、めっきり音楽パッケージを購入しなくなった口ですが、タダで音楽が聞ける時代でもお金を出して買いたいというコアな音楽ファンはいるのです。こういうコアなファンを獲得できれば、縮小市場でも十分収益を上げていけることがわかります。
音楽・映像配信の客単価が横ばいなのは、恐らく単価引き上げを行うと、売上が大きく落ちるという考えからでしょうか。また、競争環境により、他社と同じ価格設定をしなければならないという事情もあるでしょう。いずれにせよ、限界費用がほぼゼロで利益率が向上しやすい配信事業の客単価を引き上げにくく、比較的利益率の低いパッケージ事業は引き上げやすいとは、皮肉なものです。一見利益率の低そうなビジネスこそ、うまくやれば高収益事業に育てられるのかもしれません。
ライブチケットの単価が下落しているのは、大箱のスタジアムを減らす一方で、より規模の小さいアリーナ・ホール・ライブハウスでのコンサートを増やしているから。音楽ライブの回数を増やすことで、より身近なエンターテイメントとして提供し、客数をふやそうという戦略です。その戦略が功を奏し、観客動員数は約2割増加、ライブ売上は5.2%上昇しています。
世間で注目されがちなのは、急成長する市場ですが、逆に競争環境が厳しく、過当競争に陥りがちです。逆に、成熟市場で客単価を引き上げることができれば、残存者利益を享受できるのかもしれません。
☆今日のまとめ☆
音楽市場では、縮小するパッケージ市場の客単価が向上している。
それは、コアな音楽ファンが残っているからであり、これこそ成熟市場の魅力である。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
ちなみに、音楽アルバムで最大のヒットはアナ雪で、約85万枚を売上げ、安室奈美恵の約1.6倍。
来年はこの反動があるので、来年は厳しそうです。