ユニクロ6月既存店二桁減で深刻なのは客数減ではない
ご無沙汰しております。最近、更新がかなり遅れておりますが、特別に忙しいわけではありません。時間の使い方が拙いからでしょう。
それはともかく、ユニクロの6月の既存店売上高が大変なことになっています。アパレル業界唯一の価値組のユニクロでしたが、それも過去のものになりそうなぐらい深刻な結果です。90%台ならまだいいのですが、なんと約88%まで落ち込みました。ユニクロに何が起きたのでしょうか。因数分解してみると、次のようになります。
【ユニクロ6月既存店】
売上→88.3%
客数→85.4%
客単価→103.4%
この数字だけみると、客数が足を引っ張ったことは一目瞭然。ちなみに、既存店売上が前年比80%台まで落ち込んだのは、2013年10月以来18ヶ月ぶり。ちなみに、86.2%まで落ち込んだ2013年10月は、客数も85.9%を記録しています。つまり、この時も客数減が売上減の一番の要因なのです。
これだけ見ると、好調なユニクロ業績に異変が起きたとも言えますが、でも18ヶ月前にはあったことなのです。2013年11月には、売上・客数ともまた前年比プラスに戻っているので、今回も単なる一時的な客数減なのかもしれません。
ユニクロの解説によると、客数減の要因は気温が例年よりも低かったからだそうです。ならば、他のアパレル小売企業も既存店売上が振るわないはずですが、百貨店各社やしまむらはプラス。ユニクロだけの要因がありそうです。あくまで推測ですが、ユニクロはファッション性よりも機能性を重視した衣料品が多いことから、気温の変化により必要に迫られて購入する人が多いのではないでしょうか。ならば、他社よりも気温の変化に大きく影響を受けるはず。
この月次速報を報じた日経新聞は客数の激減を心配していますが、私が着目したのは客単価。値上げしていますので、もちろんプラスですが、その増加率が低いのです。2014年9月から始まった今期では、客単価の前年比は最低の数字です。昨年秋から値上げしたので、それ以降で最低の上昇率なのです。客単価の上昇率が低い容易は、次のように考えられます。
【ユニクロの客単価上昇率が低い要因】
- 週末特売の値引率が高かったから
- 来店客の買い物点数が減ったから
- 単価の低い商品の売上比率が高まったから
1は、あまり可能性が低いかもしれません。あくまで私の印象ですが、毎週金曜日に折り込まれるチラシを見る限り、そう値引率の高い商品が増えたとは思いません。
2は、一番高いかもしれません。例えば、昨年Tシャツと一緒に靴下を買った人が、今年はTシャツしか買わなかったというパターンです。この背景にあるのは、節約志向の高まり。「まだ今の靴下が十分使えるから、安いけど買わなくてもいいか」というパターンです。ユニクロの品質向上により、逆に購入頻度が落ちたということが考えられます。
もう一つ考えられるパターンは、給料・ボーナスが上がったから、靴下を百貨店など高い業態で買ったというパターンです。実質賃金が上がりつつあるので、十分ありえます。
3は、ユニクロの戦略が要因にあるかもしれません。どこかのビジネス系サイトで見たのですが、今年のユニクロは、クールビズの販促を一切やめて、スポーツ系衣料の販促に力を入れています。チラシを見ても、「クールビズ」という言葉はほとんど見当たりません。スポーツ系衣料とクールビズ系衣料の単価を比べれば、クールビズ系衣料の方が高いでしょう。だから、客単価の伸びが今ひとつだったのではないでしょうか。
もう一つ考えられるのは、来店客の節約志向によるもの。1500円のポロシャツではなく、1000円のTシャツで我慢したというパターンです。
節約志向が今になって急に強くなったとは考えにくいので、節約志向の顧客の利用が継続した一方で、より高単価商品を購入してくれる優良顧客が離反したというのが一番考えられる理由です。
もう一つ、スポーツ重視のユニクロの戦略。もともと、スポーツ系衣料は世界的ブランドが強い分野なので、単価が高いのが特徴。だからこそ、価格の低さでユニクロは参入できたのです。でも、それが逆に客単価の伸び低下を招いたかもしれません。ならば、今後スポーツ系アイテムを値上げするかもしれませんね。今の価格は、十分安いですから。
いずれにせよ、ユニクロが憂うべき一番の問題は、高単価商品・ついでの消耗品を買ってくれた優良顧客の離反。もしかしたら、安さ重視のチラシ作りからやり直すべきなのかもしれません。
☆今日のまとめ☆
ユニクロ6月既存店で一番注目すべきなのは、客単価の伸びが値上げ後最低だったこと。
この一番の要因は、高単価商品・ついでの消耗品を買ってくれた優良顧客の離反ではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
今の消費は、本当に難しいです。
日経新聞ばかり読んでいると、景気が良さそうに思えますが、決してそうではないでしょう。
ガソリンは随分と下がりましたが、食料品など物価の上昇は結構すさまじいですよ。
この7月、そして8月以降からも値上がり商品はかなりあるので、今傾向はまだまだ続きます。
一部の富裕層とインバウンドに支えられた景気拡大と見るのが、正しいのかもしれません。
外食を見ても、外食機会は減っており、一方で一回あたりの支出金額は上昇しています。
ファスフードなど日常の外食は削減されていますが、一方で週末などの非日常の外食にはお金を掛けているようです。
いかに、後者の利用で選んでもらえるかが、重要なのでしょうね。
それにしても、声が出にくい。