極端消費で変わる商品開発方法
日経MJにまた面白い一面記事が掲載されていました。流通専門誌なので、消費者ニーズや消費財企業の動向に興味のある私のような人には、大変興味深いメディアなのですが、今回は格別です。その内容とは、
極端消費
というものが、日本の消費者の間で起こっているというもの。
極端消費とは、言わば個人内での二極化現象とでも言いましょうか。一人の人間で、ある時は高品質・高級な商品を買う一方で、別の時は割安な商品で済ますというもの。日経曰く、
平日PB,週末プレミアム
という消費だそうです。
平日PBの最たる例が、イオンPB・トップバリュの第三のビール・バーリアルの売上増。既存店ベースで+15%も売上数量が伸びているようです。増えているのは、売上「数量」なので、値上げ分のこの数字には含まれていません。仮に値上げされていたとしたら、新たな顧客を獲得したことになります。調べてみると、88円から95円に値上げされたようです。なので、これまでバーリアルを飲んでいなかった層が、バーリアルに切り替えたということになります。平日の食費をできるだけ節約するためでしょうか。NBの第三のビールが120円ほどなので、25円ほど安いバーリアルで節約したということになりましょうか。デフレマインドはまだまだ健在のようです。
しかし、一方で週末には奮発する、というのが今の消費者の特徴。バーリアルではなく、プレモルを買うというわけです。(プレモルはあくまで例であり、ドライプレミアムかもしれませんが。)
同様の極端消費が、
値上がりしたネギの代わりにもやし
ハーゲンダッツは高くても買う
平日は100g100円の豚肉
週末は500g1200~1300円の牛肉で焼き肉
という形で、起こっています。これを外食に当てはめると、
平日はマクドナルドを止めてコンビニ弁当
週末はロイヤルホストでステーキ
となるでしょうか。
この極端消費に対応するためには、単に比較的余裕のある層をターゲットにするだけではうまくいかないことがわかります。だって、余裕があっても、平日は節約するのですから。重要なのは、平日ではなく週末に選んでもらうこと。そのためには、
- 味・原材料など、PBと明確に差別化されている
- ブランドがリッチ感を出してくれる→家族や友人同士で楽しむため
という2要素が必要ではないでしょうか。実際、
ヨーグルトは140円のNBから100円のPBに切り替えた
カレールーは、味に大差がないので、安いものに切り替えた
というアンケート結果がありますから。一方で、魚や肉は、その鮮度・ブランドで味が大きく違うので、高くても国産・銘柄品を購入するようです。商品開発・ブランド構築から、勝負は始まっているのです。
ちなみに、好業績スーパーとして有名なヤオコーでも、極端消費の波は押し寄せているとのこと。週末は、1980円の和牛セットや、本まぐろ入り刺し身の盛り合わせが売れる一方で、週末は見切り品の販売が増えているようです。対照的なのがよくわかります。
最後に、記事に掲載されていた消費者の声をそのまま抜粋しておきます。
- 46歳の主婦は「ほぼ毎日バーリアルを飲む。だって安いじゃない」とする一方、週末は「高級ビールのエビスやプレミアムモルツを買う。話題のクラフトビールも飲んでみたい」と話す。
- 「ネギなどの代わりに18円のモヤシを買うことが増えた」と 話す。一方で、1つ300円以上するものもある高級アイスの「ハーゲンダッツシリーズ」にだけは目がない。「限定品は、少々高くてもコンビニで買う」と言う。
(2015年7月24日付日経MJより)
商品開発をする際には、ターゲット設定よりも、シーン設定(どんな時に消費するか)を重視した方がいいかもしれません。
☆今日のまとめ☆
極端消費は、一個人の中で生まれた消費の二極化。
平日は節約に励み、家族や友人とすごす週末はリッチにすごしたいというニーズから。
そのため、ターゲット設定よりもシーン設定の方が重要となるだろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
梅雨も明けて、暑さも本格的になりました。
少々夏バテ気味です。
こういう時は、肉に限ります。