【538号】スタートアップ・中小企業必見のソーシャルメディアを使った訴訟リスク回避法とは?

◎本日のニュース

1)見出し
New Tool in Trademark Fights
【出典】
http://goo.gl/uLXaz

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2)要約
ソーシャルメディアなどネットを、大企業による商標権侵害の
訴訟リスク回避のために使うスタートアップ企業・

中小企業が増えている。
大企業からの商標権使用禁止を要求する手紙をインターネット上に
公開することによって、大きな費用のかかる法廷闘争を免れる。その際、法的脅威から合法サイトを守るためのネット上のサービスや、
フェースブックなどのソーシャルメディアを利用する。その結果、
大企業の横暴に反対する味方を見つけることができ、
知恵だけでなく寄付金を募ることも可能となる。

しかし、中小企業によるネットを使った戦略は、
大企業による商標権保護の動きに大きな効果を生まないという考えもある。
それは、数々の知的所有権の法律が存在することにより、
小さな違反にでも攻撃的になり、また商標権をより厳格に
声高に主張するようになるからである。さらに、
商標権に関する揉め事を公開することにより、
違反の疑いを目立たさせる逆効果もある。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
But a growing number of business owners have begun
fighting back using a tactic lawyers describe as “shaming,”
or exposing what they view as baseless trademark infringement threats
on the Web or through social-networking websites
such as Facebook and Twitter.

4)キーとなる英文の和訳
しかし、ますます多くの企業オーナーが、弁護士が「辱め」と
呼ぶ戦術を使って反撃し始めている。
その戦術とは、根拠のない商標権侵害の脅しと考えられる文章を、
ウェブ上やフェースブックやTwitterなどの
ソーシャルネットワーキングサイトにさらすことである。

5)気になる単語・表現
fight back自動詞句応戦する、抵抗する、反撃する
tactic名詞方策、戦法
baseless形容詞根拠のない
shame他動詞~を恥させる、~の面目を失わせる
infringement名詞違反、侵害

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
創業間際の企業(スタートアップ企業)や中小企業が、
大企業から受けた商標権使用禁止の要求をネットに
晒した事例として、以下のものが紹介されてある。

1 キープレシピドットコム(KeepRecipe.com)
VSアドキーパー社(AdKeeper Inc.)
キープレシピドットコムとは、オンラインでレシピを扱うサイト。
日本のクックパッドを思い浮かべてもらうといいかもしれない。
このKとKeepを使った社名にアドキーパー社が噛みつき、
商標権の使用停止を求めて訴えを起こした。アドキーパー社は、
オンライン広告を保存(Keep)できるサービスを提供している。
キープレシピドットコムは、訴訟にかかる膨大な費用を負担できず、
一方でアドキーパー社の主張を受け入れて社名を変えるわけにはいかない。
そこで、合法的なネット活動を訴訟の脅威から守るために
アメリカの複数の大学が協力して作ったサイト、
チリングイフェクツドットオルグ(Chilingeffects.org)上に、
アドキーパー社から送られた訴訟文を投稿した。
サイトを見た起業家グループが、自分たちの顧問弁護士に伝え、
無料で代理人を努めてくれるようになった。その結局、
訴訟は起こらなかった。

2 ボーミューラームーア(Bo Muller-Moore)
VSチックフィルエー社(Chick-fil-A Inc.)
Tシャツメーカーのボーミュラームーアは、
スローガンとして使った「ケールをもっと食べろ(Eat More Kale)」が,
チックリフィルエー社の登録商標「もっとチキンを食べろ(Eat Mor Chikin)」
を侵害するとして、使用停止を要求された。
そこで、フェースブックページを開設し、数千人の応援者を獲得。
さらに、寄付ができるリンクを付けたことにより、
1万ドル以上を集めることができた。

3 マイドーガール(My Dough Girl)VSゼネラルミルズ社(General Mills Inc.)
ソルトレークシティーでクッキーを焼くマイドーガールは、
その屋号がゼネラルミルズ社の登録商標
「ピルスベリードーボーイ(Pillsbury Dough Boy)」を侵害するとして、
使用停止をゼネラルミルズ社から要求された。
これに対し、マイドーガールの顧客の一人が怒り、
フェースブックページで抗議を行った。8週間で2000人のファンを獲得。
しかし、マイドーガールのオーナーは、屋号変更を受け入れた。
その理由は、訴訟が解決するのに20年掛かる可能性があり、
屋号よりもクッキーを焼くことを優先したいからである。

1はオーソドックスなタイプであり、2はソーシャルメディアを使って、
寄付金まで獲得した事例である。さらに、3は、訴えられた本人ではなく、
その顧客が代わりにネット上に訴えたという事例。

これらすべての共通するのは、
ネット、特にソーシャルメディアを使って

中小零細企業が大企業の要求に対抗した

ということである。さらに、

ネットを活用することによって、中小零細企業と大企業が
対等の立場に立てるようになった

と言っても過言ではないだろう。もちろん、
すべての場合で対等ということにはならないが、
情報の発信やそのやり取りと言ったコミュニケーションでは、
対等の力を持てるようになったと言えるだろう。

ただ、中小零細企業にとって、この環境は諸手を上げて
喜ぶことにはならない。それは、大企業並のリスクにさらされる
可能性があるからである。例えば、商品にクレームが起こった場合、
この事件がネット上に晒されることになる。これまでならば、
販売数量の小さな中小零細企業の場合、クレームが起こっても
その話が大きく広がることはなかった。せいぜい、
クレームを通知した顧客の家族・友人・会社の同僚ぐらいだろう。
大企業の場合、販売数量が大きいために、一度クレームが起これば、
クレーム件数も大きくなる。だから、クレームの話題が
中小零細企業よりも広がる。しかし、ネット、
特にソーシャルメディアが普及すると、中小零細企業は
販売数量が小さいというメリットを享受できなくなる。
大企業と全く規模には至らずとも、大企業並の対応が必要になる。

ネット、特にソーシャルメディアは、中小零細企業に大企業と
対等の力を与えてくれるが、一方で、大企業並のリスクにさらす
可能性もある。この両面を忘れてはならないだろう。

KeepRecipe.com http://www.recipe.com/recipes/
AdKeeper Inc. http://www.adkeeper.com/
Bo Muller-Moore http://eatmorekale.com/about.html
Chick-fil-A Inc. http://www.chick-fil-a.com/
My Dough Girl http://goo.gl/yjXaK
General Mills Inc. http://www.generalmills.com/
My Douch Girl VS General Mills http://goo.gl/g4r4h

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《今回のヒントのまとめ》
1)スタートアップ企業や中小企業で、大企業から受けた
商標権使用停止の要求をネット上で公開する事例が増えている。
公開することで訴訟を回避でき、膨大な訴訟費用を負担しなくて済む。

2)また、ソーシャルメディアを使えば、賛同者だけでなく
寄付金を集めることも可能となる。さらに、
自社の顧客が代わりに、ソーシャルメディアを使って
賛同者を集めてくれるかもしれない。

3)ネット、特にソーシャルメディアを使えば、
中小零細企業でも大企業と対等に情報発信することが可能となる。

4)一方で、クレームなどのトラブルが起これば、
大企業並のリスクを背負うことになるので、注意が必要である。

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編集後記
訴訟社会のアメリカならではのソーシャルメディアの活用事例。
日本でもこのような使い方が起こるのでしょうか。
大企業が中小企業を訴えることが少ない(ほとんどない)ことを考えると、
起こらないようにも思えます。
ただ、ソーシャルゲームなどで頻出している
大企業同士・ベンチャー同士の訴訟で、ソーシャルメディアが活用されると、
面白そうですね。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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