過激な処分売りをする阪急うめだのキッチンガーデン、その儲けのカラクリとは?
By soho
阪急うめだ本店のデパ地下には、自分でレジまで持って行って会計をする惣菜屋さんがあります。そのお店の名前は、キッチンガーデン。いちいち店員さんに注文を頼む必要がないため、時間に余裕のない人にはぴったりな惣菜屋さんです。
ちなみに、セルフサービスの惣菜屋さんと言えば、JR大阪駅のエキマルシェにもあります。こちらは、今日のごはん和saiの国というお店。こちらは、惣菜が入った入れ物がおしゃれで、500円台から購入できるとあり、結構流行っています。会社帰り・買い物帰りのパパっと夕食を買いたい人には、立地という販売スタイルといいぴったりです。
和saiの国がそこそこ成功しているので、阪急のキッチンガーデンもそれなりに需要があるかと思いきや、ほとんどお客さんがいません。阪急うめだ本店に来た時は、必ずこちらのお店の前を通るのですが、お客さんがいても1人か2人。閑散としているのです。大丈夫かぁ、と思うほどなのですが、今回行って空いている理由がわかりました。それは、
閉店30分ほど前から処分販売をするから
ではないでしょうか。しかもその処分販売方法が斬新。デパ地下で多いのは、全品20%引きや1000円ほどの商品を200円引きするなど。しかし、キッチンガーデンは、いきなり全品200円引きなのです。ちなみに、一番単価の低い商品で398円(ポテトサラダ)。こちらも200円引きになるので、いきなり半額になります。確か、処分も一番乗りで行なっていたようだったので、この影響もあり、200円引きが始まるとすぐに行列ができます。さらに、閉店15分前からは半額セールが始まります。さらに行列が伸びることになります。
こんなに安く販売すれば、定価で買うのが馬鹿らしくなっても不思議ではありません。だから、昼間~夕方に掛けてほとんど人がいないのだと思います。一見すると、このような状況のキッチンガーデンは、失敗のように思えます。しかし、実はそうではなく、この現象を想定して出店しているのではないでしょうか。
というのも、阪急うめだ本店は、親会社・立地が同じ阪神百貨店と差別化する必要があります。だから、阪神百貨店にはない高級感を出しています。その結果、デパ地下商品の単価も、概して阪神百貨店よりも高く、恐らくデパ地下の客単価も阪急の方が高いのでしょう。
しかし、コスパ意識・節約志向を強めた消費者は、単価の高い商品を敬遠します。たまに買ったとしても、購入頻度は低いでしょう。よって、阪急はこのまま高い単価の商品ばかり販売すれば、客寄せの効果も期待されるデパ地下の集客が弱くなる恐れがあります。一方で、集客のために割安な商品を販売すれば、阪神とカニバリしてしまいます。そこで、キッチンガーデンでは、閉店前という口実のもと大幅値引きをしているのではないでしょうか。しかも、セルフサービスという人件費の掛からない販売形態のため、全品200円引きしても、それなりに利益を稼ぐことはできるのだと思います。もともと、200円引き・半額販売で稼ぐフォーマットではないのでしょうか。
さらに、阪急うめだ本店がリニューアルオープンしてから、JR大阪駅にはエキマルシェがオープンしました。このエキマルシェには、デパ地下の廉価版とも言うべき惣菜店がいつくも出店しています。こちらとの競合を考えて、全品200円引きを開始したのかもしれません。ただ、セルフサービスであるため、全品200円引きしても、利益はそれなりに残ることでしょう。
処分売りで稼ぐキッチンガーデンの業態が収益に貢献しているならば、今後エイチ・ツー・オーリテイリング傘下の百貨店で、処分販売で稼ぐセルフ式惣菜店が出店されるかもしれません。
☆ 今日のまとめ☆
阪急うめだ本店地下のキッチンガーデンは、昼間はガラガラ、閉店前の処分売りになって初めて行列ができる。
一見、失敗のように見えるが、セルフサービスというコストの掛からない店舗のため、処分売りでも利益は稼げるだろう。
さらに、閉店前という建前があるため、より単価の低い阪神百貨店とのカニバリを避けることができる。
キッチンガーデンが収益に貢献しているならば、今後エイチ・ツー・オーリテイリング傘下の百貨店でセルフサービス惣菜店が増えるかもしれない。
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☆ 今日のこぼれ話☆
キッチンガーデンは、阪急三番街にもあるようですが、こちらの公式サイトにはデパ地下のお店は掲載されていませんでした。
よって、キッチンガーデンは阪急百貨店独自で開発した惣菜店かもしれないですね。
あくまで推測ですが。
☆サムシンググッド創業者 坂本桂一さんの言葉☆
「情報をただ覚えるのではなく、自分の仮説を検証するために利用するのだ。」
(『頭の良い人が儲からない理由』より)
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