農協改革から考えた、農業ビジネスの魅力と限界

Photo:stoneledge farms CSA (Community Supported Agriculture) Local Farming Week Twenty-Two CLS_6165 By:smith_cl9
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農協の改革についての議論が、6月頭から積極的に行われていますが、この改革の目的は、

 

農業の大規模化を促すため

 

と要約することができるでしょうか。農協の既得権益を剥奪し、企業の参入を可能にすることで、大規模化による効率化を図るというものです。家族主体の零細企業ばかりの市場でありながら、一定の需要は確保されているのですから、企業も農業市場に着目するわけです。製造・販売で鍛えられた効率経営を、今の農業業界に持ち込めば、勝ち目はかなり高いことは間違いありません。さらに、小売業や飲食業なら販路まで確保されているので、その勝算はさらに高まります。一方の政府は、企業により効率経営が行われれば、零細農家を守るための補助金が不要になるというメリットが生じます。だから、企業の後押しを受けて、政府が農業の効率化・農協改革に力を入れているのです。

 

ただし、問題がないわけではありません。その問題とは、人口減少による国内農業市場の縮小です。つまり、需要は減少するのです。一方で企業による参入が相次ぐとなると、供給量は増えることになります。この結果、供給が需要を上回るようになり、価格は下落する確率が高まります。

 

輸出を増やすという方法もありますが、輸出して高値で売れる農作物は、ごく一部。供給過剰を解決するほどの大量輸出は、期待できないと思われます。大規模化により、大幅なコストカットが可能になれば、自動車のように主要輸出品目になりえないわけではないですが、自動車にはない鮮度という大きな価値の毀損は避けることができないため、輸出先の現地農作物との競争は、かなり不利になります。だからこそ、日本製という差別化を行うために、富裕層しか購入できないほどの高い価格を付けるのです。

 

企業による農業参入は、今後避けられないでしょう。よって、供給過剰になることも避けられず、規模の経済が働く企業でもない限り、農業は魅力的な事業とは言えないように思えます。逆に、供給過剰の農作物を安く仕入れ、加工して販売する方が、事業としても魅力度は高いのではないでしょうか。消費者ができれば避けたい添加物を極力使わないとなれば、生産地と消費地の距離を最小化せざるをえないため、各地域に加工場が必要となり、中小企業でも十分参入できると思われます。

 

☆今日のまとめ☆

人口減少の日本で、農業が効率栽培されれば、供給過剰に陥る恐れがある。

一方で、供給過剰になった農作物をうまく活用すれば、低コストで食品を生産することは可能だろう。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

人口減少が不可避の日本を考えると、供給過剰問題はどこの業界でも抱える問題ですね。

だから、付加価値を高めようと、企業は努力しているのでしょう。

なれば、農業も付加価値を高める必要があることになります。

その方法としての加工です。

結局、食料品で単価を上げようとすれば、希少な食材でもなければ、加工度を引き上げるしかないように感じます。

 

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