ダイエー臨時株主総会で感じた食品販売の将来性

ダイエー

 

先日、ダイエーの臨時株主総会に参加しました。大学生の頃から株式投資をしているのですが、株主総会に出席したのは今回が初めて。近くで開催され、しかも興味のある案件だったことが、参加したきっかけです。

 

株主総会での事業説明をまとめると、次のようになります。

 

【ダイエー臨時株主総会での説明まとめ】

  1. 食品市場は全体で50兆円あり、業態を超えた競争が激化している。
  2. 拡大しているのは、ディスカウント、ドラッグ、ネット・宅配
  3. 横ばいなのは、SM、コンビニ
  4. 縮小しているのは、百貨店、飲食店、GMS
  5. ネット・Eコマースの拡大は今後も続き、実店舗型小売は大きな影響を受ける
  6. ダイエーの競合は、ドラッグ・コンビニ・ネット(SM・GMSではない)
  7. よって、「食品」「首都圏・京阪神」に特化した総合食品小売業を目指す
  8. ダイエーの強みは、「食のSPA化を進められる技術・子会社」「食品小売業の運営ノウハウ」「顧客・取引先などステークホルダーとの関係・ブランド」「首都圏・京阪神に集中した店舗網」
  9. 今後は、「フードスタイルストア」「都市型SM」として新たにブランディング
  10. 単にモノを販売するだけではなく、店舗と顧客・顧客同士のコミュニティー作りも重視

 

食品市場の将来性に対しては、結構悲観的に見ているようでした。店舗数がどんどん増えているコンビニでさえ、市場規模が頭打ちになっており、百貨店・GMSは他業態に市場を奪われているのが現状です。ダイエーが特に脅威にしているのが、ネット・宅配市場。所謂無店舗販売という業態です。今後、この業態がますますGMS・SMの市場を奪うと予想し、食品への特化を決めたのです。

 

ダイエーが食品への特化を決めたのは、PBや総菜開発・製造企業を傘下に収めている強みがあるから。グループ内に開発・製造の機能を持つということは、一朝一夕にできるものではありません。かと言って、外注に頼れば済むという問題ではありません。利益率・タイムリーな投入など内製化できる企業よりも劣るからです。

 

食品に特化するとは、食品専門のGMSに転換するということのようです。例えば、これまで衣料や雑貨を販売していた場所に、料理の消耗品や料理道具を販売するとのこと。料理関連のグッズは今でも販売しているので、その品揃えを増やすということでしょう。大型店ならば、輸入食材の売場を大きく取り、品揃えや価格で成城石井やカルディと差別化するのでしょう。

 

食品への特化は、大変面白い試みにも思えますが、簡単に成功するほど甘いものではありません。

 

【食品特化の失敗リスク】

  1. 利益率の高い衣料品を止めることで、利益率が大きく低下する恐れがある。
  2. コミュニティスペースを導入することで、売場面積あたりの販売効率が落ちる。
  3. 品揃えを増やせば、消費者の時短ニーズに合わなくなる。

 

1は、GMSのビジネスモデルの転換を余儀なくされます。従来のモデルは、食料品の販売で集客し、衣料品の販売で儲けるというもの。この衣料品の売上が落ちていることが、GMS収益悪化の大きな要因です。だからこそ、赤字垂れ流しの衣料品を止めるのでしょうが、利益率の高い事業を止めれば、そのビジネスモデルの根幹が大きく揺さぶられることなります。衣料品販売と同等とはいいませんが、それに近い利益率を食品販売で達成することは、相当難しいと言えるでしょう。

 

2について、モノからコトへと動くのは、百貨店・SCも同じ。しかし、コトを重視して儲けることはさほど簡単なことではありません。というのも、後に残らないコトにお金を使うことには、大きなハードルがあるからです。コトはタダという認識を持つ人もまだまだ多いのが現実。よって、そのコトにあたるコミュニケーションにスペースを割けば、当然坪当たりの販売効率が悪化します。長期的に見れば、顧客との結びつきが強まるのですが、短期的にはコストが掛かるだけ。この非効率さが競合との差別化につながるのですが、果実を得られるまで待つことにはそう簡単なことではありません。

 

3について、GMSを食品に特化すれば、それだけ品揃えが増えることになります。消費者にとっては選択肢が増えることであり、ありがたいようにも見えますが、買物により時間が掛かるというデメリットもあります。時短ニーズ追求型のコンビニ・ネット通販が人気ということを考えれば、買物に時間の掛かる店舗は消費者からそっぽを向かれるリスクがあります。

 

もっと言えば、食品に特化した総合業態が、消費者に求められているのか、という疑問もあります。クッキングサポートが人気のヤオコーや輸入食材が豊富な成城石井が人気なのは、価格・品揃え以外の買う理由があるからでしょう。それは、ブランドや販売員への信頼やかっこよさでしょうか。また、消費者の成熟化により、支持される小売業は総合店から専門店に変わってきています。その流れに対して、総合食品小売業を目指すことは、何かチグハグ感を感じざるを得ません。

 

☆今日のまとめ☆

ダイエーは、他業態からの侵食を受けるSM・GMSにおいて、「食品特化」「首都圏・京阪神特化」で乗り切る方針。

GMSは、食品総合量販店として、食に関するモノのみならず、顧客同士・顧客とのコミュニケーションも重視する。

ただし、総合から専門に移行する小売業界で、食品に特化するものの「総合」小売業が消費者ニーズに合うかどうかは大きく疑問。

 

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  • 今日のこぼれ話☆

初めての株主総会でしたが、株主からの質問がここまで多いことに驚きました。

ほとんどの人がイオン株との交換に反対、そして中内さんの時代からの株主は大損したことに大いに腹を立てていた様子。

人間の本性をまざまざと目の当たりにしました。

 

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