会員制九州ローカル情報サービスのみちくさは、プレミアム付き商品券とふるさと納税を足して二で割ったもの?

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日経朝刊に分厚いチラシが折り込まれてあると思いきや、フリーペーパーのみちくさでした。みちくさは、以前にも日経新聞朝刊に折り込まれており、このブログでも取り上げました。もう一回ぐらい折り込まれていたかもしれませんが、少なくとも複数回折り込まれているということは、販促効果があったということです。実際、読者の声の欄に、日経朝刊の折り込みで読んだという神戸市の方が取り上げられていたので、それなりに反響はあったのでしょう。

 

フリーペーパーを有料会員に配る「みちくさ」の面白いビジネスモデルとは?

フリーペーパー「みちくさ」が有料会員に提供する面白い価値とは?

 

みちくさを一言で言えば、会員制の九州旅行者向けのフリーペーパー。会員獲得のために、不定期で新聞に折り込んでいることは間違いありません。誌面の最後の方に、会員制度の説明・利点がデカデカと書かれてあるからです。内容のほとんどは、宮崎を中心にした九州南東部のローカル情報。イベント・飲食・物産がメインです。そう言えば、国内旅行に関する記事が、日経MJに掲載されていました。

 

間もなくゴールデンウイーク。日経産業地域研究所の調査では昨年国内旅行に出かけた人の4割弱が「今年は昨年より国内旅行の回数を増やしたい」と答えた。企業の相次ぐ賃上げ決定も追い風となり、今春以降は家計にゆとりが生まれ、旅行頻度も上がりそうだ。(2015年4月24日付 日経MJ)

 

この記事と複数回折り込まれたみちくさから考えると、消費者の国内旅行ニーズが相当高いことが読み取れます。故郷の姫路も、今年のGWは相当期待できるとのこと。こういうのをビジネスチャンスと呼ぶのですよね。

 

みちくさに戻ると、みちくさが発刊されて今年で15周年に当たるようです。誌面にも書かれてありますが、地方活性化に取り組んだみちくさの精神に時代が追いついたようです。ここで、みちくさのビジネスモデルをおさらいしておきたいと思います。

 

【みちくさのビジネスモデル】

[ターゲット]国内旅行好きの高齢者

[収益モデル]会員からの会費

[提供商品]九州のローカル情報と会費以上のプレゼント

 

通常この手のフリーペーパーはなかなかうまく行きません。というのも、読者に無料で提供するため、広告収入に頼らざるを得ないものの、地方の消費者向け企業には広告を出す余裕がなかなかないからです。以前、大学生向けのフリーペーパーを作ったことがあったのですが、その時も広告主探しに本当に苦労しました。結局集まったのは、当時出たばかりの携帯電話販売店と大学近くの飲食店ぐらいだったと記憶しています。当時日本版金融危機が近づいており、今とは違い景気が悪化傾向にあったので、広告主を営業するのは大変でしたが、今でもそう変わらないでしょう。ちなみに、みちくさにも、広告が掲載されています。そのほとんどが、取り上げた地方のローカル企業・店舗。この開拓には、大変な苦労があったことでしょう。

 

そのみちくさですが、収益のほとんどは会費収入のようです。みちくさには、2000円から10000円まで4タイプの会員があり、それぞれ月会費を収める代わりに、年4回会費以上のプレゼントを受け取ることができます。1年間の負担として、23000円~59000円。どれだけ会員がいるかは不明ですが、お得なプレゼントがもらえるという特典で、これだけの大金を支払ってくれるのだから、不思議なもの。地方物産・地方情報には、お金を払ってでも欲しいニーズが存在するのでしょう。

 

思えば、百貨店の物産展も、あれだけ続くということは、それだけ収益が得られるから。「地方」「ローカル」というのは、実はビジネスにとってお宝キーワードなのかもしれません。

 

もう一つ見逃せないのは、会員特典が、「モノがプレゼントされる」ということです。例えば、月2000円の会員になれば、年間4回で総額28000円相当のモノがプレゼントされます。つまり、24000円負担することで、28000円のモノが獲得できるのです。誰が見ても、お得な企画。これが、有料会員への入会を後押しするのでしょう。九州ローカル情報誌・みちくさが読めるから、有料会員になろうというのは稀でしょう。この誰が見てもお得な企画があるからこそ、財布の紐が緩むのです。

 

ただし、「先にお金を払ってもらって、その金額以上の商品を提供する」というのは、一見お得なように見えますが、それは必ずお金を支払わなければならない場合に限られます。例えば、毎週スーパーで買い物をする人が、5000円のクーポンを4000円で購入するのは経済的です。これが、利用予定のない百貨店ならば、5000円分の欲しい物がその百貨店になければ、損をすることになります。逆に、企業側から見ると、先にお金を支払ってもらうことで、他で起こる可能性のある消費を先取りすることができます。みちくさは、ここに着目のです。お得感を提供しつつ、消費を獲得するというこの販売手法は、本当に賢いやり方だと思います。

 

このやり方、安倍政権の地方創生政策で行われるプレミアム付き商品券と同じです。

 

政府が緊急経済対策の目玉として2014年度補正予算に盛った総額4200億円の地方創生の新たな交付金について、各自治体の提案がほぼ出そろった。地元 空港の利用者にクーポン券を無料で配ったり、子どもの医療費の窓口負担をゼロにしたりするなど地域振興に知恵を競う。従来型のプレミアム付き商品券も目立ち「国主導のバラマキ政策」との批判もある。政府は月内にも交付案件を正式に決める。(2015年3月17日付 日経新聞朝刊)

 

プレミアム付き商品券も、発売早々に売り切れる自治体があるほど人気のようです。お得感を付ければ、バカ売れするのです。

 

もう一つ、みちくさの会員制度には注目点があります。キーワードは、「モノ」です。年に4回モノを受け取るワクワク感。待ち遠しいからこそ、嬉しいもの。このワクワク感こそが、みちくさのウリのように感じてなりません。同じ理屈で人気なのが、ふるさと納税。

 

政府が地方創生を後押ししようと、自分の出身地や応援したい地域に寄付する「ふるさと納税」制度を拡充した。寄付したお礼にもらえる特産品などを紹介する民間のサイトなども増え、利用者が増加している。(2015年4月20日付 日経新聞朝刊)

 

ふるさと納税の場合、社会貢献ができるという点の人気の秘密ですが、2000円で返礼品がもらえるというのも人気の大きな要因です。やってみた人ならわかるかと思いますが、返礼品が送られてくる予定日は事前に告知されないため、思わぬ日にやってきます。実際に届いた時の嬉しさは、通販の商品が届く時の比ではありません。いつ届くのかという期待が、ワクワク感になります。

 

ふるさと納税も地方創生の一貫だと考えれば、みちくさは地方創生の民間版とも言えるかもしれません。それ以上に、国内旅行・ローカル情報・地方物産に大きな需要があるということには、注目です。

 

☆今日のまとめ☆

有料会員による会費収入をビジネスモデルとするみちくさは、プレミア付き商品券のようなお得感と、ふるさと納税のようなモノが届くワクワク感で、集客しているのではないか。

 

 

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  • 今日のこぼれ話☆

私も前から思っていたのですが、ローカル食情報を網羅的に紹介する媒体って本当に少ないと思います。

神戸経済新聞などのサイトもありますが、食に特化していません。

問題は、収益モデルですね。

 

 

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