DNPの属性別DM配布システム、その狙いとは？

（from Flickr）

日経新聞で気になる記事があれば、その記事に印をつけて切り取りしているのですが、その中に大日本印刷（DNP）のものがありました。その記事とは、

大日本印刷（DNP）12日、地域ごとに居住者の属性を分析して、効果的にダイレクトメール（DM）などを配布できるシステムを発見した。

です。このシステムの特徴は、以下の通り。

国勢調査のデータと居住特性（マンション住まいなど）など独自の属性を組み合わせ、60種類に分類。
企業が希望した分類にDMを配布。

例えば、とある企業が

l 神戸市東灘区向洋町に住んでいて

l 夫婦二人の世帯で

l 夫婦の年代は30代後半～40代前半

の消費者にDMを配りたい場合、DNPに依頼すれば可能になるのです。このシステムを使うことにより、企業はターゲットとしていない層へのDM配布を避けることができ、DMの費用対効果を高めることができます。DMというよりも、どちらかというとポスティングをより効率化しようという仕組みです。

記事によると、具体的なサービスは、

l 商品を販売したい顧客層の年齢と性別を入力すると、対象者が多い地域の郵便番号を表示してくれる。

l 地域とその居住者像に関するリポートを作成する。

というもの。地域を指定しなくとも、どの地域に配れば効率がいいかなども教えてくれるようです。

ただ、郵便番号までしか知らせてくれないので、分析はかなり粗い。つまり、企業がターゲットとする消費者が多いけれども、その郵便番号の地域に住む全消費者の50％未満しかいなければ、配布したDMの半数以上に効果は期待できない。ターゲットを絞りすぎる企業には向かないとも言えでしょう。

このDNPのDM配布システムで効果が期待できる企業は、全国のコンビニやスーパー・書店などの小売店で販売されるNB商品を販売する企業。全国展開する飲食店もいいかもしれません。ただ、商圏が広いことがその条件となると思います。商圏が狭い飲食店ならば、商圏に含まれる郵便番号はせいぜい５つほど。ならば、わざわざDNPにお金を払わなくても、その５つの郵便番号の地域の属性を図書館などで調べればいいのです。記事には、

衣料品や保険、スポーツクラブ関連の企業に提案する

と記されています。

恐らく、このシステムを使ったDMはある程度一緒にまとめて配布されるのでしょう。その時、配布される際に使われる袋に「DNP」というブランドが印字されるかもしれません。その「DNP」印が入った袋の中の情報を、消費者が有益に感じたならば、「DNP」印のDMが今後開封される確率が高まります。開封率が高まれば、DMの効果は高まり、このシステムを利用したい企業が増えるかもしれません。DNPの狙いは、消費者にとっては有益な商品情報を配布するとともに、企業にとっては開封率の高いDM配布システムを提供することで、DM市場でのシェアを高めることにあるかもしれません。「DNP」ブランドが確立されれば、これまで消費者から「毛嫌いされていたDM」が「求められるDM」に進化するかもしれません。

☆ 今日のまとめ☆

DNPのDM配布システムは、構成調査と居住特性などの独自属性を組み合わせた６０の分類から、企業の求める年齢と性別に合った郵便番号を抽出し、その郵便番号の地域にDMを配布するものである。

これにより、企業は無差別配布よりもDMの効果を高めることができる。

一方、DNPシステムのDMを消費者が有益な情報に感じれば、「DNP」印の入ったDMを開封する確率が高まり、企業が殺到するかもしれない。

この結果、DNPは、DM市場のシェアを高め、DMを消費者が求める情報に進化させるかもしれない。

☆ 昨日のこぼれ話☆

昨日は、中国で商売をされている方との情報交換会に参加しました。

私は、ドメスティックな事業を模索しているので、すぐには役立ちませんが、中国で求められている商品を知ることができ、とても有益です。