「思考停止ビジネス」、ヒット商品に求められる「つながり」という要素。

坂口孝則さんの「思考停止ビジネス」という書籍を読みました。ビジネス書にしては坂口さんの経験談は小説っぽい口調で語られ、またブラックに近いビジネスも紹介されるなど、異色のビジネス書です。ただ、マーケティング上参考になったので、ここで紹介したいと思います。

 

まず、思考停止ビジネスについて。簡単に言えば、次の特長のあるビジネスがこれに当たります。

  1. 消費者に他の商品と比較検討させない
  2. 買わないという選択肢を消去させる

各家庭にやってくる個別訪問スタイルの営業や新興宗教は、思考停止ビジネスに属します。売り手が、巧みなトークや人間心理を突いた心理学により、代替品と比較検討する余地を与えず、さらには買わないという選択肢も排除します。私も、このような思考停止ビジネスに何度か遭遇したことがありますが、意志の弱い人(いや普通の人と言ってもいいかもしれません)はすぐに買ってしまうような売り手の勢いがありました。その空気は、拒絶を拒絶するものでした。

 

このように考えると、思考停止ビジネスは、社会から排除すべき悪のように思えますが、実は強い需要があるからこそ、思考停止ビジネスが存続している、これが坂口さんの面白い考えなのです。ほとんどの場合が損することになる思考停止ビジネスを、なぜ消費者が求めるのか。

 

その背景には、消費者のモノ離れと経済力低下があるようです。

 

消費者のモノ離れとは、モノを買わなくなったということ。これまで消費者がモノを買っていたのは、社会とつながるためです。例えば、女性にモテたいから乗用車や洋服を買いました。これは、モノが社会とのつながりの媒体になっていた、と言うこともできます。しかし今では、モノではなく、インターネット・通信機器やシンボルを通じて社会とつながるようになりました。スマートフォンやTwitter・Facebook人気は、これらの商品がインターネット利用を前提としており、社会とつながることができるからです。通信機器の代表例は、スマートフォンシンボルとは、みんなが話題とする人気商品。スマートフォンもこれにあたります。

 

そこで、日経トレンディの2011年ヒット商品ランキングを調べると、そのほとんどがインターネット関連・シンボルに振り分けることができます。残りは、商品に本来求められる問題解決タイプ。

インターネット・通信機器関連→スマートフォン(1)、Facebook(2)、誰とでも定額(8)

シンボル→GOPAN(4)、日清カップヌードルごはん(5)、マッコリ(7)、仮面ライダーオーズ 変身ベルト DXオーズドライバー(10)

問題解決→”節電”扇風機(3)、 ミラ イース &デミオ 13-スカイアクティブ(6)、ロキソニンS(9)

※カッコ内は順位

 

問題解決というのは、商品が提供するベネフィットとも言えますが、問題解決型ヒット商品の特徴は、その「わかりやすさ。」「思考停止ビジネス」の中でも、「わかりやすさ」は売れる要素として取り上げられています。

 

このように、人とつながることができるインターネット関連商品・通信機器やシンボルへの消費が増える一方で、モノへの消費が減退しても、モノの供給は行われるので、企業はあの手この手を使って販売します。あの手この手の最たるものは、値下げ。値下げの原資として、人員削減・給与削減という手段が取られるので、消費者の経済力が低下することになります。(デフレスパイラルです。)

 

消費者も、このデフレスパイラルの仕組みを徐々にわかってきたので、自分たちの経済力をこれ以上低下させないために、本当はしたくない消費をするようになります。したくないのだから、できるだけ楽な方法を取ろうとします。あれこれ比較検討したくない。どうせならあれこれ悩まず買ってしまいたい。この条件を揃えるのは、思考停止ビジネス。ここに、思考停止ビジネスに対する需要が生まれます。

 

消費者こそが思考停止Businessを求めている考えには、少し理論の飛躍を感じないわけではないですが、「つながり」がヒット商品を産むという考えには、納得。これはヒット商品だけではなく、価格競争に巻き込まれずに売れる商品にも当てはまるかもしれません。例えば、

旅行+つながり→コロプラ

買い物+つながり→物産展

ゲーム+つながり→ソーシャルゲーム

と考えることができます。楽天人気も、扱い商品の多さだけでなくレビューの多さもその要因でしょう。

 

レストランが価格競争に陥っているのも、「つながり」がないからとも言えます。ファストフードでは、店員さんとのつながりはほとんど期待できません。フルサービスのレストランに行っても、店員さんと会話を楽しめるお店はほとんどありません。ましてや、利用後のお店とのつながりは、ほぼ皆無。(季節になれば、特別メニューの大量生産DMが届くぐらい。)実情は知りませんが、もしかしたら、店員さんとのコミュニケーションを一つの商品としているバーやスナックの方が、コアなファンに利用され続けているのかもしれません。

 

価格競争に巻き込まれない商品作りには、人間の心理を考えながら「つながり」という要素をいかに組み込むかが、重要に思えます。

 

☆今日のまとめ☆

思考停止ビジネスが無くならない背後には、消費の変質がある。

これまでは、社会とつながるための媒体としてモノが消費されていたが、今はインターネット関連商品・通信機器やシンボルしか選択されず、モノは価格競争に陥るようになった。

逆に言えば、モノに「つながり」という要素があれば、価格競争に巻き込まれずに消費される可能性は高くなる。

価格競争に巻き込まれない商品作りには、「つながり」という要素をいかに組み込むかが重要となる。

 

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☆ 今日のこぼれ話☆

価格競争に落った商品の多くは、セルフサービスによって販売される商品。

セルフサービスは、人と人との関わりを排除した販売手法。

ただ、セルフサービスでも、ITを上手く使えば「つながり」を組み込むことはできるかもしれません。

 

☆昨日の目標→その結果☆

◎朝6時に起きる→◯

◎毎日情報を発信する→☓

◎毎日仕事以外の人に話掛ける→◯

◎腕立て・腹筋30回→☓

◎自宅のある12階まで歩いて登る、または自転車を30分以上漕ぐ→◯

◎部屋や家の掃除をする→☓

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