キューピーが裏ワザで売上拡大を目指す理由とは?
y Richard Masoner / Cyclelicious
昨日、近くのグルメシティに行ったところ、キューピーマヨネーズの特売が行われていました。有名ブランドの調味料が特売されることは、特に珍しいわけではありません。しかし、今回の特売には目を引きつけるものがありました。それは、次のような冊子が設置してあったからです。
いつもの料理をさらにおいしくするキューピーマヨネーズ 7つの裏ワザレシピ
この冊子のスゴさをまとめると、次のようになります。
【キューピーマヨネーズの裏ワザ冊子のスゴイところ】
[1] ネーミングで思わず読みたくなる仕掛け
[2] 市場拡大による売上拡大のし掛け
1について、「裏ワザ」という文字を見て、見たくなる人は比較的多いのではないでしょうか。さらに、この冊子はそのまま見られないようになっており、ちぎって手に取らなければ、中身がわかりません。スーパーのサッカ台(ナイロン袋が設置してある場所)でよく見かける抽選はがきのように、紐で束ねてある束から一冊引っこ抜くタイプです。戻す場所がないので、引っこ抜けば持ち帰るしかなく、自宅で見てもらえる可能性が高くなります。そしても、何度も見てもらえれば、2の効果がより高まります。
2について、このレシピ集には、新しいマヨネーズの使い方が掲載されています。従来、マヨネーズは、調味料として味をつける効果を発揮してきました。しかし、このレシピ集では、味だけでなく、次のような効果を発揮するレシピが掲載されています。
【キューピーが提案する新しいマヨネーズの効果】
[1] 油の代わり(えびフライ、チャーハン、その他炒め物)
[2] バターの代わり(サンドイッチ、クッキー、マフィン)
[3] やわらかくする効果(厚焼き玉子、ハンバーグ、ホットケーキ、から揚げ)
[4] サクサクさせる効果(天ぷら、ホットケーキ)
[5] パラパラさせる効果(チャーハン)
[6] コクをアップさせる効果(カレー、納豆)
1・2は油・バターの代替品としての利用を、3~6は料理の品質をアップさせる材料としての利用を提案することにより、マヨネーズの利用機会を増やそうとしています。つまり、これらの利用をしてもらうことで、キューピーはマヨネーズの売上をアップさせることができるのです。
キューピーがなぜこのような販促方法を採ったのかというと、恐らく単なる値下げだけでは販売数量が増えないことがわかったからだと思います。たいていの家に行けば、マヨネーズがあり、物珍しさはありません。無くなったら、補充するという購入パターンです。そのマヨネーズの中でも、キューピーはトップブランド。これ以上知名度をアップさせても、売上増に結びつきません。キューピーにとって、マヨネーズは新規顧客が開拓しにくい、できない商材なのです。
客数を増やしにくいならば、購入頻度を増やせばいい。購入頻度を増やせば、売上を伸ばすことができます。そう考えて、新しい利用方法を、レシピ集の形で提案しているのではないでしょうか。
さらに、消費者にとっては、キューピーのレシピ集を使えば、自宅にあるマヨネーズを使うことができ、当分はお金を払わずに新しいマヨネーズの使い方を楽しめます。消費者にとっても、このレシピ集はかなりうれしい販促品と言えるのです。そして、家のマヨネーズが無くなれば、レシピ集でお世話になったキューピーのマヨネーズを購入する確率は高まります。キューピーにとっては、売上拡大が果たせたことになります。
このように、キューピーの裏ワザレシピ集は、成熟市場の中での売上拡大方法であるとともに、消費者・企業にとってウィンウィンの販促方法でもあるのです。
☆ 今日のまとめ☆
キューピーがマヨネーズ販促に裏ワザレシピ集を使ったのは、成熟市場のトップブランド品の売上拡大方法として、利用機会を増やす必要があると判断したからではないか。
さらに、このレシピ集は、消費者にとって役立つだけでなく、キューピーにとっても売上拡大につながるウィンウィンの販促品でもある。
マーケティング・ビジネスのヒントに関するブログも書いています
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☆ 今日のこぼれ話☆
キューピーのレシピ集が秀逸なのは、驚きがあるからです。
マヨネーズを使えば、揚げずにえびフライができるんですから。
このレシピ集、料理好きにはたまらない。
ちなみに、私は料理よりも食べる方が好きです。
☆経営コンサルタント 石原明さんの言葉☆
「まったく期待していなかったところでものが売れたら、要注意です。それは、需要があるという証拠だからです。」
(『気絶するほど儲かる絶対法則 売れるしかけと勝てるしくみの作り方』より)
※ポッドキャストでいつもお世話になっています。この番組は本当に勉強になります。
※創業者・経営者・コンサルタントの心に残る言葉、元気になる言葉を紹介しています。