採用・人材育成方針を転換したファーストリテイリングが意味すること

Photo:uniqlo By:chinnian
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4月中旬でしたか、日経新聞に衝撃的なファーストリテイリングに関する記事が掲載されていました。

 2014年8月期の連結純利益が増益から一転、減益になる見通しだと発表したばかりのファーストリテイリング。11日の株式市場では売りが膨らみ、終値 は約8%下落した。こうしたなかで柳井正会長兼社長は、パート・アルバイト16000人を正社員に登用する方針について記者会見した。人材の枯渇に危機感 を募らせていることを強調、これまでの経営路線の誤りを口にした。(2014年4月12日付 日経新聞朝刊)

衝撃的だと感じたのは、人材採用・育成方針を180度転換したことです。これまで、グローバル化に応じる人材のみを採用し、早急に店長に育成することを第一目標にしてきました。ファーストリテイリングに就職した人のほとんどは、国内店舗の店長を目指し、海外店舗へ赴任することが、レールだったのです。唯一のレールだと言ってもいいでしょう。がむしゃらに働くことしか認められなかった、と言っていいかもしれません。それが、国内店舗のみで働くことを希望することを認め、また仕事だけでなく日常生活を充実させることを認めるようになったのです。

考えようによっては、成長するベンチャー企業から成熟した大企業に進化したとも捉えることができます。いずれにせよ、グローバルに店舗展開しなければ意味がない、とまで言っていた従来のファーストリテイリングからは考えられない心変わり。この背景には、深刻化する人材不足があるようです。

 理由は圧倒的な人手不足だ。「少子高齢化により人材が枯渇する。時給千円で人が集まる時代は終わりを告げた」と大量で安価な労働力を前提としたチェーン経営の限界を示唆した。(同上)

時給千円でも集まらないことには、びっくりしました。そこまで都心部の人材不足は深刻なのです。マニュアル化によって、コストの低いアルバイト・パートを戦力にして、多店舗展開を進めるチェーンストアの仕組みが崩れようとしていることがわかります。ファーストリテイリングは、店舗運営をアルバイト・パート主体から社員主体に切り替えるようです。時給引き上げだけでは人が集まらず、社員としての採用を余儀なくされたとも言えるでしょう。

チェーンストア大手であり、成長を第一優先に運営してきたファーストリテイリングが大転換を行うということは、この流れはその他チェーンストアにも波及することは間違いないことです。この結果起こる変化として、次のようなことが考えられます。

[1]    少人数運営のためのアウトソーシング増加

[2]    客単価引き上げ

[3]    更なるセルフサービス化

要は、パート・アルバイトを正社員化することで上昇するコストを削減するか、利益率を引き上げることで吸収するしかないのです。従来型の運営では、収益性の低下は免れません。1は重要度の低い作業(例えば棚卸や会計など)の外注であり、2は客数よりも客単価引き上げが重要視されることを意味します。3は、セルフサービス化すべくIT利用が今後増えるかもしれません。

事業開発の観点から見れば、今一番ニーズのある商品とは、人材であることがわかります。

☆今日のまとめ☆

ファーストリテイリングがパート・アルバイトの正社員化、社員の国内志向を認めるのは、人材不足が深刻だからである。

正社員化がその他チェーンストアにも広がれば、アウトソーシングの増加・客単価引き上げ・更なるセルフサービス化が進むかもしれない。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

じわりじわりと、ユニクロの単価も上がっているように感じます。

週末特売の価格が渋いというか。

 

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