外食需要を取り込むコンビニ、それに対抗する外食チェーン
日経ビジネス9月29日号では、外食に関するミニ特集記事が組まれてありました。短い特集ながら、とても考えさせられる記事だっただけに、備忘録も兼ねてまとめておきます。
【外部環境の変化に対応する外食企業】
[データ]外食率(=外食への支出/全国の食料・飲料支出)は、35.9%(2012年)。20年前の37%から減少。
[データ]食の外部化率(=外食+中食への支出/食料・飲料支出)は、同時期比較で、41.1%から451.1%に増加。
[データ]居酒屋の総店舗面積は増加する一方で、成人の飲酒機会は週1.5日にまで減少。
[サイゼリア]持ち帰り専門の低価格パスタ専門店を小型店で実験
[マクドナルド]デジタルプレイランドの設置で、子供連れ家族を集客
[プロント]住宅情報のスーモとの併設店で、来店動機を作り出す
[ファミリーマート]新規出店には、原則イートインスペースを導入
[吉野家・河村社長]食材にこだわるだけでは売れない。飲食体験が売りになる。「飲食業」の再定義が必要。
[ワタミ・桑原社長]「どこでも一定の品質で安心」というチェーン店の強みが弱みに変化。
外食企業の取り組みの共通点は、いかに来店動機を作り出すかということ。食材や味を進化させて美味しさを追求するだけでは、さほど売れないというこの裏返しです。一方のコンビニは、イートインスペースを導入するなど、外食需要の取り組みに力を入れています。コンビニの場合、来店動機はすでに様々あるため、今から特別作り出す必要性は低いと言えます。例えば、週刊誌の最新号が目的の来店客もいれば、公共料金の支払いや納税のために来店する人もいるのです。その人たちが、コンビニで総菜やアルコールを買えば、外食需要を取り込めることができます。逆に、外食企業は、需要を奪われることになります。外食企業が来店動機の創出に必死なのは、コンビニ対策かもしれません。
吉野家の河村社長の話は、特に印象的でした。
出勤時に、コンビニで昼ごはんを買われてしまったら、吉野家はもうどうしようもありません。だからこそ、コンビニには提供できない「体験」を売らなければなりません。(要約であり原文とは異なる)
吉野家の鍋商品は、熱々の鍋をフーフーして食べるという「体験」を売っていたのでしょう。そして、それが消費者ニーズに合致したから、ヒットしたのです。逆に、ワタミの総合居酒屋は、コンビニとの違いを打ち出せなかった。和洋中扱うという点では、コンビニと同じ。一方、価格はコンビニよりも割高。総合居酒屋が赤字なのは、至って単純なのです。そのため、ワタミが取り組んでいるのが、専門化。コンビニとの差別化に他なりません。
ファミリーマートのように、イートインスペース付きのコンビニが増えると、美味しいコーヒーを提供するだけのカフェは、かなり痛手を負うでしょうか。コーヒーの品質が向上すれば、品質だけで勝負するのは難しくなるでしょう。例えば、スタバはコーヒーの品質・美味しさだけで売れているわけではありません。スタバで売れているのは、フラペチーノというデザートと空間。居心地の良さです。スタバと同品質のコーヒーがウリのマックカフェが失敗したのは、居心地が良くなかったと認識しています。
「美味しさ」「利便性」だけでコンビニに対抗するのは、大変難しいでしょう。サービス・専門性・雰囲気など「体験」の提供が、どうしても必要になってくるのでしょう。逆に、美味しい料理を提供できても、サービス・雰囲気に問題があれば、その「体験」が台無しになり、顧客離れを起こすということです。
☆今日のまとめ☆
来店動機の多いコンビニは、美味しさや利便性を提供することで、外食需要を取り組んでいる。
そこで外食企業が取り組んでいるのは、来店動機の創出。
さらに、美味しさだけではなく「体験」を提供することで、コンビニとの差別化を図る。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
賛否両論あるかもしれませんが、「美味しさ」が飲食業成功の十分条件では無くなったと認識しています。
逆に、そこそこの料理でも、「体験」を提供できれば、十分やっていけるのではないでしょうか。
最近出来たラーメン屋があるのですが、そのお店の看板はなんと墨字。
他にはない「体験」が出来そうなお店です。