地ビールの販売

 

大手ビールメーカー4社が本格的にクラフトビールに参入するようです。日経新聞には、写真付きの記事が掲載されていました。

 

大手がクラフトビールに参入する理由は明らか。それは、

 

従来型ビール系飲料では若者に買ってもらえないから

 

です。若者を無視して、既存顧客である中高年だけを相手にしてもいいのですが、やはり年齢とともに飲酒量も減っていき、販売数量・金額ともジリ貧になります。その対策としてプレミアムビールという高単価カテゴリーが出来たのですが、もう新鮮味はありません。だから、客数を広げるために、クラフトビールを売り出すのです。日経の記事にもあるように、20代・30代の獲得を目指すようです。

 

記事に写真付きで掲載されている大手メーカーのクラフトビールをまとめると、次のようになります。

 

【大手4社のクラフトビールまとめ】

[容量]330ml・350ml(350ml主体)

[価格]250円~400円台

[商品特徴]香りで差別化

 

容量については、キリン以外すべて350ml。クラフトビールの参入を機会に、世界標準の330mlに切り替えるのでは、と期待したのですが、既存の資材の活用を優先するようです。ヤッホーブルーイングなどメジャーなクラフトビールが350ml缶なので、それに合したのかもしれません。キリンは、缶ではなく瓶なので、330mlなのでしょうか。確か、コンビニ限定品のプレミアムビールは、330ml瓶を使っていたような。ならば、キリンの場合も、既存の資材を活用することになります。

 

価格は、330ml瓶のキリンが400円台、サッポロが288円、アサヒ・サントリーが250円程度となっています。クラフトビールだから、高めの価格に設定されていますが、アサヒ・サントリーの価格設定は面白い。ヤッホーブルーイングなどメジャークラフトビールを意識した価格であり、プレミアムビールよりも30円ほど高く設定しています。250円ならば、300円よりも200円寄りの印象が強く、割安感を出すこともできます。サッポロの288円は、今ひとつその根拠がわかりません。SNSを通じて作った特別醸造ビールが、290円前後で売れたという実績があるのでしょうか。キリンは、400円ほどで売れたコンビニ限定品の実績を考えた値付けでしょう。

 

特徴については、どの銘柄も香りで従来型ビール系飲料と差別化。違いが鮮明ならば、高くても売れる。だから、クラフトビールは高くても売れているのです。

 

ただし、大手がクラフトビールで満足な収益を上げられるかは、かなり難しいのではないか、と予想しています。というのも、従来型ビールとのビジネスモデルが、全く異なるからです。従来型ビールの場合は、値下げにより大量に販売し、規模の経済を活かして利益を大きく伸ばすというモデル。だから、1缶よりも6缶パック、6缶パックよりもケース売りの方が、1缶あたりの単価はかなり割安になったのです。(今では、昔よりも価格が是正され、無茶な安売りは減りましたが。)販売数量を最大化することが、このゲームに勝つ最大の方法だったのです。一部の居酒屋で、390円ほどの生ビールがあるのも、販売数量最大化のためです。

 

一方、クラフトビールの場合は、価格ではなく品質で売る商品のため、そう販売数量を伸ばすことはできません。だから、市場規模も小さいのです。プレモル・エビスなどのプレミアムビールがクラフトビールに取って代わられるというのも、ほぼないでしょう。ブランド認知度が違います。ちなみに、後発のアサヒ・キリンが、既存ブランドの派生品でプレミアムビールに参入したのは、ブランド認知度のハンディキャップを最小化するためです。

 

では、大手はどう売るか?恐らく、販売店を増やすことに一番力を入れることでしょう。間口を増やせば、売れる確率が高くなるからです。しかし、商品の棚を確保したからといって、これで一件落着ともなりません。というのは、ビールには賞味期限があって、長期間売れなければ、不良在庫化し廃棄をしなければならない恐れがあるからです。このようなリスクを負ってまで、クラフトビールを販売する小売店はそう多くはありません。不良在庫の返品を受ければ、メーカーにとってはコストとなります。そんなコストを掛けてまでクラフトビールに参入する必要性はあるのか、という声がメーカー内部から出てくるのも時間の問題かもしれません。

 

この難題を解決するために、キリンは見学可能の直営店を開くようです。単にブランドロイヤリティを高めるためだけではなく、代官山という都心に立地させることで、販売への期待は大きそうです。代官山なら、20代・30代の集客は相当見込めるでしょうから。サッポロビールは、独自のネット通販や傘下の外食店での販売を行うとのこと。販路拡大が目的です。

 

値段を下げずに販売数量を増やすには、ブランドロイヤリティを高める必要があります。今後、クラフトビールの広告が増えることは間違いないでしょう。イベントや大型商業施設などで、大規模な試飲会が行われるかもしれません。大手のクラフトビール参入で一番喜ぶのは、広告代理店かもしれません。

 

もしかしたら、大手はクラフトビールでそもそも儲けようとは思っていないのかもしれません。クラフトビールを通じて、20代・30代にブランドを知ってもらい、従来型ビールの販売増を目指しているということも、十分考えられます。代官山のキリン直営店に、一番搾りが置いていることは十分考えられますから。もともと、クラフトビールは市場規模が小さく、大手にとっては収益性の面で旨みが小さな市場。赤字でも、収益性の高いビール・プレミアムビールの広告費と考えれば、安いものかもしれませんね。

 

☆今日のまとめ☆

大手メーカーがクラフトビールに参入したが、従来型ビール系飲料とは違い、値下げによる収益拡大が目指せないため、販売に苦労するのではないか?

それとも、そもそも儲けようという気は無く、収益性の高い基幹ブランドの販売増が目的なのかもしれない。

 

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  • 今日のこぼれ話☆

昔ブログでも取り上げたのですが、JR住吉駅前にクラフトビールのバーがありました。

しかし、集客が難しかったのか、一年ほどで閉店。

その後に居抜きで格安立ち飲み居酒屋が出来ましたが、繁盛しているようです。

神戸のJR住吉駅周辺と言えば、不動産価格も高く比較的豊かな層の多い地域。

それでも、クラフトビールバーが成立しなかったということは、クラフトビールの販売がいかに難しいかを物語っています。