【日経MJ】値上げした牛丼よりも高い定食を選んだ消費者心理
牛丼の値上げに対して消費者がどのような行動を取ったかに関する記事が、日経MJの一面に掲載されていました。
4月の「すき家」の値上げで牛丼並盛りから200円台が消えた。円安や原料高などが理由だが、割安なメニューがあふれるランチ商戦を前に消費者は冷淡。日 経MJが100人の利用者に聞いたところ、約2割が「利用を減らした」とノーを突きつけた。節約志向は根強く、牛丼の相場観を崩すようなお得感を打ち出さ ない限り、反乱は収まらない。(2015年5月13日付 日経MJ)
既存店売上高からもわかるように、吉野家・すき家の牛丼大幅値上げにより、客数が大きく減少しました。つまり、客離れが起こったわけです。ならば、顧客は牛丼から何にシフトしたのか。
【値上げした牛丼から切り替えた食事】
- コンビニのおにぎり・サンドイッチ→3割
- うどん・そば店→3割
- 持参した弁当→3割
- 定食店→1割
※100人アンケートのうち、利用を減らした人の切り替えた先。数字はすべて概算。
注意して欲しいのは、牛丼チェーン利用者100人のデータであること。つまり、サンプル数が小さいため、この結果を母数全体に適応していいかは、かない微妙かと思います。この点を考えなければ、定食店以外は、すべて300円未満で昼食が済む手段。例えば、コンビニの場合は、記事によると、おにぎりとカップラーメンなら250円で済みます。丸亀製麺ならば、釜揚げまたはざるうどんの並盛りで290円。いずれも、値上げ前の牛丼並盛り280円とほぼ同じまたは安く済みます。弁当は、作る手間が掛かるものの、それさえクリアすれば、100円台でも作ることは可能。弁当へのシフトは、牛丼チェーンのメイン顧客であるサラリーマン層の節約志向の強さを物語るのではないでしょうか。
腑に落ちないのが、定食店。値上げ後の牛丼よりも、価格は高い。それでも、1割の人が定食店の利用に切り替えているのです。日経には、
380円の牛丼よりも高くても、満足感があるから
と説明されていました。この満足感は、満腹感とヘルシーさでしょうか。牛丼だけを食べるよりは、小鉢や味噌汁が付いた定食の方が、健康には良さそうです。さらに、ご飯・味噌汁お替わり自由のチェーンもあり、必ずお腹いっぱい食べられるというメリットもあります。高くても売れる秘訣が、定食にはあるのです。
【定食が牛丼よりも高くても選ばれる理由】
- 栄養バランスが比較的いいため、健康に良さそうなため(ヘルシーニーズ)
- ご飯・味噌汁お替わり自由ならば、必ず満腹感が得られるから(食欲・失敗したくないニーズ)
2の「必ず」というのは、お替わり自由の店やビュッフェ店が選ばれる大きな要素でしょうか。満足できないというリスクがゼロになるという安心感があります。
また、牛丼価格が200円台から300円台に上昇したことにより、消費者の選択方法が大きく変わったのではないでしょうか。
【値上げにより起こった牛丼の選択方法の変化】
[200円台]圧倒的な安さのため一択
[300円台]300円台後半になることで、他商品との比較にさらされる
牛丼チェーンは、コンビニや弁当とは違って、座って食べるスペースとお水が提供されます。しかも、カウンターで限られているとは言え外食サービスなので、店員とのコミュニケーションが楽しめます。これだけのコトが、牛丼も付いて200円台で受けられるコスパの高さは、他の追随を許しません。しかし、これが300円台後半まで値上がりすると、コスパの高さはずいぶんと低くなったため、他商品と比較されるようになり、コンビニやうどん・そば店、弁当、定食店へ顧客が奪われたのではないでしょうか。
☆今日のまとめ☆
値上げした牛丼よりも高い定食店にシフトしたのは、よりヘルシーで満腹感が必ず得られるからではないか。
ヘルシーニーズ・失敗したくないニーズの高さを物語っている。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
専門家の意見として、原材料高などコスト上昇を転嫁しただけの値上げは、なかなか顧客に受け入れられにくいというのがありました。
ユニクロが大幅値上げとともに、商品のブラッシュアップを図るのはこのためでしょう。
ただし、単純値上げで既存店売上はプラスの企業があるのも事実。
このあたりは、本当に難しい。