【491号】投資ファンドが、営業不振のモール・アナハイムガーデンウォークを買収する理由。

アナハイムガーデンウォーク(from flickr)

 

◎本日のニュース

1)見出し
Mall Entertains New Mix

【出典】
http://goo.gl/TVdR0

2)要約
投資ファンドを運営するリレイテッド社は、
営業不振に苦しむショッピングモール・
アナハイムガーデンウォークの株式取得で合意に達した。

アナハイムガーデンウォークは、
カリフォルニアのディズニーランド近郊に位置するが、
テナント空室率が45%にも達している。
営業不振の要因は主に、
オープン時期が金融危機の深刻化した2008年半ばであった
というタイミングの問題、
ディズニーランドに近いことが逆に不利になったという立地の問題
の2つが挙げられる。

一方、リレイテッドは、

ショッピング施設から娯楽施設に特徴を変えることで、
再生を計画している。
具体的には、小売店舗を減らす一方で、
娯楽サービスを提供するレストランやその他娯楽施設の誘致を目指す。
その理由は、モール来場者の70%が旅行者であり、
旅行者は、ありふれた小売店舗より楽しめる施設を求めているからである。また、アナハイムガーデンウォークが立地する
オレンジ州全体の小売テナント空室率が6.5%にとどまり改善していること、
ディズニーリゾートの来場客が大きく増えていること、
アナハイム市がモールの改造を許可したこと、
もリレイテッドの計画に追い風となっている。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Related Cos. is taking a majority stake in a broken mall
near Disneyland that it plans to fix by taking a page
from Disney’s playbook: mixing more entertainment
and restaurants in with the stores.

4)キーとなる英文の和訳
リレイテッドの社は、ディズニーランド近郊の
経営不振のモールの株式大半を取得しようとしている。
そして、ディズニーの演出を真似ることによって再生を計画している。
その演出とは、小売店舗により多くの娯楽要素や
レストランを混ぜ合わせることである。

5)気になる単語・表現
Cos.    名詞      会社(= company)
broken  形容詞     故障した;不完全な
playbook        名詞      脚本集
mix A with in B 他動詞句    AをBに加える
※thatからコロン(:)までを直訳すると、
「レイテッド社は、ディズニーの脚本集から1ページを取ることによって、
修繕しようと計画している。」となる。
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
アナハイムガーデンウォークのテナント空室率45%がいかに高いかは、
同じ規模のショッピングモールのテナント空室率が
全国平均で9.3%であることと比較すると、理解できる。
また、広さは43万9千平方フィート(約4万780平方メートル)だから、
御殿場アウトレットの約10分の1,
カリフォルニアのディズニーランドの約20分の1。
小ぶりの屋外型モールである。

このモールにリレイテッド社(Related Cos.)が目を付けたのは

現在のテナント構成・モール特徴が、来場者のニーズに合致していないから

と考えたからである。顧客ニーズに合致するようモールを改造すれば、
再生できると読んだ。

アナハイムガーデンウォークの利用者の特徴は、
その70%が旅行者ということ。
つまり、顧客ターゲットは、近隣住民ではない。
近隣住民がターゲットならば、日常生活で必要なショップを集めれば、
来場を見込める。しかし、旅行者がターゲットであるならば、
日常的ではなく非日常的な空間が必要になる。
その非日常的な空間として、娯楽要素をこのモールにふんだんに組み込めば、
旅行者の来場者が多くなり、売上・利益を最大化できる。
これが、リレイテッドの戦略である。
ちなみに、娯楽要素として、コメディクラブ(喜劇劇場)、
手品ショップのようなノベルティショップ、
ベリーダンスが行われたり店員が歌やダンスを
披露するテーマレストランを挙げている。

また、リレイテッドは立地の問題はないと判断している。
立地の問題を具体的に示すと、
◯ディズニーランドの来場者の利用が期待できるが、
実際には買い物はディズニーランド内で済ませてしまい、
ディズニーランドの集客力を活用できていない。
◯アナハイムコンベンションセンターから徒歩圏だが、
別のモーテルやホテルに遮られてモールが見えず、
その存在に気づいてもらえていない。
である。一方で、
◯オレンジ州のテナント空室率は、今年第2四半期が6.5%に改善している。
◯アナハイムのディズニーランドリゾート
(ディズニーランドともう一つのテーマパークを含む)は、
第三四半期に来場客数の新記録を出した。
その要因の一つは、新しいアトラクション。
というデータもある。このデータからわかることは、
アナハイム市全体として景気は比較的良く、
さらにディズニーランドの集客力は増している、
ということである。ディズニーランドの近くに立地する
アナハイムガーデンウォークにとって、
この事実は大きな追い風であり、
集客施設に近接していることは大きなメリットである。

そこで、リレイテッドは、立地問題の解決方法として、
ありふれた小売店の集合体から娯楽施設へと変身することにより、
これまでスルーしてきたディズニーランドの来場者を集客できる。
◯目立つ看板や告知をすることで、
コンベンションセンター利用者の集客を期待できる。
と考えた。
つまり、モールのテナント構成をターゲット顧客のニーズに合わせ、
モールの存在やその特徴をターゲット顧客に知らせる
コミュニケーション方法を刷新することで、解決したのである。

このリレイテッドの事例から学べることは、

ターゲット顧客を明確化し、そのニーズに合致するような商品
(モノ・サービス)を提供することは、ビジネスの要諦である

ということである。

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《今回のヒントのまとめ》

1)投資ファンドを運営するリレイテッド社は、
経営不振に苦しむショッピングモール・アナハイムガーデンウォークの
株式の大部分取得で、合意した。

2)リレイテッドが、アナハイムガーデンウォークの再生が
可能だと判断したのは、
現在のテナント構成がターゲット顧客のニーズに合致していない、
と考えたからである。

3)モール来店者の70%は旅行者であるにもかかわらず、
モールはありふれた小売店中心で、
さらにテナント空室率が45%にも達していたため、
売上が低迷していた。

4)そこでモールを、旅行者が望む非日常的な娯楽施設に変えることで、
これまで集客できなかったディズニーランド来場者の来店が見込めるとした。

5)この事例から、ターゲット顧客を明確化し、
そのニーズを満たす商品を提供することが、いかに重要かがわかる。

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編集後記
こんばんは、高尾です。
思えば、アナハイムのディズニーランドには、1996年に行ったきり。
アメリカ本土にも、1998年以来行っていません。
アメリカ絡みの仕事があれば、比較的容易に行けるかもしれないですが、
今はそういうのもありません。
旅行で行けばいいのですが、アメリカ本土は遠いのがネック。
次行くのはいつになるのでしょうか。
町を歩いてアメリカの経済実態をこの目で見ることには、興味ありますが。
(当分、無理かな。)

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