【497号】節約を覚えた消費者と景気回復を諦めた小売店

By angeljaneann

 

◎本日のニュース

1)見出し
Frontier of Frugality

【出典】
http://goo.gl/ekJp9

2)要約
小売業は、新しい消費行動に直面している。
その消費行動とは、景気後退期に低価格品に切り替えたっきり、
元には戻らない買い物スタイルである。
高い失業率、依然重い負債、住宅価格の下落、
食料品・ガソリン価格の高騰により、消費者は、
必要なものだけを購入し、高級品は避け、
そして購入する際もクーポンを利用し、
セール品を探すようになった。

これまで景気回復に望みを託してきた小売企業やメーカーは、
この節約消費に対応する方法を模索している。
その方法として、メーカーは、

原料価格の高騰が収まるのも待ったり、
低価格で販売できる小さなサイズの商品をブランドに加えたり、している。
小売店は、バックツゥースクールセールなどの繁忙期に雇用を増やさなかったり、
より低価格で販売できるPB(プライベートブランド)商品を拡充したり、
全品対象のクレジットカード割引を実施したり、している。さらに、株価が上昇し景気回復期待が持てた早春に強気に発注したことで、
過剰在庫の懸念も広がっている。また、アパレル企業は、
綿価格上昇分を販売価格に転嫁できないという別の問題も抱える。
これらの在庫・コストアップ問題に対しては、
できるだけ利幅を確保できる割引を行う企業が多い。

一方、節約消費に中で支持を増やしているのが、
一ドルショップ。一ドルショップ大手のダラージェネラルは、
景気後退以前には利用しなかった消費者を集客できたことが要因で
売上を上方修正している。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Retailers are coming to terms with a new reality: the consumer
who traded down during the recession and never came back.

4)キーとなる英文の和訳
小売業界は、新しい現実を諦めて受け入れようとしている。
その現実とは、消費者が景気後退期に低価格品に切り替え、
その後元の商品には戻らなかったという現実である。

5)気になる単語・表現
come to terms with      自動詞句    ~を諦めて受け入れる;~と合意に達する
trade down      自動詞句    より安い物と交換する

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
ウォルマート(Wal-Mart Stores Inc.)幹部によると、
次のような購買現象が起こっているという。
それは、給料日直後に買いだめし、
お金が無くなってくるとできるだけ低価格の小容量商品を購入するという、
給料支払サイクルに合わせた買い物である。
不要不急なものはできるだけ購入せず、
必要なものでも必要なだけしか買いたくない消費者心理が読み取れる。

この節約志向に対して、メーカー・小売店は次のような対応を行なっている。
【メーカー】
1.食料や綿などの高騰が収まるまで、価格引き上げを行わない。
2.低価格で販売できる小容量商品を導入する(コカ・コーラなど)
【小売店】
1.通常ならばスタッフを増員する繁忙期でも、人員を増やさない。
2.より低価格で販売できるPB商品を開発・販売する。
3.クレジットカード利用者に対し、全品割引で販売する。
これらに共通するのは、
コストアップによる価格引き上げを行わず、できるだけ売上を確保しよう
という方針である。

メーカーの1は、特に綿価格高騰に悩むアパレル企業が行なっている。
当初、綿のコストアップ分を販売価格に転嫁する予定であった。
しかし、EU債務問題による株安で、価格転嫁できる環境ではなくなった。
衣類は、売れ残ると価値が大幅に下がるので、
価格転嫁どころか割引も余儀なくされている。

メーカーの2に関しては、一ドルショップで顕著である。
一ドルショップで販売される、
NB(ナショナルブランド、メーカー品)商品の小容量タイプが、
人気という。

小売店の3に関しては、カード割引を行なっているのは、
ディスカウントショップのターゲット(Target)である。
クレジットカードまたはデビットカード利用者は、
全品5%引きで購入できる。
これを導入したのは、カード利用者の客単価が
カードを使わない人の単価よりも
約50%高いからである。5%割り引いても、
カードを利用してもらうことによって、
売上金額・利益金額を増やすことができる。

この手法に対し、ウォルマートは
レイアウェイ(layaway)という方法を用いる。
これは、元々大恐慌期に行われた販売方法で、
月賦で販売するものの支払いが済むまで商品はお店が管理するという方法である。
カードを利用できない顧客から支持を得ている。

一方、節約消費を追い風に業績を伸ばす業態もある。
それは、一ドルショップである。
その最大手ダラージェネラルは、
景気後退から今回の景気停滞に至って、
2つのタイプの消費者層を獲得している。
その消費者層とは、
1.ガソリン・食料品価格の高騰により生活が苦しくなり、
ダラージェネラルで買い物をするようになった消費者
2.他の小売店でも十分買い物をすることができるが、
節約し賢く買い物をすることを覚えた消費者
である。1の消費者層に対しては、
特にお金に苦しくなる給料日前をターゲットとして、
販売している。

このように、小売店・メーカーは、消費者の節約志向に対して、
低価格販売で対応しようとしている。
消費者ニーズが低価格品にあるのだから、
仕方ないことのように思える。
この場合、企業間で差を生み出すのは、
低価格で利益を出せる仕組みを作れるかどうかである。
それは、製造・販売システムかもしれないし、
低価格プラスαの付加価値かもしれない。
ダラージェネラルが健康・美容カテゴリーのPBを導入したことは、
プラスαの商品開発に当たるだろう。

また、消費者をより細かく分類すると、
必ずしも低価格品しか購入しない消費者ばかりではないことがわかる。
ターゲットによると、世帯年収7万5千ドル以上の世帯では、
景気後退前の消費スタイルに戻りつつあるという。
一方、5万ドル~7万5千ドルの世帯では、
価格上昇や可処分所得の減少により、
消費を抑制している。ターゲットのように顧客をより細かく分類すれば、
価格の高い高付加価値商品を購入できる層を見付けられるかもしれない。
販売が難しい時だからこそ、ターゲットを明確にする大切さが理解できる。
消費者を一括りで説明する場合は、そこにチャンスがあるかもしれない。

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《今回のヒントのまとめ》

1)米消費者は、金融危機後の景気後退に身につけた節約消費を継続に、
元に戻さないでいる。小売店・メーカーは、
この新しい消費スタイルを受け入れざるを得なくなっている。

2)この消費スタイルに対し、小売店・メーカーとも低価格販売で対応している。
メーカーなら、値上げの凍結や低価格販売できる小容量商品の開発・販売など、
小売店なら、人員削減・PB開発・割引などである。

3)節約したい消費者ニーズに答えたわけであるが、
低価格で利益を生み出せる仕組みがあるかどうかで、
企業間格差を生み出す。それは、販売・製造システムにあるかもしれないし、
プラスαの商品開発かもしれない。

4)また、消費者をより細かく分類すると、
価格の高い高付加価値商品を購入できる層を見付けられるかもしれない。
ターゲットを明確にすることの大切さがわかる。

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ブリューノ デゾネイビセイ ブルゴーニュ・ルージュ2007
(Bruno Desaunay-Bissey Bourgogne Rouge2007)
http://goo.gl/g2Xlj
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最近、ワインを勉強しています。
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編集後記
日本でも景気後退の足音が聞こえます。
例えば、コンビニや餃子の王将などを覗くと、
変化がわかります。
詳しいことは、また別の機会に。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!

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