【515号】携帯決済サービス・グーグルワレット利用を拒絶したベライゾンの目的とリスクとは?

グーグルワレットBy kennejima

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◎本日のニュース

1)見出し
War Over the Digital Wallet

【出典】
http://goo.gl/GTBxD

2)要約
グーグル社は、携帯電話キャリア最大手の
ベライゾン・ワイヤレス社から発売する携帯端末には、
グーグルの携帯決済サービス・グーグルワレットを
インストールしない可能性があると、発表した。
この背景には、携帯決済サービスをめぐって、
グーグルとベライゾンとの対立がある。

グーグルが決済サービスに進出する目的は、
ローカル広告市場を開拓するためである。
グーグルワレットは、決済サービスだけでなく、
電子クーポンやロイヤリティプログラムの
ポイントの活用も可能にさせる。
これらの情報を統合すれば、

より深い顧客情報を小売店に提供できる。
その顧客情報を使うことによって、ターゲットを絞った広告出稿や、
店舗の近くにいる携帯端末ユーザーへのクーポン発行が可能となる。一方、ベライゾンは、競合するAT&TやTモバイルUSAと提携し、
アイシスという携帯決済企業を設立。グーグルワレットが、
この携帯決済サービスと競合するとして、
グーグルワレットの搭載に難色を示している。
携帯キャリアによる携帯決済サービスへの進出は、
携帯端末上でのコンテンツへの支配力が弱まったことを物語る。
また、グーグルが、最大のシェアを持つアンドロイドOSに、
グーグルワレットをどのように組み込むかについて、
心配されている。

ただ、今のところ、多くの消費者が携帯決済サービスを利用したい
と感じているかどうかについては、疑問が残る。
また、決済サービス機能を備えた携帯電話は、非常に限られている。

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◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
The war of the “wallets” is escalating, with two of
the biggest names in technology skirmishing over
who will control how consumers spend money using their smartphones.

4)キーとなる英文の和訳
「財布」を巡る戦いは、徐々に激しくなっている。
技術力に長けた二社が、スマートフォンを利用した
消費者の決済方法を誰が支配するかについて、
小競り合いをしているからである。

5)気になる単語・表現
skirmish        自動詞     小競り合いをする

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
携帯決済サービスに関するグーグル社(Google Inc.)と
ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)との対立が表面化したのは、
グーグルの新スマートフォン・ギャラクシーネクサス(Galaxy Nexus)に
グーグルワレット(Google Wallet)が搭載されないと、
グーグルが発表したからである。グーグルワレットとは、
グーグルが開発した携帯決済サービス。記事によると、
ギャラクシーネクサスにプレインストールされないどころか、
消費者自身によるダウンロードもできないという。
(ダウンロードできないことに関しては、疑問が残る。
OSの違いによりアプリ利用に制限があるのはわかるが、
機種によって一部のアプリを利用制限できるのだろうか。)

ベライゾンが、グーグルワレットに拒否反応を示したのは、
グーグルワレットがベライゾン提供の携帯決済サービスと競合するからである。
ベライゾンの携帯決済サービスは、携帯キャリアとして競合する
AT&T社(AT&T Inc.)やTモバイルUSA(T-Mobile USA)と共同で設立した
ジョイントベンチャー・アイシス(ISIS)が提供する。
アイシスの決済サービスを通じて、ベライゾンは収益を得ると考えられるので、
グーグルワレットの利用を許可すると、収益機会を失うことになる。
ただ、携帯決済サービスを巡る対立は、
単に収益機会を失う懸念だけを問題にしているわけではない。
この背後には、携帯電話上のコンテンツを巡る対立がある。

スマートフォンが登場するまでは、携帯キャリアが携帯端末や
端末上のコンテンツに大きな影響力があった。
この影響力は支配力とも言える。携帯キャリアが、
どのような端末を作り、その端末でどのようなコンテンツを提供するかについて、
決めていた。携帯キャリアが違えば、端末・コンテンツが違っていた。

しかし、スマートフォンが登場すると、
スマートフォン上で起動するOSが支配力を持つことになった。
このOSとは、グーグルのアンドロイドやアップルのiOSなど。
OSによって、OS上で動くコンテンツ(アプリ)は制限を受ける。
逆言うと、OSが同じならば、コンテンツに違いが無くなる。
そして、そのOSを持つスマートフォンのユーザーは、
自分の好むコンテンツを選ぶことができる。
OSが同じであれば、通信会社が異なっても、同じコンテンツを享受できる。
携帯キャリアのコンテンツに対する支配力が無くなったと言っても
いいだろう。

この結果、消費者の携帯キャリアに対するこだわりが小さくなり、
携帯キャリアを変えるハードルが小さくなる。
携帯キャリアの収益に対しては、マイナスに働く。
この外部環境の変化に対して取った措置が、
携帯決済サービスへの進出である。

携帯決済サービスを行うことの利点は、次の2つ。
1.新たな収益源を獲得できる
2.携帯キャリアとしての強みを利用できる
1については、決済毎に手数料収入を見込め、新たな収益源となる。
2の強みとは、自社で販売する携帯端末を決める権限があることと、
数少ない携帯キャリアの一つであること。

どんな端末を販売するかについて、携帯キャリア自身に決める権限がある。
携帯キャリアの商品として販売するので、
携帯端末の細かい仕様まで決めることができる。
この強みを活かして、ベライゾンは、ギャラクシーネクサスでの
グーグルワレット利用を不可能にさせた。その代わり、
アイシスのサービスを搭載することもできる。
OSによって利用できるコンテンツが決まると言っても、
端末に関して最終的に決定するのは携帯キャリア。
端末に制限があれば、OS上で利用できるコンテンツにも制限が課される。
(端末によるダウンロードの可否については、かなり疑問。)

ならば、OSやコンテンツ側が、制限のない携帯キャリアを選べばよいのだが、
その選択肢は少ない。それは、携帯キャリア市場が寡占されているからである。
グーグルワレットでの対立で言えば、
グーグルはベライゾン以外のキャリアを選ぶこともできる。
しかし、ベライゾンの推す携帯決済サービスを提供するアイシスには、
AT&TやTモバイルUSAも出資をするので、
AT&TやTモバイルUSAもグーグルワレットを拒絶するだろう。
よって、グーグルの選択肢はかなり少なくなる。
(グーグルワレットでは、携帯キャリア業界3位のスプリント・
ネクステルと提携している。)寡占化された市場ゆえの選択肢の少なさは、
ベライゾンにとって有利に働く。

外部環境が変化すれば、収益に悪影響を及ぼすことが多い。
その場合、自社の強みを再認識し、その強みを活かして新たな収益源を探せば、
変化に対応できるかもしれない。

ただし、ベライゾンにリスクがないわけではない。
寡占市場や端末決定権を利用して、自社に有利な端末を販売すると、
消費者の離反を招く恐れがある。
その結果、携帯キャリア自体を選んでもらえなくなるかもしれない。
特に、スマートフォンになってから携帯キャリアのスイッチが
容易になっていることを考えると、解約数が新規加入数を上回り、
利用者が純減する可能性さえ否定できない。日本のauが、
利益率の低いiPhoneの販売に止む無く踏み切ったのも、
利用者数が低迷したから。消費者ニーズを読み損ねると、
強みが悲劇につながることもある。

※ベライゾン版ギャラクシーネクサスは、まだ発売されておらず、
グーグルワレットが利用できるかどうかについて定かではありません。

ギャラクシーネクサス http://www.google.com/nexus/
ISIS http://www.paywithisis.com/
グーグルワレット http://www.google.com/wallet/

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《今回のヒントのまとめ》

1)ベライゾンが携帯決済サービスに進出したのは、
外部環境の変化のため。コンテンツがOSに依存する
スマートフォンが増えると、
携帯キャリアのスイッチが容易になり、
携帯キャリアにとってはマイナスの影響を受ける。

2)携帯決済サービスに進出する利点は、
新たな収益源を獲得できることと、
自社の強みを活用かせることである。外部環境の変化に対して、
この2点に注目すれば、変化への対策が見つかるかもしれない。

3)しかし、消費者ニーズを顧みず、自社の強みばかりに注目しすぎると、
消費者の離反を招く恐れがある。
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7)おすすめ商品・サービス

◎Winecarte 簡単ワインの選び方

最近、ワインを勉強しています。
それをアウトプットする意味でも、
ワインのサイトを始めました。
焦らず少しずつ作成する予定です。
http://wine.ryotarotakao.com/

編集後記
記事によると、アイシスの決済サービスは、
グーグルワレットとほぼ同じ。
(ポイントカードの役割については、言及されていません。)
携帯を使った決済は、おサイフケータイとして日本ではおなじみ。
ただ、消費者属性や買い物履歴に応じたクーポン発行や
ポイント付与のサービスは、まだそれほど普及していません。
携帯でこれらのサービスが提供されれば、
太った財布がダイエットできそうです。
特に、ポイントカードはなんとかして欲しいです。

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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!

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