ダイエーの値下げ状況から見えるスーパー・メーカーのホンネとは?

値下げされたプライスカードBy suanie

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11月6日の日経新聞朝刊に、食品スーパーの定番品値下げに関する記事が掲載されていました。(日経新聞電子版申し込みはこちら

 

大手スーパーが値下げ攻勢をかけている。夏場から低迷する消費を喚起する狙いで、値下げ対象は食品や 日用品など1000品目以上におよぶ。ただ今のところ売り上げを回復させるまでには至らないケースが多い。消費増税を控えて顧客の財布のひもが固くなって いるのか、それとも値下げそのものがインパクトを欠くのか――。(2012年11月6日日経新聞朝刊より)

 

日経新聞によると、次の法則によって定番品の値下げが行われているとのことです。

 

【日経新聞の論じるスーパーの定番値下げの法則】

トップブランド商品よりも二番手以下のメーカー商品が大幅値下げ対象になりやすい。

 

トップブランド商品も値下げ対象になるようですが、その値下げ率が低いとのこと。この要因として、

 

【日経新聞の考えるトップブランド商品が値下げされない理由】

消費者が定番品への回帰を強めているため。

 

を挙げています。要は、消費者のトップブランド志向が強まったので、値下げをしなくても売れるとスーパー・メーカーが考えたので、値下げを見送ったというわけです。

 

しかし、実際にダイエーの定番値引き状況・特売状況を見たところ、日経新聞の記事とは違うように感じました。

 

ダイエーの定番品値下げ状況をまとめると、以下の通りになります。

 

【個人的にまとめたダイエーの定番品値下げ状況】

[1]大容量タイプが値下げ対象になる一方で、小容量タイプは価格据え置き。

[2]トップブランド品が値下げ対象になっているカテゴリーが多い。

[3競争の激しいカテゴリーは、各メーカーが万遍無く値下げを受け入れている。

[4]利幅が薄いカテゴリーは値下げを行わず。

 

1について顕著に見られたのは、日本酒と牛乳です。日本酒は二リットルのペットボトルタイプで、値下げ対象になっている商品が多い一方、720mlや360mlではほとんどの商品が値下げされていませんでした。牛乳では、明治のおいしい牛乳1リットルが値下げされている一方で、同ブランド500mlは据え置きされていました。このような措置を取るのは、

 

価格弾力性の高い大容量タイプを値下げすることで、売上を拡大し、指名買いの多い小容量タイプは据え置きすることで、利益率を少しでも向上させるため

 

ではないでしょうか。

 

2については、日経新聞の考察とは異なります。例えば、飲料カテゴリーではコカ・コーラ2リットル、乳製品カテゴリーでは明治ブルガリアヨーグルトプレーン450gが、値下げされていました。いずれもトップブランドです。ただ、日経新聞の言うように、値下げ率は小さいものでした。

 

3に関して、競争の激しいカテゴリーは、コーヒーやおかきなど。二番手以下のメーカー商品に値下げが集中しているわけではなく、すべてのメーカーが万遍無く値下げを実施していました。

 

4の好例は、ビール系飲料。ビール・発泡酒・第三のビールで、値下げされている商品はゼロ。もともと利幅が薄いからでしょう。

 

ダイエーの特売状況(定番品値下げではなく期間限定の値下げ)を見ると、トップブランド商品の違った側面がわかります。それは、

 

【ダイエーの特売状況からわかったこと】

トップブランド商品の特売価格が大きく下落している

 

ということです。例えば、味の素の冷凍ギョーザや明治ブルガリアヨーグルト450gなど。トップブランド商品がこのような販促を行う要因は、

 

【トップブランド商品の特売価格が大きく下落している要因】

[5]定番値下げよりも、効果が高いから。

[6]スーパーに協力することで、売場を確保するため。

 

ではないでしょうか。

 

5については、定番で少し値下げするよりも、期間限定で大きく値下げした方が、販売量が大きいと判断したのでしょう。典型例は、味の素の冷凍ギョーザ。明治ブルガリアヨーグルト450gは、ダイエーで定番価格が下げられていますが、恐らくこれは、競合店の価格に合わせる、または競合商品との価格差を縮めるという意味合いが強いかと、思います。販売数量は、期間限定の大幅値下げで稼ごうとしているのではないでしょうか。

 

6については、ずばりプライベートブランド(PB)商品からの防御です。利益率の高く、在庫リスクを抱えるPB商品の販売に力を入れるために、売場面積を増やしているのが実情です。この煽りを受けているのが、これまで売り場面積の大きかったトップブランド商品。PB商品の販売強化によって、トップブランド商品の売り場面積は削られるのですが、これを幾分回避するために、大きく値下げした特売にメーカーが協力しているのではないでしょうか。もちろん、二番手以下のメーカー商品の特売が増えていることも、売場確保の意味合いが強いかと思います。

 

これらをまとめると、次のようになるかと思います。

 

【定番値下げに関するスーパー・メーカーのホンネ】

◯スーパー→定番品(特にトップブランド)を値下げすることで集客力を高めて、利幅の大きなPB商品の販売を強化したい。

◯メーカー→定番値下げや特売に協力することで売場(≒売上)を確保する一方で、指名買いされる商品を増やすことで利益率を高めたい。

 

 

☆今日のまとめ☆

トップブランド商品も定番値下げ対象になっているが、どちらかというと大きな値下げを伴う特売によって、販売数量の最大化を目指している。

期間限定の方が、消費者への訴求力が高いためか。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

値下げされるのは消費者としてうれしいですが、社会全体としては恐ろしいことかもしれません。

それは、値下げを待って、商品が売れなるからです。

 

☆アニキ金本知憲の言葉☆

「ただ、そのコンプレックスが反骨心となって私を支えたのは事実である。『エリートに負けてたまるか』」(『覚悟のすすめ』より)

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