吉野家の「牛丼の具」直販開始、本当の狙いとは?

yoshinoya

 By zephythor

先日の日経新聞に、吉野家のネット通販に関する記事が掲載されていました。

 

吉野家は「冷凍牛丼の具」などのインターネット直販を始めた。外部業者に委託している従来のサイトと別に、公式サイトを開設。地方の過疎地などに住み、日常的に吉野家に来られない人らに店の味を提供し、ファンを増やす。(2012年12月26日 日経新聞朝刊より

 

公式サイトを見ると、牛丼の具を冷凍した商品で、特に新しい商品ではありません。私が毎週欠かせないサンテレビの「阪神タイガース党」で、CMとして毎回流れていることが、記憶に新しいところ。確か、高校生の頃に、親が購入していた冷凍牛丼の具を食べた記憶があります。

 

外部業者に委託していた時も、この商品の一番の特徴は、吉野家ブランドで売っていた点。だから、「今さら直販サイトとは、少し遅いのでは?」と感じるほどです。直販が遅れた理由は、恐らく次のような理由によるものからでしょう。

 

【吉野家が自社ブランドの冷凍牛丼の具の直販をこれまで行わなかった理由】

実店舗とカニバリを引き起こす可能性があるから

 

あくまで推測に過ぎませんが、多分当たっているかと思います。その根拠は、冷凍牛丼の価格にあります。実店舗の牛丼と冷凍牛丼の具の価格を比較すると、以下のようになります。

 

【吉野家の牛丼と冷凍牛丼の具の価格比較】

吉野家の牛丼(並盛)→380円

吉野家の冷凍牛丼の具(5食セット)→364円

 

その価格差は、16円。実店舗にはご飯が付いていて、冷凍牛丼の具には付いていないことを考えると、実店舗の割安感が強くなります。さらに、実店舗では、調理作業・後片付け作業もお店側がやってくれるので、実店舗に軍配が上がるのはほぼ間違いないでしょう。冷凍するコストがかかるとはいえ、大量生産できるのが冷凍食品・加工食品の一番の強み。なのに、ほぼ同じ価格にしたのは、実店舗の利用者が冷凍牛丼の具を購入してしまい、実店舗の売上に悪影響が出ることを恐れたからだと思います。

 

そんなリスキーな冷凍牛丼の具の直販を、今始めたのはなぜか?それは、

 

【吉野家が冷凍牛丼の具の直販を今始めた理由】

[1]    コンビニなどの中食や内食に顧客が奪われているから

[2]    冷凍牛丼の具の販売が実店舗売上にさほど悪影響を及ぼさないから

 

ではないでしょうか。

 

1については、コンビニに奪われた顧客を取り戻すためです。吉野家の大部分の店舗は、24時間営業とは言え、コンビニほど多くはありません。よって、自宅で吉野家を食べたくなっても、遠い実店舗に足を運ぶのが面倒に感じる可能性は高いかと思います。そんな潜在的な吉野家ユーザーが、近くのコンビニに奪われているのです。吉野家に行く代わりに、コンビニのお弁当や牛丼の素を買うのでしょう。そこで、冷凍牛丼の具を直販することにより、自宅の冷凍庫に常備してもらえれば、コンビニにその売り上げを奪われることはありません。

 

2について、外部業者による販売が増えても、実店舗売上に悪影響を及ぼさないことが証明されていれば、今さらカニバリを恐れる必要はありません。ネットで調べると、アマゾンヤフーぐるなび通販で販売されています。テレビ通販のように限定販売ではなく、常に販売している中で、実店舗売上に影響を及ぼしていないならば、直販することでさらに売上を伸ばすことができます。うまく行けば、これまで外食サービスでほぼすべての売上を稼いでいた吉野家に、新たな収益の柱が生まれることになります。

 

さらに、突っ込んで考えれば、次のような理由も考えられます。

 

【吉野家が冷凍牛丼の具の直販を始めた理由】

[3]    実店舗に来店するのをためらう女性の潜在需要を掘り起こすため

 

これ、結構あるんじゃないでしょうか。吉野家に行きたくても、なかなか実店舗に入りづらい人はいるかと思います。主に女性ですが、例えば小さな子供連れの家族にも、この潜在需要はあるかもしれません。家族で吉野家、特に小さな子供と一緒にというのは、なかなか入りづらいもの。この潜在需要を開拓できれば、牛丼市場全体を拡大することができます。

 

さらに、記事には次のような解説があります。

 

直販サイトでは利用客の性別や年齢、住所、商品購入数などのデータを今後の商品開発や出店などに生かす。

 

直販サイトで女性ユーザーが多いことがわかれば、女性が入りやすいカフェ風の牛丼店が開発されるかもしれません。家族客が多ければ、ファレミス風の店舗が開発されることになるでしょう。もしかしたら、ファミレスのロイヤルに吉野家ブランドの牛丼をメニュー提案するかもしれません。いずれにせよ、吉野家の売上拡大につながります。

 

飲食店が、実店舗でのサービスからモノに広がるのは、珍しいことではありません。スタバは、そのブランド商品がすでにスーパーに並んでいるほど。ただ、その前提にあるのは、飲食店ブランドの確立。ブランドさえ確立できれば、実店舗を離れたモノに進化することができるのです。

 

☆  今日のまとめ☆

吉野家が吉野家牛丼の具を直販するのは、中食・内食に奪われた顧客を奪還するため、カニバリの恐れが無いと判断したためだろう。

さらに、実店舗に入りづらい女性などの潜在需要を獲得することも可能となり、将来の新型店舗の開発につなげることができる。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

吉野家の印象は、お店が暗いこと。

これでお客さんをだいぶ失っている気がします。

 

☆サイゼリア創業者 正垣泰彦の言葉☆

「商品を頼むかどうか迷うのは、お客様自身が気づいているかどうかはともかく、無意識のうちに値段が高いと感じているからだ。」

『おいしいから売れるのではない 売れているから美味しい料理だ』より)

※創業者・経営者・商売人の心に残る言葉、元気になる言葉を紹介しています。

 

 

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