セブンゴールド・金の食パンとタカキベーカリー・イギリスパンの大きな違いとは?
先に申し上げておきたいと思いますが、この記事は、金の食パンとイギリスパンの味の比較ではありません。あくまで、マーケティングの見地からの比較になります。
セブン&アイ・ホールディングスの高級PB・セブンゴールドから発売された、金の食パンの売れ行きがいいようです。
セブン&アイ・ホールディングスが高品質のプライベートブランド(PB=自主企画)「セブンゴールド」から売り出した「金の食パン」が販売好調だ。4月16日の発売から同30日までの15日間の販売量は65万個と計画を約5割上回った。食パンとしては割高だが、味と品質にこだわりを持つ消費者に受けている。(2013年5月10日付 日経MJ)
金の食パンについては、以前に取り上げました。その時は、食パンに潜む消費者の不満と金の食パンの関係について、述べました。それなりに売れるとは思っていたのですが、ここまで売れるとは想定外。計画の5割増しとは、セブン側も驚いたことでしょう。食パンは安さばかり求められているように思われますが、そうではなかったことが証明されたことになります。
金の食パンの味についての記事も、発見しました。
「ニュースで見て食べたいと思ってた。甘みが強くて風味豊か」(39歳の女性会社員)。「生地が詰まっている感じ」(22歳の女子学生)。最も高い評価を得たのは、セブン&アイが4月に発売した「金の食パン」だ。74%の消費者が、ロングセラー「超熟」より「おいしい」と答えた。(2013年5月31日付 日経MJ)
金の食パンは、商品開発で定評のあるセブンが開発しただけあって、味についての評価もいいようです。
ただ、ここで疑問が生じるのです。その疑問とは、
すべての食パンが安さを追求したものではない。
なのに、金の食パンがここまで売れるのはなぜか?
というもの。スーパーで販売されているパンで、価格よりも品質を追求しているものとして、タカキベーカリーのパンがあります。今では、全国チェーンのスーパーのほとんどの店舗で、取り扱っていると思われます。それだけ売れているという証拠ですが、価格を見ると、決して安くはありません。例えば、私がよく行くグルメシティ(ダイエー系のスーパー)では、以下のような価格で販売されています。
【タカキベーカリーの高単価食パン】
ヤマザキやフジパンなどの大手メーカーの食パンの多くが150円前後なので、かなり割高なことがわかります。割高なだけあって、原材料にこだわり、味も格別です。だから、売れているのでしょう。
ちょうど金の食パンと競合するのは、イギリスパンになるでしょうか。味にこだわった金の食パンがこれだけヒットしたのだから、イギリスパンもそれなりに売れてもいいもの。しかし、店頭に並ぶ数は、多くて5個ほど。5個しか並べないということは、それだけ回転しない商品ということを物語っています。
両者の食パンに生まれる売れ行きの違いは、店内での露出ではないでしょうか。つまり、金の食パンはパン売り場でより目立つ場所に大量に陳列されているのに対し、タカキベーカリーのイギリスパンはタカキベーカリーのコーナーでひっそり並ぶだけ。この違いが、消費者の目に留まるかどうかを決め、売れ行きに違いをもたらしているのだと思います。イトーヨーカドーの店舗は知りませんが、セブン-イレブンの店舗では、金の食パンは食パン売場の一角を占めており、パンの中で一番目立つ存在なのは事実。この目立つことによって、消費者の目に留まるようになり、思わず手を伸ばしてカゴに入れてしまうのでしょう。
もちろん、品質(より万人受けするか)・価格(よりコスパが高いか)・マスコミでの露出も、金の食パンの売れ行き好調に大きく寄与しているのも、間違いないでしょう。しかし、それ以上に、店舗での露出の大きさが、タカキベーカリーだけでなくその他大手パンメーカーの商品との大きな違いではないでしょうか。露出の違いこそが、売れ行きに大きな差をもたらしていることでしょう。だからこそ、大手ビールメーカーが、店内で大きく露出できる売場確保のために、コンビニ専用商品を発売するのだと思います。
☆今日のまとめ☆
セブンゴールドの金の食パンの売れ行きが好調なのは、他メーカー品よりも店舗での露出が大きいからではないか。
マーケティング・ビジネスのヒントに関するブログも書いています
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
金の食パン、一度食べてみたいのですが、セブン-イレブンで売っているのは5枚切り。
6枚切りは、関西のセブン-イレブンにまだ上陸していないようです。