5月スーパー売上からわかる、売れている食料品とは?
前回、5月スーパー売上がさほど悪くない、いやいや良くなっている点について述べました。新聞やテレビだけを見ていると、悪くなったように感じられますが、実際はそうではないようです。マスコミの解説だけに頼るのではなく、元のデータで確認することがいかに重要かを、再認識しました。そこで今回は、スーパー売上の中の食料品だけを取り上げたいと思います。
5月のスーパー食料品売上を見ると、全体同様、既存店ベースではマイナスですが、全店ベースではプラスになっています。そこで、前回同様に、ここ1年間について、調べました。
【スーパー食料品売上】
[既存店ベース]すべてマイナス
[全店ベース]12月・3月・4月・5月
※2012年6月~2013年5月が対象
食料品の売上は、総じてマイナスで推移していますが、昨年12月から状況が変化したことがわかります。概して、食料品の売上は、人口に比例し平均年齢と反比例するもの。日本で人口減少が起こり、高齢化が進んでいることを考えると、マイナス基調なのは当たり前。スーパーマーケットが珍しい存在ではないことを考えると、新しい店舗ができたからといって、購入品目や金額が増えることはまずないでしょう。ならば、店舗数が増えたところ、既存店の売上を奪うだけだから、市場全体でみるとプラスにはなりません。逆に、人口減少・高齢化の影響が大きく作用することによって、店舗は増えても全体ではマイナスになっているのです。
だからこそ、昨年12月から始まった全店ベースのプラスは、異様に感じます。人口減少・高齢化さえもはねのける、何か大きな要因がありそうです。売上を因数分解すると、客単価と客数にわかれます。客数に関して言えば、人口減少だけでなくコンビニとの競争激化もあるので、客数増はなかなか考えにくいかと思います。よって、客単価が伸びたことが、売上増に大きく寄与しているようです。そこで、昨年12月から食料品の客単価が伸びた要因を、私なりに考えてみました。
【昨年12月から全店ベースで食料品客単価が伸びた要因】
[1] 総菜の売上が伸びた
[2] 冷凍食品の売上が伸びた
日本チェーンストア協会のデータを見ると、食料品は、
農産物
畜産物
水産物
総菜
その他食品
に分かれています。全店ベースでプラスになった月のデータを見れば、どの項目が売れたのかが一目瞭然です。すると、総菜・その他食品の売上と食料品全体の売上に、大きな相関があることがわかります。つまり、総菜やその他商品の売上が、食料品全体の売上を大きく左右するのです。
だから1のように推測したのですが、恐らく、これまで自炊していた人で、総菜を利用するようになった人が増えたのではないでしょうか。その要因は、雇用の改善。正社員の求人はまだ回復していないかもしれないですが、パート・アルバイトは回復どころか、人が足りない状況です。だからこそ、時給も上昇傾向なのですが、この雇用環境の変化により働く人が増えたのではないか、と思うのです。人が働くようになれば、忙しくなるもの。調理する時間がなくて、総菜で済ませても不思議ではなりません。だから、総菜売上が伸び、食料品全体の売上増を引き起こしたのではないでしょうか。
2も同じ理屈です。総菜よりもより割安なのが、冷凍食品。総菜ほど簡便性は高くないですが、スクラッチから調理するよりは簡単。レンジでチンするタイプがほとんどで、ごく少数調理が必要な商品でも、ほんの一手間掛けるだけ。(焼くだけの味の素の冷凍餃子は好例)総菜よりもいいのは、冷凍庫で保管ができること。スーパーでの買い物時間の節約につながります。働き始めた人が、冷凍食品の利用を増やすのは、ごく当然なのです。実際、スーパーの売場を観察すると、冷凍食品が売れている光景をよく目にします。売場に並ぶ数が少ない商品も多く、さらにカゴに入れている人も多いように感じます。
アベノミクスによる資産効果は、スーパーの食料品には及んでいないようですが、雇用環境の好転は、総菜や冷凍食品の売上増という形で、表れているように思えます。
☆今日のまとめ☆
スーパーの食料品売上増に寄与しているのは、総菜とその他商品。
総菜と冷凍食品が売れているから、食料品全体の売上が増えているのではないか。
雇用環境の好転が、忙しい人の増加につながり、簡便性・利便性の高い総菜や冷凍食品の売上増をもたらしている、と考えられる。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
冷凍食品の売上増は、価格の低下も影響しているでしょう。
実際、特売日には売り切れる商品も続出しています。
冷凍パスタ、売れてますよ。