客単価下落に悩むスーパー、その理由とは?
前回、アベノミクス真っ最中の食品値上げは、客単価アップの絶好の機会であると、述べました。とはいいつつ、スーパーの特徴が割安感である以上、低価格志向の強い小売業態であるのは間違いないと思います。元々、これまで定価で販売していた総合食料品店のアンチテーゼとして、スーパーは登場したからです。
消費者のそういう認識があるのは事実ですが、スーパー自身がその認識に甘んじているのも事実でしょう。それは売場に行けばわかります。メーカーが作ったPOPはよく目につくものの、スーパー独自の視点で作ったPOPは本当に少ないからです。だから、結局一番わかりやすい数字=価格で、その価値を伝えようとしてしまうのです。その結果起こるのが、価格競争であり、商品値下げではないでしょうか。
ならば、どうすればいいのか?そのヒントは、百貨店などのアパレル店にあります。アパレル店の店員が行うのは、
[1]来店客のニーズを汲み取ること
[2]そのニーズに合った商品を提案すること
に他なりません。その提案商品に満足すれば、販売に成功します。この2つの機能をスーパーに持ち込むとすると、次のようになります。
【スーパーが行うべきアパレル的売り方】
[1] 顧客層にあった商品を並べる
[2] その商品同士の違いを明確に伝える
セルフサービスがスーパーの前提条件なので、アパレル店のようなウェットな接客はできません。その一方で、POSデータやポイントカードによる購買データにより、その店舗のユーザーが、どのようなニーズを持っているのかは、推測できるかと思います。その推測したニーズを元に、商品を並べるのです。これが1になります。
ここまでは、今のスーパーでも大抵できていることでしょう。でも、今は単に並べるだけ。この並べた商品から、どれを選ぶべきかを明確に伝えるお店は皆無ではないでしょうか。だからこそ、ユーザーはその売場で迷い、結局一番わかりやすい数字=価格で選ぶのです。その結果、客単価はなかなか上がらずに、売上も伸び悩むことになります。
そこで、並べた商品同士の違いを明確にすれば、ユーザーは選びやすくなり、価格以外の理由で選んでもらえるのではないでしょうか。例えば、ワイン売場の場合、
渋めの赤が好きな方→A 780円
渋めが好きでより濃厚な赤が好きな方→B 980円
と提示すれば、濃厚さという付加価値に200円を支払いやすくなります。ちなみに、今のワイン売場の多くは、商品説明を付けるものの、AとBの違いを明確に伝えていません。だから、選ぶのが大変になり、結局一番わかり易い数字=価格で判断されるのではないでしょうか。
スーパーの役割の一つが、星の数ほどある食料品の中から選ぶキュレーションとするならば、この売り方はかなり正統な販売方法。さらに、その価値をうまく伝えることができれば、この販売方法を通じて、客単価を引き上げることもできるかと思います。
☆今日のまとめ☆
スーパーの客単価がなかなか上がらないのは、価格以外の違いを明確に伝えることができていないのではないか。
販売商品同士の違いを伝えることができれば、その価値の違いだけ高い価格も受け入れられやすくなり、客単価の上昇につながる。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
ワイン売場にいる人は、大抵迷っている人です。
迷っているということは、商品の違いが伝わっていない証拠ですね。