「クルマは家電量販店で買え!」から学んだ、取引コストの重要性

マイアミの中古車センターby courtesy of Ryan

 

2008年出版の本で今さらになりますが、吉本佳生さんの「クルマは家電量販店で買え!」を読みました。このような挑発的なタイトルの本は、部数拡大を狙った薄っぺらい内容のものが多いので、あまり読まないのですが、今回はそれなりに勉強になりました。「それなりに」と表現したのは、経済学の知識として知っている内容も多かったからです。ただ、全く新しい視点・考え方を発見できたことは、大きな収穫でした。

 

この書籍での一番の収穫は、

 

取引コストこそが価格設定を有利にさせる

 

ということです。取引コストの高い商品を選べば、高い値付けが可能になるのです。というのは、取引コストが高いために、価格比較・商品比較がしにくくなるからに他なりません。ちなみに、取引コストとは、

 

「取引コスト=商品やサービスの取引(売買)の際に、価格以外にかかるコスト」

 

です。例えば、買うのにかかる「時間」や、持ち運ぶのにかかる「労力」、価格などの情報を調べるのにかかる手間(時間+労力)など。消費者は、普段の購買活動で「価格+取引コスト」をできるだけ安くするように行動しているのです。

 

もし、取引コストがゼロになれば、完全な価格競争に陥り、理論上価格は調達コストまで引き下がり、利益はゼロになります。だからこそ、取引コストが重要なのです。

 

一番わかり易い例は、ネット通販だと思います。ネット通販での取引コストは、その大部分がクリックという手間だけなので、かなり小さなものになります。だからこそ、実店舗での販売よりも価格競争に陥りやすくなり、利益を出しづらいのです。利益率が低下しやすいので、利益額を最大化するためには量を販売しなければなりません。だから、集客力の大きな楽天市場へ出店する企業が多いのでしょう。

 

スーパー業界の価格競争が激しいのも、取引コストの低さが一因です。つまり、

 

近くに複数の店舗があるため、店舗を行き来する手間が小さい

 

ことにより、取引コストが小さくなるからです。だからこそ、コストは掛かるものの、取引コストの高い

 

買い物難民への販売

 

を考える企業が存在するのでしょう。買い物難民とは、近くにスーパーがないために、買い物に苦労する消費者のこと。移動販売というコストの掛かる販売形態を採ったとしても、買い物難民の取引コストはとてつもなく大きいので、価格競争は起こりにくく、高い利益率を享受できるのです。

 

生ビールの価格が下落したのも、取引コストの低さが要因です。生ビールを飲めるのは、居酒屋だけではありません。今では、中華料理店や定食屋でも飲むことができます。さらに、ファストフードチェーンやカフェチェーンでも、生ビールを提供している店舗があるほどです。この結果、消費者にとって、生ビールの取引コストは著しく低下しました。だからこそ、380円でも驚かないほど、生ビールの価格は下落したのだと思います。

 

このように考えると、価格競争や値崩れを避けるためには、いかに取引コストの高い人に販売するかが鍵になります。逆に言えば、取引コストが高くなる商材を売ればいいのです。

 

☆今日のまとめ☆

取引コストが低いから、価格競争が起こりやすくなるのだろう。

よって、価格競争や値崩れを避けるには、取引コストの高い人をターゲットにすればいい。

逆に言えば、取引コストが高くなる商材を扱えばいい。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

取引コストを考えれば、ネットは価格下落に大きく貢献(?)したことになります。

価格コムはその際たるもの。

消費者にとっては嬉しいですが、メーカーや売る方は大変です。

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