マクドナルドの立地別価格導入は、時代に逆行か?それとも先取りか?

マクドナルドの店舗

by courtesy of Jan

 

前回はマクドナルドの価格改定について取り上げましたが、今回はマクドナルドの施策について、真正面から分析したいと思います。

 

日経の記事では、マクドナルドの立地別価格導入は、需要に応じたプライシングという意味で、他の外食店にも広がる可能性があると、述べられています。

 

外食業界ではハンバーガーや牛丼など低価格のファストフードが苦戦している。マクドナルドは価格のわかりやすさよりも、立地する地域の事情に応じて最大限、需要を取り込める価格体系に転換。外食店は立地に応じてコストも大きく異なるだけに、追随する企業が広がる可能性もある。(2013年9月10日付 日経新聞朝刊)

 

確かに、経済学の理論では、需要が供給よりも大きくなると価格は上がります。さらに、需要の大きい立地の価格を引き上げることは、高いコストを賄うという意味合いもあります。店舗ビジネスの場合、需要の高い立地というのは、大きな集客数が見込める場所のことであり、その分だけ家賃が高くなります。さらに、多くの店舗が集積するので、アルバイトなどの人材募集コストも、より高くなります。需要の大きい場所で商売をするということは、それだけ高いコストが掛かることであり、その分価格に転嫁しようというのが、マクドナルドの考え方です。極めてシンプルですが、立地別価格体系を導入している外食チェーンは、ほとんどありません。もし、この施策が成功すれば、他の外食チェーンも追随することでしょう。そう考えれば、マクドナルドの施策は先取りとも思われます。

 

ただし、需要の大きい場所における出店や価格設定の歴史を見ると、そう単純ではありません。というのも、もともと需要の大きい場所では、価格は高めに設定されていたからです。例えば、昔のスキー場では、カレー一皿が1000円近くもしていました。カレーだけでなく、ランチメニューから飲み物まで、スキー場では高かったものです。その理由は、高くても売れるから。つまり、それだけ需要が大きかったからです。ホテルでも然り、空港でもそうでした。

 

しかし、今ではそれほど高くなくなりました。例えば、空港や駅。昔は、弁当(駅弁など)一つ食べるのでも、1000円近く掛かりました。しかし今では、コンビニ弁当を買えば、500円ほどで済ませることができます。ホテルの飲み物もそう。昔は、客室で喉が乾けば、客室の冷蔵庫に入っているコーラに、400円出す必要がありました。館内に自販機がある場合も、最低でも200円はしたかと思います。しかし今では、大抵のホテルの近くにはコンビニがあるし、館内の自販機も街中の自販機価格とほぼ同じです。つまり、

 

需要の大きな場所の価格が、通常の場所の価格に近づいてきた

 

という歴史があるのです。

 

さらに、小売チェーンや外食チェーンが、需要の大きな場所に出店してきたことも、需要の大きい場所の価格下落に拍車を掛けています。例えば、関西国際空港には、ローソンがあるので、食事を安く済ませようと思えば、ローソンでおにぎりを買えばいいのです。以前では、このような選択肢はありませんでした。

 

また、需要の大きな場所のチェーン店には、安心を提供できるというメリットがあります。この安心というのは、「このチェーンに行けば、これぐらいの価格でこのぐらいのモノを食べる(買う)ことができる」というもの。チェーン店を利用すれば、外れはないのです。特に、よく知らない場所では、この効用はかなり大きいのではないでしょうか。

 

このような歴史・効用を考えると、マクドナルドの立地別価格導入は、時代に逆行しているとも捉えることができます。需要の大きい場所で高く売るというマクドナルドのやり方は、昔懐かしい価格設定に他なりません。さらに、立地によって値段が違えば、マクドナルドを安心して利用できないことになります。このデメリットは、どうしても免れないでしょう。

 

時代の先取りなのか、それとも時代に逆行なのか。マクドナルドが導入したことを考えると、時代の先取りと判断したのでしょう。実際、テスト店舗に導入したところ、販売数量にさほど大きな違いは見られなかったようです。しかし、これが需要の大きなすべての店舗で成功するとは限りません。

 

☆今日のまとめ☆

全国一律価格のチェーン店がほとんどの中、需要の大小によって価格を変えるマクドナルドの価格設定は、時代の先取りとも言える。

しかし、需要の大きな場所の歴史を見れば、チェーン店の出店などによって価格が下がっているのは確か。

歴史から見れば、時代に逆行とも捉えることができる。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

コンビニでイートインスペースを持つ店舗が増えてきたことを考えると、ファストフード店とコンビニとのガチンコ勝負が近頃起こりそうな予感です。

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