セブン&アイがPBのご当地品販売強化に動く理由とは?
by courtesy of n_waka
セブン&アイのPBセブンプレミアムに、ご当地商品が登場するようです。
セブン&アイ・ホールディングスはプライベートブランド(PB=自主企画)「セブンプレミアム」で、地域限定販売の商品を増やす。地元メーカーと組んで、各地の特産品や郷土料理などを生かした商品を開発する。地域ごとになじみのある食品などをそろえることで、PBの知名度や商品のバラエティー性を高め、販売を伸ばしたい考えだ。(2014年2月5日付 日経MJ)
PBと言えば、製造工場の閑散期に大量製造してもらうことで、通常品質でありながら製造コストを押さえた低価格品というイメージがあります。そのイメージを覆したのが、セブン&アイの金の食パン。高品質のPB商品が売れるということを実証しました。その次にセブン&アイがPBで行うのが、地域限定商品です。
販売地域を限定すれば、販売数量が限られるため、他のセブンプレミアム商品に比べて大量生産できません。その結果、低価格を可能にするPBの設計図が成り立たなくなります。高品質PBのセブンゴールドも、全国展開するセブン-イレブンの店舗網で販売することにより、大量販売・大量生産が可能になり、利益率の高い商品になりました。地域限定商品では、販売店に制限が加わるため、大量販売できず、大量販売・コスト削減というPBの屋台骨が無くなることになります。
そこで、PBのセオリーに反してまでセブン&アイが地域限定PB商品を販売する理由について、考えてみました。
【セブン&アイが大量販売できない地域限定PB商品を販売する理由】
[1] 地域食材のブランド力が落ちているから
[2] 消費者がPB慣れして、他チェーンのPB商品と差別化する必要があるから
[3] 土産物というニーズを拾えるから
[4] 地方食品メーカーの製造余力が高まっているから
1について、食は地域性の強いもの。ならば、全国共通のPB商品では拾えないニーズが必ず出てきます。従来それを拾ってきたのが地域の食品ですが、その商品のブランド力が落ちている可能性があります。つまり、多くの消費者が、他に選択肢がないからその商品を選んでいるだけという状態になっているかもしれません。全国ブランドのセブンプレミアムにとって、強いブランドのない領域は、成功確率の高い新市場となります。ご当地PB商品を販売するのは、この美味しい市場を狙うためではないでしょうか。
2について、食品のPBと言えば、セブンプレミアムとトップバリュが双璧ですが、他のスーパー・コンビニチェーンも各々のPBを持っています。ここまでPBの露出が高まると、消費者に飽きが来ても不思議ではなりません。特に、毎日のようにCMを打つセブンプレミアムは、飽きやすい可能性は極めて高いのではないでしょうか。そこで、セブン&アイは、セブンプレミアムというブランドに新鮮さを吹き込むために、他のPBがしないご当地商品の開発を行ったと考えられます。差別化することで、消費者の興味を惹き、ご当地品以外の販売増にもつなげようという戦略です。
3は可能性としては小さいですが、全国のセブン-イレブンでご当地PB商品が販売されていることが消費者に認知されれば、旅行の際に人気のあるご当地PB商品の購入を友人から頼まれるかもしれません。これはお土産に他なりません。国内旅行人気が今後も続くと考えれば、拡大が期待できるお土産需要に、セブン&アイが興味を示しても不思議ではありません。また、ご当地PB商品目当ての来客が期待でき、全国チェーンのセブン-イレブンが取り逃していた旅行先での飲食ニーズを獲得することもできます。
4について、人口の減少は胃袋の減少につながり、食全体の消費量を減少させます。一方で、食品工場が人口ほど減っていなければ、稼働率の低い食品工場が増えることになります。特に、寡占化の進む食品業界で、製造余力を持て余す地方の独立系食品工場が増えていても、不思議ではありません。この外部環境の変化にセブン&アイが着目すれば、地域限定商品でも、低コストで製造できることになり、他のセブンプレミアム商品と同等の高い利益率を確保できます。
記事を読むと、セブンの地域限定PB商品は、すでに15品あるようです。この売れ行きの良さにより、ご当地品のPBニーズがあることを証明したことになります。セブンプレミアムの成功により、他チェーンも真似しそうですが、PBの醍醐味であるコストの低さが毀損されかねないので、なかなか真似できないのも現実ではないでしょうか。ストーリーとしての競争戦略風に言えば、セブンのご当地PB商品はキラーパスになります。
☆今日のまとめ☆
セブンが販売を強化するご当地PB商品は、販売地域が限定されるため、PBの強みであるコストの低さが毀損される恐れがある。
それでもセブンがご当地PB商品に力を入れるのは、セブンプレミアムの差別化になるだけでなく、地域食材や土産物という新市場を開拓できるからである。
また、地方の食品工場の製造余力が高まっているからかもしれない。
PBの利益率が下がる恐れがあるので、他チェーンもなかなか真似できないだろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
消費が多様化し、大量生産・大量販売の領域がどんどん狭まっているとも考えることができます。