トリドールの業績悪化は、ファストフードの典型かもしれない。

丸亀製麺の美味しそうなうどんby courtesy of Takayuki Shimizu

1月末にトリドールの四半期決算(PDF)が発表されました。内容は増収減益。店舗数で増収は確保するものの、既存店が振るわず利益が減少したというパターンです。ファストフードチェーンの典型と言っても過言ではありません。

もう少し詳しく説明すると、以下のようになります。

【トリドールの増収減益要因】

[増収要因]既存店の売上減以上に店舗増で売上を稼いだから

[減益要因]原材料コスト増は新メニューや経費削減で克服できたものの、人件費増があまりにも大きかったから

増収だからと言って喜べないのが、トリドールです。既存店売上の回復が見えないからです。月次実績を見ると、11月に少し改善したものの、12月はまたガクンと落ちました。10月以前に逆戻りという感じでしょうか。既存店売上減少の要因は、客数減。昨年まで苦しめられていた客単価の下落は、アベノミクス効果でしょうか、増に転じています。昨年4月からは9ヶ月連続のプラスです。一方の客数がさっぱりで、プラスに転じた月はありません。12月はさらにひどく、2012年10月以来のワーストです。

ここまで客数が減少した要因として考えられるのは、商品値上げですが、トリドールの新着情報を見ても、12月の値上げを示すリリースはありません。値上げ以外でここまで客数が減少したということは、それだけ支持を失っている証拠。トリドールの客数減は、日本マクドナルド並みとも言えます。ちなみに、日本マクドナルドの12月客数は、昨対比90%を下回っており、トリドールよりも深刻です。

減益要因として考えられるのは、コスト増。そこで損益計算書を調べてみたところ、原価率(=原価/売上)は、昨年同期よりも改善しています。円安による原材料コストの上昇傾向を考えると、うまく経費削減を行ったことがわかります。客単価が上昇していることから、より利益率の高い新メニューがよく売れたことが推測できます。

ただし、飲食店のもう一つの主要コストである人件費は、大きく上昇しています。こちらは、販管費を見ればわかるのですが、販管費率は65.1%から69.1%と大きく悪化。マンパワーのコストアップが相当大きかったことがわかります。また、大幅出店を続けているので、それだけスタッフの数も必要となるので、人件費が増幅します。これで既存店売上が増加していれば、販管費率もさほど大きな上昇をしなくて済むのですが、既存店売上が悪化しているので、分母の売上が人件費ほど増えず、人件費を含む販管費率は上昇します。つまり、アルバイト時給の上昇と既存店売上の悪化が、販管費の大幅増を招いていることになります。

ここまで見てくると、これがファストフードチェーンの典型のように思えてきます。つまり、単価の高い新メニュー導入で客単価引き上げに成功しているものの、客離れに直面。その結果、既存店売上が悪化。これにアルバイト時給の上昇が追い打ちを掛け、販管費が大幅上昇し、営業利益が大きく減少するというパターンです。

この状態を脱却するには、まずは客数を増やす必要があります。その典型的な方法は、利用機会を増やすこと。だから、多くのチェーンがこぞってコーヒーを導入し、カフェ需要を取り込もうとしているのです。トリドールは、丸亀製麺以外の焼そばや天ぷらの専門店を増やしていますが、これでは既存店の客数増にはつながりません。ロードサイド店が主体なので、ファミレスやコンビニに顧客が奪われていることが想像できます。ファミレスのようなゆったりな雰囲気があれば、ファミレスに対抗でき、コンビニと差別化できるかもしれません。おばちゃんというコミュニケーションが得意な人材が豊富なチェーンなので、効率よりも交流戦略を一部導入すれば、コミュニケーションに飢えたシニア層を開拓できる可能性はあります。

アルバイト時給の上昇は、料理やサービスの品質を落とさない程度に、自動化を進める必要があります。交流と自動化は相反するように見えますが、バックヤードの作業を自動化し、スタッフを接客に専念させるようにすれば、不可能ではないでしょう。

トリドールの大部分の店舗は丸亀製麺ですが、恐らく他のファストフードチェーン同様、ランチには混み合いますが、ディナーは今ひとつの集客なのかもしれません。ディナー需要開拓のために、揚げ物などのうどんの具材をつまみに、酒を売るのもいいかもしれません。ビールもいいですが、ここは思い切って日本酒を積極的に売れば、ビール販促を強める他の飲食チェーンと差別化できるかもしれません。また、日本酒は容器に入れるだけであり、コストもビールほど掛かりません。

 

☆今日のまとめ☆

トリドールが直面するのは、客数の減少とアルバイト時給の上昇による、増収減益。

ファストフードチェーンの典型とも言えるだろう。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

もちろん、これは多店舗展開する大企業のやることであり、中小企業はこのような真似はしない方が無難。

ガチンコ勝負しても、勝ち目ないですから。

 

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