吉野家のマウスパッド?

 Zengame

吉野家の既存店売上高が前年を大きく上回り、牛丼大手チェーンで一人勝ちだったようです。

 

吉野家ホールディングスが展開する牛丼店「吉野家」の5月の既存店売上高は前年同月比約15%増となったようだ。前年を上回るのは2カ月連続。4月中旬に牛丼並盛りを380円から280円に値下げした効果で客数が約3割伸びた。競合チェーンは顧客を奪われており、対抗する販売促進策を迫られそうだ。(2013年6月5日付 日経新聞朝刊)

 

既存店売上高・客数・客単価を比較すると、以下のようになります。

 

【牛丼大手3チェーンの5月既存店実績】

【吉野家】売上高+15%・客数+30%・客単価-10%以上

【すき家】売上高-8.8%・客数-8.6%・客単価-0.2%

【松屋】売上高-8.1%・客数-11.6%・客単価+4%

 

単純に割合を合計しても意味がないようですが、吉野家はすき家と松屋の顧客を奪ったようです。一番打撃を受けたのは、すき家。客数・客単価とも下落しているので、これまで高単価商品を注文してくれていた優良顧客が、吉野家に奪われた可能性があります。一方、松屋は、客単価が上昇しているので、優良顧客はがっちり囲い込んでいるようです。

 

客数の大幅増による既存店売上高の好転を成功させた吉野家ですが、安部会長によると、今のところ、計画通りに事が進んでいるようです。以前に、値下げにより既存店売上高がV字回復できた理由については、述べました。

 

値下げをした吉野家が既存店売上を大きくV字回復できた理由(その1)

値下げをした吉野家が既存店売上を大きくV字回復できた理由(その2)

値下げをした吉野家が既存店売上を大きくV字回復できた理由(その3)

 

その後、店頭などいろいろ見るうちに、既存店売上高に大きな違いをもたらした吉野家の差別化を発見しました。それは、PRによる差別化です。

 

【既存店売上高を好転させた吉野家のPRにおける差別化】

【1】      価格ではなく、人・思想を全面に出す看板。

【2】      マスコミを使った大きな露出

 

1について、これは吉野家の店舗に掲げてある掛け軸型看板を見れば、わかるかと思います。

 

吉野家の看板

 

この看板で一番に訴えているのは、価格ではありません。比較的好感度の高いタレント(北大路欣也・宮川大輔・相武紗季)の写真とその言葉を、大きく訴えています。その言葉は、「これは私の牛丼です」であり、タレントの考えに他なりません。この言葉がタレントの大きな写真と一緒になった看板を見れば、

 

吉野家=正統派牛丼

その他=邪道の牛丼

 

という認識を持っても不思議ではありません。吉野家の牛丼が正統派である根拠は、看板からはわからないので、もはや宗教や思想のレベル。このタレントの言葉が目に入り、頭に残れば、

 

牛丼が食べたくなった→吉野家に行こう(安いし)

 

という思考回路が働きます。この時に、他チェーンが選択肢になることはありません。つまり、この巧妙な看板により、吉野家は価格比較を回避できたのです。その結果が、大幅な客数増、その結果の既存店売上高の大幅増ではないでしょうか。

 

2は、マスコミを使ったPR。こちらは以前にも触れましたので、今回は簡単に説明しますと、吉野家が値下げを発表してから、テレビ・ラジオを始めとしたマスメディアが、こぞって吉野家を取り上げました。このマスコミ情報で、吉野家の値下げを知った人はかなり多かったでしょう。下手にCMを大量に流すことを考えれば、この告知効果は数千万円、それ以上に及ぶかと思います。このマスコミ露出により、これまで吉野家をあまり利用しなかった人やすき家・松屋のユーザーが吉野家に関心を寄せ、店舗に足を運んだ結果、大幅な客数増に結びついたのだと思います。最近で言えば、アップルの値上げのニュースが、これに当たります。報道ステーションで、二番目のニュースとして取り上げており、驚いたほど。恐らくアップルも、このマスコミ露出により、値上げした商品のみならず、その他アップル製品の関心を高めることに成功し、売上が相当アップしたのではないでしょうか。

 

この看板とマスコミ露出、いずれも吉野家のコミュニケーションです。単に値下げするだけではなく、コミュニケーションを巧みに使って価格競争を回避し関心を高めた吉野家のやり方は、とても参考になると思います。

 

☆今日のまとめ☆

吉野家の5月既存売上高が大幅に好転したのは、単に値下げしたからではない。

価格ではなく正統性をアピールした店頭の看板や、吉野家ユーザー以外の関心を高めたマスコミ露出、これらコミュニケーション手法が、大きな役割を果たしたのではないか。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

吉野家の課題は、日経も述べているように、今後いかに客単価を引き上げるかでしょう。

期間限定値下げをするなど、鶏つくね丼の販売に力を入れるのではないでしょうか。