東京チカラめしから考えた商材と購入頻度・単価の関係

東京チカラめし Cecil Lee

東京チカラめしが大きな壁にぶち当たっているようです。

 

牛丼業界の「第三極」「台風」とも言われるほどの勢いを見せていた「東京チカラめし」も、ここへきて業績の低迷が見られるようになってきた。(ビジネスジャーナルより)

 

 

東京チカラめしとは、上場外食企業の三光マーケティングフーズのファストフード業態。焼き牛丼で牛丼市場に参入した、外食業界では注目されたチェーンです。その成長が鈍化、どころか成長自体も疑わしい状態に陥っています。ヤフーのサイト(ビジネスジャーナルの記事を転載したもの)には、読者のコメントも掲載されています。「味が落ちた」「サービスが落ちた」など、競合他社による東京チカラめし包囲網以外にも、内部環境にも問題があるようです。そこで、東京チカラめしが失速している要因について、まとめてみました。

 

【東京チカラめしの成長が失速している要因】

[1]      料理品質の低下

[2]      サービスの低下

[3]      店内清潔さの低下

 

つまり、飲食店の基本であるQSC(クオリティ・サービス・クレンリネス)が損なわれたことが、客離れにつながっているようです。そして、QSCの低下を招いた要因は、次のようです。

 

【東京チカラめしのQSCが低下した要因】

[1]      急速な出店に人材が追いつかなかったから

[2]      既存牛丼チェーン・コンビニなどとの競争激化

[3]      原材料コスト・人件費の上昇による収益悪化

 

1・2・3ともビジネスジャーナルで指摘されていることなので、ここでの詳しい説明は省略しますが、次のようなスパイラルに入っていることが容易に想像できます。

 

【東京チカラめしが陥った負のスパイラル】

[1]人材不足→QSCの低下→顧客離れ→収益悪化→食材費の削減→料理品質の低下→さらなる顧客離れ

[2]競争激化→顧客離れ→収益悪化→以下同様

[3]収益悪化→以下同様

 

ただ、それ以前として商材の選択と価格設定に問題があったのではないか、と思うわけです。商材とは焼き牛丼に他なりません。三光マーケティングフーズは、煮る牛丼がメインの既存牛丼チェーンと差別化するために、焼き牛丼という新牛丼を選びました。差別化という意味では正しい選択かもしれませんが、焼き牛丼には煮る牛丼とは大きな違いがあります。まとめると、次のようになります。

 

【焼き牛丼と煮る牛丼の相違点】

[焼き牛丼]味が濃い→購入頻度が低い

[煮る牛丼]味が薄い→購入頻度が高い

 

焼き牛丼は、見た目から味が濃そうなメニューです。一方、煮る牛丼は、見た目は色が薄く味はマイルドな感じ。焼き牛丼を実際に食べたことはないですが、焼肉にタレをたっぷり付けてごはんに載せた感じでしょう。この味の違いが、購入頻度に大きな違いをもたらします。味が濃い焼き牛丼は、食べたい時には食欲がそそりますが、そう毎日食べられるものではありません。一方、味が薄い煮る牛丼は、味が薄い分七味などで味を調整できるので、毎日でも食べられるかと思います。購入頻度の違いは、客数の違いに反映されます。

 

客数をそれほど見込めないなら、客単価を高くすれば売上を確保できるのですが、東京チカラめしは、煮る牛丼とほとんど同じ価格に設定してしまいました。これにより、想定よりも売上が伸びないことになります。

 

【焼き牛丼と煮る牛丼の売上比較】

[焼き牛丼](客数小さい)X(客単価同じ)=売上小さい

[煮る牛丼](客数大きい)X(客単価同じ)=売上大きい

 

東京チカラめしが出店を開始した当初は、その目新しさやマスコミ露出の大きさから注目を浴び、想定以上の売上を記録したのかもしれません。しかし、飽きやすい焼き牛丼がメインの東京チカラめしは、徐々に客数が伸び悩み、収益悪化に陥ったのではないでしょうか。このあたりはあくまで推測なのですが、東京チカラめしがメニューの拡充を図っていることを考えれば、来店頻度=購入頻度の低さを問題視していることは間違いないかと思います。

 

お客様へ常に目新しさを提供するため、毎月の新商品として、「復刻版 生姜醤焼き牛丼」、「てりマヨ焼き牛丼」、「エビフライ定食」を投入し、また、3月には一部店舗でギョーザ、チャーハン、さらに、新規オープン店舗で「焼き牛丼」の他に、煮牛丼の「チカラ牛丼」を開始するなど、メニューの多様化に取り組んでまいりました。(2013年第三四半期有価証券報告書より

メニューの幅を広げることは、来店頻度を高める効果はあるものの、作業効率の悪化=コストアップにつながるというデメリットもあります。かといって、アルバイトを増やせば、収益はさらに悪化するので、店員の負担が増すことになり、サービス悪化に拍車を掛けているのではないでしょうか。

購入頻度から考えて、焼き牛丼は、そもそもファストフードの商材ではなかったのかもしれません。

 

☆今日のまとめ☆

東京チカラめし失速の一番大きな要因は、購入頻度の低い焼き牛丼を、低価格で提供するファストフードの商材として選んだからではないか。

客単価と購入頻度=客数から考えて、商材を選ばなければならない。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

関西にも出店されているようですが、まだ神戸には上陸していません。

尼崎に出店することは、求人誌で知りました。

興味あるチェーンだけに一度食べてみたいですが、ネット上のコメントを見ると行く気が失せてしまいますね。

ネット上の情報は本当に恐いです。

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