残業増加・時短ニーズ高まるも、ファストフード売上増にならない理由
ワタミやすき家が一部店舗を閉鎖するほど、人員不足が深刻化していることは、結構衝撃的なことです。というのも、チェーン店は成功したモデルをコピー、つまり店舗数を増やしてこそ、その強みが発揮されるから。不採算店を閉鎖するならわかりますが、利益を生み出す店舗を閉鎖するということは、かなり異常なことです。
それだけ労働市場がタイトになれば、残業も増えて当然。雇用者側から見ると、労働時間の増加になり、一方で余暇時間の減少になります。その結果、時間の価値が高くなり、時短ニーズが強くなります。
ならば、食事が早く提供されるファストフードのニーズが高まってもいいもの。しかし実際には、飲食業界でファストフードは一人負け状態。このギャップが生まれる要因は、
[1] 時短の飲食ニーズを惣菜・簡易調味料に奪われたから
[2] 逆に、ニーズの高まったヘルシーメニュー・楽しい食事空間をファストフードが提供していないから
ではないでしょうか。
1は、主にコンビニが販売する惣菜やクックドゥなどの簡易調味料の方が、時短だけではなく値段も安く、時間・金銭的コストがトータルで下がることになります。
価値=ベネフィット/コスト
と考えれば、ファストフードで食べるよりも価値は高くなります。だから、売れるのです。
2について、一方で消費者が外食に求めるベネフィットが変わってきており、ファストフードがこの変化に対応できないと考えます。そのベネフィットとは、ヘルシーさと楽しさ。やよい軒などの定食店人気は、ヘルシーさの証。もっと言えば、ヘルシーさをウリにした定食店は、多くの女性を集客しています。楽しさで人気なのは、ファミレスでしょうか。小さな子供連れでも気兼ねなく入れる点で、親子三世代が楽しめる空間を提供しています。
もちろん、飲食店なので美味しさが求められることは言うまでもありません。しかしながら、美味しさとは主観的なものであり、気分的なもの。また、とびきり美味しい物は、そう頻繁に食べたいとは思わないとすれば、美味しさだけに依存するのはかなり危険だと言わざるを得ません。
消費者の時短ニーズ・ヘルシーニーズ・楽しさニーズを考えれば、吉野家の新牛丼やマクドナルドのビッグファストブレッドは、少しピントが外れていると感じます。
☆今日のまとめ☆
企業の人員不足により残業が増えていることを考えれば、時短ニーズが高まるので、食事を早く提供できるファストフードはもっと集客していいはず。
それができないのは、コンビニの惣菜や簡易調味料に顧客を奪われているからではないか。
一方で、外食に求められるヘルシーニーズや楽しさニーズを満たしていないので、ファストフードは客数減に陥っているのだろう。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
ファストフードは、その回転率の高さ・オペレーションの低コストゆえに、外食の中で一番利益率の高い業態。
だから、私は注目しています。