セルフ式そば店とすき家・ココ壱の「ちょい高」消費獲得手法の違い
セルフ式そば、つまり立ち食いそば店でも、「ちょい高」ニーズ獲得に動いているようです。
セルフ式そば店が景気回復で盛り上がる「ちょい高」消費の取り込みに動いている。東日本旅客鉄道(JR東日本)子会社が運営する「そば処 あずみ」は店内で麺を作る新型店を開業。東京急行電鉄の駅構内で営業する「しぶそば」は平均より4~5割高い商品を投入する。セルフ式そばは安さと手軽さが売りだが、「少し高くてもおいしいものが食べたい」という消費者に応える。(2014年7月6日付 日経MJ)
「ちょい高」消費とは、少しでも品質のいいものを買いたいという消費行動です。このニーズを取り込んだ代表商品は、セブンの金の食パンでしょうか。ベーカリー並の食パンをNB商品よりも少し高い価格で販売した結果、飛ぶように売れたみたいです。このニーズ、日経MJのヒット商品番付にもノミネートされ、「価値組消費」と呼ばれました。このニーズを取り込めば、なかなか客数が伸びない中、客単価を引き上げることができ、売上増が期待できます。この「ちょい高」消費に、安さ・早さがウリの立ち食いそば店も対応したというのが、この記事の内容です。
もちろん、安い商品の販売を止めたのではありません。200円台のかけそばを販売しながら、より付加価値の高い打ちたてそばや天ぷらを添えたそばを販売しているのです。200円台のそばで集客して、より単価の高い商品で利益を取るという手法です。
同様の手法は、牛丼のすき家でも行っています。すき家の場合は、他の牛丼チェーンが値上げする中、牛丼並盛りを値下げ。その一方で、サイドメニューを値上げすることで、売上を伸ばしています。
すき家は4・3%の増収だった。4月に牛丼並盛りを10円値下げする一方でキムチなどサイドメニューを値上げした。「値上げ後もサイドメニューの注文は変わらない」(すき家)としており、客単価は4・4%上昇している。(2014年7月8日付 日経新聞朝刊)
すき家の店舗には、外に「牛丼 250円(税抜き)」と大きく書かれたのぼりが立てられています。こののぼりで、格安牛丼の存在を告知し、集客。そして店内で、「ちょい高消費」ニーズに答えようと、サイドメニューの販促に力を入れているのでしょう。(あくまで推測)懐事情が少し良くなれば、牛丼だけではなく、キムチなどのサイドメニューを頼みたくなるもの。そのサイドメニュー需要が高まると読んで、サイドメニューを値上げして、客単価引き上げを目指したのです。その結果、6月の既存店売上高は、プラスになりました。
ついつい頼んでしまうトッピングで収益を拡大するのが、CoCo壱番屋です。
「カレーハウスCoCo壱番屋」を運営する壱番屋は 7日、2015年5月期の連結純利益が前期比9%増の26億円と、2期連続で過去最高になる見通しだと発表した。豚肉やチーズなど食材価格の上昇に加え、 人件費も増加しそうだが、既存店の売り上げ増と特別損失の減少を見込んでいる。年間配当は75円と前期より5円増やす。(2014年7月8日付 日経新聞朝刊)
CoCo壱番屋の凄さは、客単価が上昇しているだけではなく、客数も伸びていること。正直、客数増の要因はよくわかりません。ドライブスルー店を増やしたり、持ち帰りカウンターを設置したり、テイクアウト需要を獲得していることしか、考えられません。あとは、本部により接客サービスの維持・強化でしょうか。客単価が伸びているのは、トッピングと単価の高い限定商品が売れているから。ただし、CoCo壱番屋には、すき家の250円牛丼のような集客商品は見当たりません。450円前後(地域によって価格は異なる)のポークカレーが、単価の一番低い商品ですが、この価格が特別安いわけではないので、集客に大きく寄与しているとは考えにくいでしょう。恐らく、チェーン展開するカレー専門店自体が少なく、「カレーならトッピングの多いココ壱」という考えで来店する人が多いのでしょうか。この辺りは、ココ壱をあまり利用しないだけあって、いまだにわかりません。
ただし、ココ壱の客単価が伸びているのは、多種多様なトッピングを容易することにより、ついついトッピングを頼んでしまう環境を作り、そこに「ちょい高」消費が加わることで、少し高めのトッピングが売れているからでしょう。トッピングという収益商品が、「ちょい高」消費の影響を受けて、客単価をさらに引き上げているのです。
すき家とココ壱の事例から考えると、「ちょい高」消費をうまくつかむには、基幹商品を割安にしながら、トッピングやサイドメニューで稼ぐ方法が一番効果的ではないでしょうか。立ち食いそば店のように、付加価値メニューを新たに投入するだけでは、一部の顧客には売れるものの、客単価引き上げへの効果は限定的だと思われます。
☆今日のまとめ☆
ココ壱・すき家の客単価が伸びているのは、割安な基幹メニューを残しつつ、サイドメニュー・トッピングで「ちょい高」消費を掴んでいるからではないか。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
立ち食いそば店の場合、そもそも割安さだから訪れる人も多いはず。
だから、5割も高い付加価値メニューが売れるかどうかは、博打に近いかもしれません。
吉野家の牛すき鍋膳のようにヒットすればいいですが、マクドナルドのワールドカップメニューのように失敗に終わる恐れもあります。
もちろん、立地にもよりますが。