マクドナルドのなりふり構わない客数回復策は業績向上につながるのか?
マクドナルドが、販促を強化しています。その目的は、回復の見込みが見えない客数をテコ入れするため。マクドナルドの既存店客数の推移を見ると、2013年5月から一貫してマイナスが続いています。これに中国産鶏肉問題が追い打ちを掛け、ここ三ヶ月は15%以上の減少。そう考えると、販促強化も納得です。
私が発見した販促とその目的をまとめると、次のようになります。
【マクドナルドが直近行っている販促】
- 割引特典付きバイザーカードの店周辺での配布→元顧客の奪還・複数利用喚起
- 購入時にクーポン配布→リピート利用喚起
- 購入時にチキンマックナゲット特別ご招待券配布→安心安全の不安を解消、リピート利用喚起
すべてに共通するのは、来店頻度を上げようとしていること。1のバイザーカードとは、サイドメニュー・コーヒー類を特別価格で購入できるパスであり、年内近畿・四国・中国地方のマクドナルドで利用できます。2・3は購入時に貰ったもので、割引クーポンまたは無料券により再来店を促しています。コンビニなど飲食店以外との競争も激化しているので、顧客数拡大は難しいと判断したのでしょうか。リピーター育成に力を入れるのは、客商売ではオーソドックスな手法です。
相違点は、1のみ店外で配布しており、マクドナルドの利用を止めた元顧客の奪還も目指している点。客数減が続くマクドナルドの顧客は、鶏肉問題もありミニマムまで縮小したため、限られた顧客のリピート利用が、マクドナルドの主要売上を支えているのかもしれません。マクドナルドの客離れは、来るところまで来たということです。再来店を促すためのクーポン配布は、顧客離れを事前に防止するためとも考えることができます。
このように見ると、客数がほぼ底を打ったマクドナルドは、販促によってV字回復可能にも見えます。しかし、販促の内容を見る限り、そうとも思えません。というのも、販促のほとんどは、
値引き販売
に過ぎないからです。確かに、チキンマックナゲットの冊子では、その安心安全面の不安の払拭に力を注いでいます。しかし、この冊子を見る人の多くは、無料クーポン目当てではないでしょうか。値引きによる集客と同じです。値引き販売が、収益拡大につながりにくいのは、消費増税直後の牛丼価格を据え置いたすき家の実績を見ればわかります。競合が値上げする中で価格を据え置くことで、客数・売上金額の大幅増を見込んでいましたが、結果は客数・売上金額とも減少。さほど大きな集客効果はなかったようです。一方、業績好調な飲食店のほとんどは、高付加価値・高単価商品の投入により、客単価引き上げに成功し、既存店売上を増やしています。今の成功方程式と照らし合わせると、マクドナルドの値引き販促は、失敗する可能性の方が高いと言わざるを得ません。
昨年11月の客数は二桁マイナスなので、値下げ販促によってこの11月の客数はプラスに転じるかもしれません。しかし、たとえ運良く既存店売上がプラスに転じたとしても、利益率を犠牲にし、収益性は大きく低下すると思われます。
マクドナルドの本当の勝負は、値下げ集客に成功した後に、単にパティ・フライ・チーズを挟むのではなく、ビックアメリカのような画期的なサンドイッチを投入できるかどうかでしょう。
☆今日のまとめ☆
マクドナルドは、値引きクーポンや無料引換券の配布によって、元顧客の獲得・利用頻度の向上に努め、必死で客数を引き上げようとしている。
ただ、今の成功の方程式によれば、値下げは収益悪化を引き起こす恐れがある。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
- 今日のこぼれ話☆
せっかく無料券を頂いたので、チキンマックナゲットを久しぶりに食べようかと思います。
そういえば、セットメニューの無料券もまだあったような。