王将の日本ラーメンは売れるのか?

餃子の王将 日本ラーメン ohsho nihonramen※王将公式サイトより

 

2月23日の日経新聞朝刊に、餃子の王将(京都)の一面広告が掲載されていました。それは、掲載日から販売する日本ラーメンの告知。日本ラーメンとは、スープ・麺・チャーシューを日本製に切り替えたラーメン。価格は税込み734円(本体680円)。価格だけをみると、このラーメンはラーメン専門店のラーメンとほぼ同じ。美味しさではなく産地に特化した量販店の商品と、美味しさで差別化した専門店の商品とでは、どちらが売れるか、と聞かれれば、思わず後者と答えてしまう人は多いのではないでしょうか。

 

では、なぜ敗色濃厚な商品を、全国紙朝刊の一面広告に掲載するまでして発売するのか?その答えは、既存店売上高(PDF)にありました。

 

王将は10月1日より価格改定を行いました。その際に、主要食材の国産化も実施。それに伴い、比較的大幅な値上げになりました。割安感で売っていた王将ですから、この価格改定によりさぞかし既存店売上を落としていると想像していたのですが、現実は違うのです。10月・11月の既存店売上高は、数字こそマイナスなものの、6月以来最高の数字をたたき出しています。(10月99.5%、11月98.0%)値上げによる客数減少よりも、客単価向上の効果の方が大きかったため、既存店売上高は改善したのです。

 

恐らくこの結果を見て、日本ラーメンの販売に踏み切ったのでしょう。割安感で集客していたチェーン店でも、顧客は安全・安心を求めている。これを数字で確認したからこそ、さらに安全・安心に踏み込んだ高単価商品を投入したのです。

 

日本ラーメンとその他ラーメンの価格を比較すると、次のようになります。

 

日本ラーメン 税込み734円(本体680円)

ラーメン  税込み518円(本体480円)

こってりラーメン 税込み626円(本体580円)

 

本体価格で100円ずつ差を付けられていることがわかります。牛丼チェーンでよくあるパターンです。本体価格480円のラーメンを食べようとして来店した顧客が、あと200円出せば日本製にこだわったラーメンを食べられると考えれば、200円余分に出すのではないか。きっと、マーケティング担当者はそう考えたのでしょう。

 

しかし、その後の既存店売上高を見て、王将内部は大きく驚いたのではないでしょうか。

 

【王将の直近2ヶ月既存店売上高昨対比】

2014年12月 90.8%(2015年3月期ワースト1位)

2015年1月 93.9%(同ワースト2位)

 

ワースト記録を更新してしまいました。その要因は、もちろん客数の減少。いずれの月も、昨対比で80%台にまで低下。もちろん、この客数もワースト記録です。会社側の説明によると、「一部店舗での深夜営業の短縮や餃子のディスカウント販売の削減等」とあるので、人手不足の深刻化により労務費が拡大し、そのコストアップを賄うために、餃子無料券の配布を止めたことが、推測できます。売上よりも損益重視の考えです。ならば、既存店売上高の大幅悪化は想定内かもしれませんが、まさかワースト記録を付けるとは思わなかったのではないでしょうか。

 

それ以外の要因としては、価格改定後の10月・11月に利用した顧客が、意外な出費増に気づき、王将の利用を控えた、ということが考えられます。つまり、彼らにとって、原材料の国産化と値上げが釣り合わなかったということです。

 

これだけ見ると日本ラーメンが売れる可能性は低いということになりますが、日本ラーメンは既存品の切り替えではなく新商品というところに大きな意味があります。新商品として投入することで、価格重視の顧客は500円台の通常のラーメンを、安全安全重視の顧客は700円台の日本ラーメン、と住み分けすることができます。つまり、従来仕方なく通常のラーメンを注文していた顧客が、日本ラーメンにシフトしてくれれば、客数に影響せず客単価だけ引き上げられる。王将は、この効果を狙っているのかもしれません。ただ、そのような顧客がどの程度いるかは、かなり疑問ですが…

 

日本ラーメンは、商品コンセプトとしては面白いのですが、王将の客層・店舗デザインを考えると、少しちぐはぐなように感じてなりません。もしかして、日本ラーメンの投入で、子持ち家族層をターゲットに加えて、ファミレス業界に殴りこみをかけようとしているのかもしれませんね。郊外にはファミレスのようにボックス席のある店舗も、あることですし。

 

☆今日のまとめ☆

価格改定で客離れが深刻な餃子の王将。

日本ラーメンの投入で、客数に影響せず客単価だけ引き上げようとしているのだろうか。

ファミリー層の獲得を狙っているのかもしれない。

 

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  • 今日のこぼれ話☆

朝刊一面の広告は、結構インパクトありますね。

このPR効果を狙ったというのもあるでしょう。

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