【573号】ウォルマート、店舗内診療所が失敗した理由とは?
By racineur
◎本日のニュース
1)見出し
Wal-Mart Lags in Clinic Race
【出典】
http://goo.gl/W0Jb1
2)要約
基礎的な医療サービスを提供する店舗内診療所において、
ウォルマート・ストアーズ社は競合他社に遅れを取っている。
参入を発表した5年前には、
149軒に留まっている。
遅れの原因は、医療サービス業者に場所を貸すだけで、
診療所の運営を外部に委託したことにある。この結果、
診療所の価格やサービス水準にウォルマートは口出しできず、
収益向上が難しくなっている。また、委託先が、
店舗内診療所の利用者を自社の他診療所に誘導するという問題も
生じている。
ウォルマートは遅れを取り戻すために、
医師と委託先医療サービス企業の選別を厳しくしている。
また、これまでの運営方針を転換し、
関与するようになった。
単純な医療サービスを行う店舗内診療所は、
その数がここ2年間で15%も増加した。さらにその市場は、
初期診療を行う医師の不足やオバマ政権の医療保険改革により、
今後大きく成長されると見込まれる。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Five years after Wal-Mart Stores Inc. promised to open thousands
of health-care clinics in its sprawling supercenters, it has
fallen far behind its industry rivals in what has become
a race to provide basic medical care in stores.
4)キーとなる英文の和訳
ウォルマート・ストアーズ社は、健康管理を行う診療所を、
急増するスーパーセンター内に数千軒開設すると発表してから5年
その意気込みとは裏腹に、
競合企業に遅れを取ってきた。
5)気になる単語・表現
sprawl自動詞(ぶざまに)手足をのばす;(植物が)
(町などが)不規則に広がる;混乱する、まとまりがつかなくなる
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
ウォルマート・ストアーズ社(Wal-Mart Stores Inc.)が
店舗内診療所に注目したのは、
通常の病院などで初期医療を行う医師が不足しているため、
診療所へのニーズは大きかった。さらに、オバマ政権による
医療保険改革により医療保険保持者が劇的に増加し、
医療サービスを受けられる見込み客が大きく増加する。
これらの要因により、店舗内診療所市場は今後大きく成長すると
見込まれている。また、
その施設が小売店舗への集客の役割を果たしてくれる。
そこでウォルマートも、
その実績は予定数には全く及ばない。競合他社と比較すれば、
その遅れの大きさがわかりやすい。
【ウォルマートの店舗内診療所の予定と実績】
5年前の予定→2012年までに2000軒近く開設
2012年までの実績・予定→開設数は149軒のみ。
【競合他社の店舗内診療所実績】
ウォルグリーン社(Walgreen Co.、薬局チェーン)
CVSケアマーク社(CVS Caremark Corp.、薬局チェーン)
ターゲット社(Target Corp.、ディスカウントストア)
クローガー社(Kroger Co.、スーパーマーケット)
このような大きな遅れを取ったのは、
競争に負けた要因は、店舗内診療所の開設・運営方法にある。
ウォルマートは、外部の医療サービス事業者に場所をリースし、
運営は委託する方法を取った。ウォルマートに医療サービスの
実績がない以上、仕方ないとも言えるが、その弊害が大きかった。
運営を外部委託することにより、
◯価格・サービス水準の決定権がないために、競合他社に対する
競争優位を持てなかった。
◯委託先が、店舗内診療所利用者を他の自社運営施設に誘導する。
前者について、店舗内診療所は成長市場ゆえに、競争も激しい。
そのため、本来ならばその価格・サービス水準を差別化する
必要があるが、ウォルマートにその決定権がない。その結果、
競合他社に負けることになる。ちなみに、競合他社は、
医療サービス事業者を買収し、価格・サービス水準に工夫を
凝らしている。
後者について、ウォルマートは逆に、その集客力を委託先に
利用されたことになる。委託先は、
自社運営の他診療所への利用を促すことにより、
ウォルマート内診療所での運営コストを小さくすることができる。
そして、ある程度集客できたら、ウォルマート内診療所を閉鎖。
委託先にとっては、ウォルマート内診療所は診療施設というよりも
集客施設なのだろう。この動きにより、開設後短期間での閉鎖する
事例が増えている。店舗内診療所を小売店舗への集客に活用する、
というウォルマートの思惑は崩れることになる。
ウォルマートが採ったこれら問題に対する改善策は、
運営の全面外部委託という方針の転換。具体的には、
価格やサービス内容など運営方法にまで関与する
長期的運営を行う医師・医療サービス事業者を厳選する
というものである。
この方針転換は、店舗内診療所に対するウォルマートの考えの
転換でもある。つまり、
従来の考え=診療所は小売店舗への集客施設に過ぎず、
方針転換後の考え=診療所間の競争が激しく、価格・サービス面で
差別化をしなければ、小売店舗への集客につながらない。
である。運営方法で顧客ニーズを満たさなければ、店舗内診療所は
集客に役立たないと考えるようになった。そのためには、
ウォルマートのターゲット層が求める価格・
ならば、委託先よりも顧客をよく知るウォルマートが、
運営する方がうまくいくのではないか。
ウォルマートにできないわけではない。
小売業の場合、販売するモノだけで差別化するのはとても難しく、
価格競争に陥ることが多い。自社開発商品のPB商品もしかり。
競合チェーンが開発した同等のPB商品との価格競争にさらされる
そこで、サービスでの差別化が大きな役割を果たす。
自社運営の方が差別化をしやすいことを考えると、ウォルマートが
店舗内診療所を自社運営に切り替えても不思議ではない。
Wal-Mart Stores Health http://goo.gl/e4SmC
CVS MinuteClinic http://www.minuteclinic.com/
Target Clinic http://goo.gl/faJlr
Kroger Pharmacy http://www.kroger.com/
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《今回のヒントのまとめ》
1)ウォルマートが店舗内診療所で失敗した要因は、
運営を外部に全面委託したからである。
2)それにより、顧客ニーズに合った価格・
収益化が難しくなった。また、
集客に利用する委託先も現われた。
3)この問題を解決するために、ウォルマートは全面委託の方針を
転換した。つまり、運営方法へ関与するようになり、
長期的運営を行う委託先を厳選するようになった。
4)ただ、ウォルマートのターゲット顧客が求める医療サービスを
提供するには、外部に委託するのではなく、ウォルマート自身が
運営する方がいいのではないか。
5)モノだけでの差別化が難しい小売業にとって、
サービスでの差別化は大きな競争力になる。ならば、
店舗内診療所も自社運営の方がうまくいくだろう。
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7)おすすめ商品・サービス
◎ウォール・ストリート・ジャーナルで学ぶ英単語
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編集後記
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今日も長い記事を読んでいただき、ありがとうございました。
感謝・感謝・感謝です!