JR住吉駅前の地ビールバーが8ヶ月で撤退した理由

新しくできる串かつ立ち飲み屋さん

 

以前に取り上げた地ビールバー(それほど小じんまりしていませんが)があります。JR住吉駅前にあり、その前を自転車でよく通るので、通るたびにチラ見していました。どのくらいお客さんが入っているのか、を知りたいため。そして、機会があれば、一度来店しようと考えていました。地ビールは、単価が高いものの、売上が伸びているアルコール商品だからです。その夢(?)が叶わぬまま、撤退してしまいました。

 

そこで、なぜ地ビールバーが失敗したのかについて、自分なりに考えてみました。失敗事例を考察すれば、いろいろ学べるからです。

 

【住吉駅前の地ビールバーが失敗した理由】

[立地]住宅地に業態がマッチしなかったから

[料理]代表的なメニューがなかったから

[サービス]業態とサービスがチグハグだったから

[価格]単価の低い集客商品がなかったから

 

まずは、立地について。JR住吉駅は、ビジネス街ではなく住宅街にあります。もちろん、快速が止まる駅なので、駅周辺には商業施設やスーパーンなど店舗は多いですが、オフィスビルは見当たりません。(小規模のならあるかもしれないですが)よって、住吉駅前のバー・居酒屋には、仕事帰りに会社の同僚と一杯するという利用はなかなか考えにくいのです。そのためか、住吉駅前には居酒屋チェーンはほとんどありません。同じ快速が止まる隣駅の六甲道と比較すると、その違いが一目瞭然です。

 

【JR住吉駅・六甲道駅周辺にある居酒屋チェーン店舗数の違い】

[住吉]1軒(八剣伝)

[六甲道]5軒(居心伝、土間土間、坐和民、酔虎伝、笑笑)

 

快速が止まりそれなりに乗降人数が多いにもかかわらず、居酒屋チェーンが出店しないのは、何らかの理由があるからに他なりません。その理由とは、会社帰りの利用を見込みにくいからではないでしょうか。実際私がチラ見した限り、閉店した地ビールバーが満席になっていたことは一度もなく、どちらかというとノーゲス(来店客ゼロ)の方が多かったように思います。

 

料理に関しては、実際に利用したことがないので、食べログの口コミから推測しました。料理についての良い評価はほとんどありません。どちらかというと、マイナス評価の方が多いように感じます。決して美味しくはないのですが、際立って美味しい料理もないようです。私は常々感じているのですが、家庭料理や惣菜の味が向上している中で飲食店を利用してもらうには、そこでしか食べられない代表的な料理があるか、スバ抜けて心地良いサービスや雰囲気があることが条件のように思っています。その点で言えば、この地ビールバーには代表的な料理やずば抜けて心地良いサービスはないようです。確かに地ビールという代表的なメニューがありますが、独占販売している地ビールならまだしも、他店でも扱っている地ビールなら、「代表的」とは言えません。さらに、地ビールを扱うコンビニが登場したほど地ビールへのアクセスが容易になっているので、地ビールで勝負すると家飲みともろにバッティングしてしまいます。家飲みと競合すれば、割高な飲食店が不利になるのは言うまでもありません。

 

サービスについても、食べログからの考察です。券売機による擬似キャッシュ&キャリー方式を、採っていたようです。通常このようなコストの低い販売方法を取る場合、そのコスト分を価格で還元します。つまり、価格を割安にするのです。しかし、この地ビールバーの平均客単価は3000円以上で、居酒屋としてもバーとしても普通か高い方です。そう、券売機利用と客単価が釣り合わず、チグハグなのです。さらに、食べログの口コミでは、無駄に店員が多いとの指摘があり、店員を少なくして値段を下げてほしいという要請までされています。券売機でコスト削減を目指しながら、一方で価格は高く、店員も多く配置している。何をしたいのは、さっぱりわかりません。また、券売機を使うと、店自体がどうしても安っぽく感じるものです。その感覚と値段のギャップを感じる来店客も、相当数いたのではないでしょうか。このようなサービスを、ずば抜けて心地良いと感じる人はほとんどいないので、サービスでの来店動機は考えにくくなります。

 

最後に価格。メイン商品の地ビールの価格は、780~980円。(400ml)この価格では、なかなか気軽に利用できません。この地ビールの高さが、集客のハードルになったのではないでしょうか。

 

住吉駅前で地ビールバーが成り立たないのかというと、必ずしもそうとは言えません。例えば、

 

[立地]駅前ではなく住宅街の中

[ハード]高級感のある雰囲気、小規模でカウンターのみ

 

ならば、住吉周辺に住む比較的裕福な層に支持されたかもしれません。利用シーンは、自宅で食べた後にちょっと生の地ビールを飲みに行くというものです。住宅街の中にあるという立地が神秘さを生み出し、地ビールファンが行きたいお店になれるかもしれません。

 

ちなみに、地ビールバー撤退の跡には、立ち飲み串かつ屋さんが入るようです。住吉駅前は、立ち飲み店激戦区でもあるので、これまた競争が激しくなりそうです。単に串かつだけではなく、それ以外の差別化も必要になるのではないでしょうか。

 

☆    今日のまとめ☆

住吉駅前の地ビールバーがオープン後8ヶ月で閉店したのは、立地・料理・サービス・価格に問題があったからではないか。

特に、代表的な料理やずば抜けて心地よいサービスを提供できなかったことは、痛いだろう。

 

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☆    今日のこぼれ話☆

地ビールバーを取り上げるかどうかは、悩みました。

オーナーの気持ちが痛いほどわかるからです。

生ビールのタップを16個も設置するなど、投資もそれなりに大きかったのではないでしょうか。

こういう撤退事例を見ると、飲食店は本当に難しいなぁ、と実感します。

 

☆経営コンサルタント 石原明さんの言葉☆

「「高い」ということをセールスポイントにして売るのです。高いから、ほかのお店は絶対に買えませんから、ここで買っておくと目立ちますよ。(目立つオブジェの販売)」

『気絶するほど儲かる絶対法則 売れるしかけと勝てるしくみの作り方』より)

※ポッドキャストでいつもお世話になっています。この番組は本当に勉強になります。

※創業者・経営者・コンサルタントの心に残る言葉、元気になる言葉を紹介しています。

 

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