アベノミクス効果で百貨店が一人勝ちしている理由とは?
小売業界でアベノミクス効果を一番受けているのは、百貨店。四半期決算には、その好調ぶりが表れています。
個人消費の回復が高額品を中心に広がり企業業績に好影響を与えている。百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングスは海外ブランド品など高額品の販売が好調で、2014年3月期の利益見通しを上方修正した。カシオ計算機は「Gショック」など同社として高価格帯の腕時計が好調で13年4~6月期の連結純利益が3割増えた。(2013年8月3日付 日経新聞朝刊)
もちろん、株高による資産効果で百貨店の高額商品が売れているからでしょう。ただ、冷静に考えてみると、同じ資産効果が、スーパーで働いても不思議ではありません。例えば、株高で儲かった人が、190円のPB牛乳から250円の「明治おいしい牛乳」にランクアップしても不思議ではありません。しかし、スーパーの業績を見る限り、単価の高いプレミアム商品へのシフトは、さほど起こってはいないようです。
そこで、資産効果が百貨店には起こって、スーパーには起こらない理由について、考えてみました。
【百貨店・スーパーへの資産効果が異なる理由】
[百貨店]プレミアム商品を購入することで、サービスが良くなるから
[スーパー]プレミアム商品を購入しても、サービスが変わらないから
例えば、従来百貨店で5000円のジャケットしか買わなかった人が、1万円のジャケットを買ったとしましょう。すると、店員の接客態度はきっと変わるはず。笑顔が多くなるなど、より心地良い接客をしてくるかもしれません。または、優良顧客として、新商品の情報を先に教えてくれるかもしれません。このように、対面サービスの場合、高い商品を買うことで、接客が変わる可能性があるのです。しかも、接客サービスで差別化する百貨店業態では、接客態度が変わる可能性がかなり高いのではないでしょうか。この特別待遇が好きで、百貨店でついつい買い過ぎる富裕層も多いかと思います。
一方、スーパーではそうはいきません。セルフサービスのため、店員と接触する場面がレジぐらいしかないですし、レジでもほぼ機械的に対応されるだけ。PBの牛乳を買う人も、「明治おいしい牛乳」を買う人も、サービスは同じです。たとえ、5000円のワインを買ったとしても、レジでの対応は変わらないでしょう。ならば、百貨店ほど高額商品を買うインセンティブは働かなくなります。だから、より単価の高いプレミアム商品が、資産効果の恩恵を受けないのではないでしょうか。
そう考えると、セルフサービスで単価の高い商品を売ることは、相当難しいことになります。だから、セルフサービスのデパ地下加工食品売場は、閑散としているのかもしれません。
☆今日のまとめ☆
対面サービスの百貨店が資産効果の恩恵を受けるのは、高額商品を買うことにより、接客サービスで特別待遇をされるからではないか。
一方、セルフサービスのスーパーは、店員との接触機会が少ない上、いくら高額な支払いをしてもレジでの対応は変わらないので、単価の高いプレミアム商品が売れないのかもしれない。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
高いモノを買って店員さんに褒めてもらいたいという感情。
確かにありますね。