永谷園のビアードパパ買収が教えてくれるスイーツ小売の現実とは?

ビアードパパの店舗

by courtesy of Davich Klinadung

 

永谷園がシュークリーム専門店・ビアードパパを運営する麦の穂ホールディングス(HD)を、買収するようです。

 

永谷園は22日、シュークリーム専門店「ビアードパパ」を運営する麦の穂ホールディングス(HD、大阪市)を11月28日付で買収すると発表した。取得額は94億4000万円。麦の穂HDは中国や米国など17カ国・地域で国内とほぼ同じ200店強の店を持つ。永谷園は共同でのメニュー開発や店舗開発ノウハウを吸収し、年間で数億円にとどまる海外売上高の拡大を狙う。(2013年10月23日付 日経新聞朝刊)

 

この記事を読んだ時、直感で「永谷園がスイーツ小売事業に参入する」と思ったのですが、本当の目的は違い部分にあるようです。

 

少子高齢化で国内の食品市場は縮小が避けられない。永谷園は米国での持ち帰り用すし店や中国での袋麺の製造・販売を細々と手がける海外事業を強化する考え。今後は海外の和食ブームに対応し、麦の穂HDと共同で和食や和菓子などの持ち帰り店や飲食店の展開などを検討する。(同上)

 

永谷園が興味を持つのは、麦の穂HDの海外事業。この運営ノウハウを利用して、既に展開している持ち帰りすし店や袋麺の製造・販売を強化したいのです。よって、スイーツ事業が干しいから買収したわけではないのです。

 

改めて考えてみると、ビアードパパが販売するシュークリームは、競争激化の真っ只中にあると思われます。その競合関係をまとめると、次のようになります。

 

【ビアードパパの競合関係】

[自宅用]コンビニスイーツとの競合

[贈答用]デパ地下スイーツや専門店との競合

 

贈答用の競合は以前から存在していましたが、地方の有名店が都心のデパ地下に出店することにより、競争が激化したことは否めません。この場合、シュークリーム店だけが競合するのではなく、お手軽価格のスイーツ全般を販売する店舗が競合関係になります。

 

贈答用よりも厳しいのが、自宅用ではないでしょうか。コンビニスイーツの品質向上・デザイン向上は、注目に値します。しかも、値段もかなり安いのです。例えば、セブン-イレブンのシュークリームは、一個105円。ビアードパパの価格は恐らく150円前後なので、その価格差はかなり大きいもの。しかも、セブン-イレブンは店舗数も多く利便性も良く、シュークリーム一個だけ買っても、何らおかしくありません。ビアードパパのような専門店なら、一個だけ買うことは気が引けるもの。この品質・価格・利便性の違いが、コンビニスイーツ人気につながり、専門店のビアードパパは、その分苦戦を強いられます。

 

ちなみに、日経記事に掲載されている買収価格と麦の穂HDの最終利益を比較すると、以下のようになります。

 

【永谷園の買収価格と麦の穂HDの直近最終利益】

[買収価格]94億4000万円

[最終利益]3億1000万円

[PER]31.47倍

 

一部上場のスイーツ小売企業モロゾフの直近PERは、30.94倍。ブランドの知名度から考えると、モロゾフの方が割高で当然。しかし、実際には、モロゾフよりも高いPERで、永谷園は麦の穂HDを買収しています。プレミアム価格を払ってまで、海外事業に活用できるノウハウが欲しかったのでしょう。

 

そこまでして海外小売事業のノウハウが欲しかったということは、それだけ海外市場の成長性が高いことであり、国内市場での成長が見込めないことでもあります。国内で食品を売ることは、しんどいことと言えるのです。

 

☆今日のまとめ☆

永谷園がシュークリーム専門店を運営する麦の穂HDを買収したのは、海外小売ノウハウを取得するため。

国内スイーツ小売市場は競争激化で、とてもしんどい市場と捉えることができるだろう。

 

 

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☆  今日のこぼれ話☆

スイーツ小売は、粗利も高く単価も比較的高いので、儲かる事業という認識でした。

だから、筍のように新しいブランドが次から次へと生まれるのです。

しかし、旨みのある市場だからこそ、それだけ競争は厳しいもの。

どの業界に注目するかは、とても重要ですね。

 

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