マクドナルドのアメリカンヴィンテージ

マクドナルドの通期決算が発表されました。客数減少地獄から抜けだせず、大幅減益に終わりました。

 日本マクドナルドホールディングスは6日、2014年12月期の経営戦略を発表した。客離れによる 業績不振を受け、不採算店など143店を閉鎖、200店を改装。事業会社のサラ・カサノバ社長はもともとの強みだった家族客を増やす「原点回帰」策を打ち 出した。コンビニエンスストアとの競合が強まるなか、成長軌道に戻れるか。(2014年2月7日付 日経新聞朝刊)

マクドナルドが深刻なのは、店舗あたりの売上が大きく減少していること。店舗数が減少しているのですが、それ以上に売上金額も減少しています。通常、収益性が低い店舗が閉店対象になり、一方で収益性の高そうな立地に店舗をオープンします。その結果、店舗あたりの売上は伸びてもいいもの。しかし、マクドナルドには、そのセオリーが成立していません。それほど、既存店売上の営業力が落ちているということになります。

【マクドナルドの店舗あたり売上高比較】

(2012年度)1億6153万円

(2013年度)1億5940万円

この要因は、客数の大幅減少。客単価はプラスで推移していますが、それ以上に客離れが起こっています。つまり、消費者の支持率が急激に低下しているのです。

ファミレス業界が復活する一方で、ファストフード業界は低迷しており、マクドナルドだけが業績悪化に苦しんでいるわけではありません。簡単に言えば、コンビになどの他業態に顧客が奪われていることが、ファストフード低迷の要因です。しかし、低迷するファストフード業界の中で、既存店売上を伸ばすチェーンがあります。それは、吉野家です。

牛丼大手3社の1月の既存店売上高が5日、出そろった。吉野家ホールディングス(HD)傘下の「吉野家」は前年同月比で14%増だった。「牛すき鍋膳」(580円)が好調で、昨年12月(16%増)に続いて大きく伸びた。ゼンショーHDの「すき家」と松屋フーズの「松屋」はいずれも1%減だった。(2014年2月6日付 日経新聞朝刊)

客単価引き上げを目指したマクドナルドとは対照的に、吉野家は客数増加を目指し、牛丼値下げを実行しました。その結果、客数は大幅に増え、牛丼を値下げしてから、9月を除き9ヶ月間既存店売上はプラスになりました。ただし、その一方で、今度は客単価の下落に直面します。また、値下げが浸透するにつれて、客数の増加率も鈍化してきます。そこで投入したのが、高単価商品の牛すき鍋膳。この新商品の発売により、客単価の大幅下落に歯止めがかかり、既存店売上の増加率はさらに高まっています。つまり、牛すき鍋膳という客単価引き上げ作戦に成功したのです。

マクドナルドも高単価商品を次々と投入していますが、吉野家のように既存店売上はプラスになっていません。この違いはどこにあるのかを、改めて考えてみました。

【マクドナルドの高単価バーガーと吉野家の牛すき鍋膳の違い】

[マクドナルドの高単価バーガー]見た目は100円台のバーガー類に似ている→100円台のバーガーと比較対象にされやすい→客数は拡大しない

[吉野家の牛すき鍋膳]見た目は280円の牛丼とは全く異なる→280円の牛丼と比較対象にされにくい→客数が拡大する

牛すき鍋膳は牛丼とは明らかに違うので、牛丼ユーザーとは違う消費者を獲得できるのに対し、マクドナルドの高単価バーガーは、ハンバーガー類と似ているので、ハンバーガーユーザーしか獲得できない、ということです。

例えば、今年発売されたマクドナルドのアメリカンヴィンテージも、バンズに具材とパティまたはチキンを挟んだ商品であり、他のハンバーガー類と構成は同じです。アメリカンヴィンテージを評価する時に、他のハンバーガー類と比較され、価格の高さに注目されるわけです。その結果、アメリカンヴィンテージは、ハンバーガーユーザー以外への広がりにはつながらず、マクドナルドの客数増には寄与しないのです。

一方、吉野家の牛すき鍋膳は、固形燃料を使った定食であり、牛丼やその他丼とは全く異なります。その違いは、一目瞭然。恐らく、牛丼を食べに来た人は、牛すき鍋膳を注文しないでしょう。店舗で牛すき鍋膳を知った人は、次回は牛すき鍋膳を食べるために来店するのではないでしょうか。また、新聞などマスコミで報じられて、牛すき鍋膳目当てに来店する人もいるでしょう。これらの人は、従来の牛丼ユーザーとは異なります。どちらかというと、やよい軒などで定食を食べていた層。牛すき鍋膳が顧客開拓をしていることになります。

実際、吉野家の一部の店舗では、固形燃料を使った提供を行っておらず、その旨を大きく入り口に掲載しています。恐らく、固形燃料を利用しなかったことへのクレームが相当あったのでしょう。このポスターは、固形燃料を使った牛すき鍋膳目当ての来店が相当あることを物語っています。

何度も申し上げますが、この違いは、見た目でありそのわかりやすさに起因しています。売れる高単価商品を開発するには、見た目で明らかな違いを作り、他業態の商品を比較対象にする必要がありそうです。マクドナルドにも、牛すき鍋膳のような、違いがわかりやすい商品が必要なのかもしれません。

 

☆今日のまとめ☆

客数増が必須のマクドナルドには、牛すき鍋膳のような、見た目の違いが明確であり、他業態の商品と比較対象にされる新商品が必要なのではないか。

吉野家は、牛すき鍋膳を発売することで、牛丼ではなく牛すき鍋膳目当ての消費者獲得に成功した。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

マクドナルドの店舗平均売上高が1億5千万円もあることには驚きました。

さすがグローバルブランド。