キリンのビール市場一人負けと一番搾りの関係とは?
Photo:終電より、1時間も早い。(^^) v — Drinking a Ichiban (Shibori) by Kirin Brewery Company By cyberwonk
2013年のビール系飲料出荷量は、課税ベースで9年連続過去最低を更新。これだけ見ると、ビールメーカーの業績もさぞ悪いだろうと思われますが、実際はそうではありません。大手5社のうち、4社はシェアを拡大させ、人口減少で販売数量の減少はある意味仕方ないビールビジネスで、成功を収めたと言えるでしょう。そして、シェアを低下させた唯一の企業は、キリン。2013年のビール系飲料市場は、キリンの一人負けだったのです。
NTTドコモのように業界最大手だからシェアを奪われて当然というわけではありません。2013年のシェアトップ企業はアサヒであり、4年連続でトップに君臨しています。どちらかというと、キリンはシェアトップのアサヒから幾分かシェアを奪っていいものの、逆に奪われているからこそ、その深刻さが窺い知れます。そして、キリンが唯一シェアを下げたのは、市場が拡大するプレミアムビールが弱いからに他なりません。
キリンのプレミアムビールと聞いて、ピンと来ない人も多いことでしょう。キリンにはプレミアムビールが無いのではないか?私もそう思っていました。しかし、キリンには一番搾りというプレミアムビールがあり、一般認識は別にしてメーカーはプレミアムビールとして販売しています。実際、「一番麦汁のみを使用した」というキャッチコピーで、一番搾りのプレミアム性をアピールしています。
しかし、現実の売り場を見ると、プレミアムビールとして扱われていません。コンビニのビール売り場を見れば、通常一番搾りはスーパードライの隣に並んでいます。一番搾りの隣に、エビスやプレモルが置かれていることはほとんどありません。エビスやプレモルなどのプレミアムビールは、一般ビールとは別の棚で販売されているのが普通。よって、一般ビールの棚にある一番搾りをプレミアムビールとして認識している消費者は、ほとんどいないのではないでしょうか。
さらに、価格設定においても、一番搾りはプレミアムビールとは異なります。プレミアムビールは、一般ビールよりも明らかに高く設定されており、しかも各社のプレミアムビールは、価格が横並びになっています。一方、メーカーがプレミアムビールとして販売している一番搾りは、スーパードライなどの一般ビールと大抵同じ価格。価格を見ても、一番絞りはプレミアムビールに見えないのです。
これらの理由により、消費者がプレミアムビールを飲みたいと思った時に、一番搾りはその選択肢の中に入らず、みすみす販売機会を逃しているのではないでしょうか。その結果が、キリンの一人負け。一番搾りの事例から、商品の売り場と価格は、消費者の商品に対する認識を決定づけ、売上を大きく左右することがよくわかります。逆に言えば、売上が芳しくない商品の売り場と価格を変えれば、売上が伸びる可能性があるということです。
☆今日のまとめ☆
キリンが唯一シェアを低下させたのは、売り場と価格において、一番搾りが一般ビールとして販売されているので、プレミアムビール需要を獲得できなかったからではないか。
売り場と価格は、消費者の認識を決定付け、売上を大きく左右する。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
一番搾り、たまに飲みますが、美味しくなったと思いますよ。
ただし、味においてはやはり一般ビールですね。
エビスやプレモルとは、やはり違います。