やっぱり終売していたセブンプレミアム100%MALTが売れなかった原因

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日経新聞に、セブン専用商品ついての記事が掲載されていました。

 

セブン&アイ・ホールディングスが大手食品・飲料メーカーと連携したプライベートブランド(PB=自主企画)商品や専用商品に力を入れている。30日には 清涼飲料最大手のコカ・コーラグループが初めてセブン―イレブン・ジャパン専用の「コカ・コーラ」を発売。コンビニエンスストアで全国に約1万7千の店舗 網とブランド力を持つセブンの影響力が高まり、売れる商品づくりへ小売店とメーカーの構図も変わりつつある。(2014年7月1日付 日経新聞朝刊)

 

大手メーカーがセブン専用品を開発する理由は、その販売力とマーケティング力が魅力的だから。セブン専用品を作れば、莫大な店舗数と消費者から支持を受ける小売店で、棚を確保することができます。恐らく、専用品だけではなく、NB商品もいい”立地”を確保できるはず。さらに、セブン&アイと共同開発することで、リアルタイムの消費者ニーズを知ることができ、販売結果をNB商品の開発にも活かせるのです。言ってみれば、最高の立地で効果の高い実験ができるということ。将来への投資とも捉えることができます。

 

この記事の最後に、セブン専用品のリスクも指摘されています。その事例として紹介されたのが、セブンプレミアムとサッポロの共同開発ビール・100%MALT。

 

サッポロビールは12年秋にセブンのPB商品としてビール「100%MALT(モルト)」を投入したが、販売量が伸びず2年たたずに販売を終了した。(同上)

 

最高の立地で販売したにも関わらず、販売が振るわず終売に終わりました。このビール、ブログのレビュー記事を見る限り、評価はそう悪くありません。セブンプレミアムだから当然といえば当然ですが、美味しくないから売れなかったというわけではないのです。そこで、100%MALTが想定よりも売れなかった原因について、推測してみました。

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【鳴り物入りで発売された100%MALTがさほど売れなかった原因】

[1]見た目と価格にギャップがあったから

[2]ビール購入層は銘柄へのロイヤリティが強いから

[3]店舗側に売るメリットがなかったから

 

1について、この商品を初めて見た時から感じていたのですが、見た目がイマイチ。安っぽさが漂ったデザインなのです。スーパードライに似たデザインというものの、スーパードライにはブランド力があります。このあたりは、テレビCMがかなり効いているのではないでしょうか。一方のスーパードライ似の100%MALTには、銘柄としても知名度がありません。もし、このビールがイオンの韓国ビールのように150円台で販売されていたら、もっと売れていたかもしれませんが、実際の価格は198円。NBのビールとの価格差はたった20円ほどであり、見た目のマイナス面を補うほどの価格差はありません。このギャップが売行不振の一番大きな要因だと考えます。

 

2について、そもそも第三のビールよりも割高なビールを飲む層は、その銘柄の味を味わいたいからビールを購入するわけで、そもそも価格には関心がないのではないでしょうか。ならば、20円ほど安い100%MALTは、ビール消費層にとって、そもそも購入の選択肢に入らなかった可能性すらあるのです。

 

3について、売れなかったから終売になったのですが、そもそも店舗側に売る意欲があったかどうかも疑問に思います。というのも、200円超のビールを購入してくれる来店客に、わざわざそれよりも安い価格のビールを売る意味はほとんどありません。NBなら1本購入するところ、100%MALTなら2本購入してくれれば、客単価向上=日販増加につながりますが、個人客の多いコンビニで20円ほどの価格差で購入点数が2倍になるとは考えられません。

 

100%MALTはPBだけに、利益率はNB商品よりも高いので、売上増には貢献しませんが、利益率・利益額には貢献するかもしれません。しかし、比較対象をプレミアムビールのPB商品にすれば、利益への貢献も見込めません。同じ利益率だとしても、販売単価がプレミアムビールの方が高いからです。実際、セブン-イレブンでは、専用商品として「金のビール」「アサヒ ザ・エキストラ」「サントリー ゴールドクラス」「サントリー 深みの贅沢」など複数のセブン専用プレミアムビールが販売されています。店舗としては、売上・利益双方の増加に貢献してくれる専用プレミアムビールを販売するインセンティブが働くのです。さほど売れないと分かった段階で、販売スペースを縮小する店舗が増加し、その結果ますます売行が悪化したことが容易に想像できます。

 

もちろん、アベノミクスによる景況感の向上で、プレミアムビールの販売が大きく伸びたことも影響しているでしょう。ただし、もし景気後退に陥っていたとしても、20円程度の価格差で100%MALTに切り替えるかは疑問。

 

品質だけではなくスタイル・かっこよさも気にするセブン-イレブンユーザーにとって、100%MALTの価格と見た目はあまり魅力的ではなかったようです。

 

☆今日のまとめ☆

100%MALTが2年弱で終売になったのは、価格と見た目にギャップがあったから、ビールユーザーは銘柄へのロイヤリティが高いから、店舗側に売るメリットがなかったからではないか。

 

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☆  今日のこぼれ話☆

この事例は、必ずしもコスパが高ければ売れるわけではないことを教えてくれます。

 

 

 

 

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